千葉県の水問題に長年取り組んできた大野博美さん(さくら市民ネットワーク、元千葉県議会議員、元佐倉市議会議員、当会会員)より、水道民営化を進める国の動きに警鐘を鳴らすメッセージをお送りいただきました。
八ッ場ダム問題では、利根川流域一都五県の野党議員が連携して水道水の問題に取り組みました。国交省の管轄であるダム問題は、難しい専門用語で一般の人々が分からない間に巨大な利権が推進されてきましたが、大野さんは有権者に日常の言葉でユーモアを交えてダム問題のおかしさを訴えてきました。
水道民営化もダム問題と同様、人々の理解を妨げる国交省の詐術が目立ちます。私たちが気が付かないうちに、重要なライフラインである水道が利権に食い物にされようとしています。
大野さんのメッセージを全文転載します。
水道民営化が現実に! ~ウォーターPPPという国交省の詐欺商法~
【始まりは麻生太郎氏】
2013年のG20で、当時の財務大臣麻生太郎が、「日本の水道を全て民営化する!」と発言し、物議をかもしたが、国民から「命の水を商売にすることは許されない」と猛批判を浴びた。また、麻生氏の娘婿が水メジャーのヴェオリア社の役員であり、そのヴェオリア社の女性が内閣府に出向していたことが明るみに出ると、ますます国民の反発を招いた。
その後、宮城県では着々と準備が進み、2022年から上下水道の民営化が始まったが、後続する自治体はなく、私たちはひとまず安心していた。ところが国は、水面下で着々と、民営化に向けて「策」を立てていたのだ。
水は命と健康に関わることから、これまで水道は厚労省の管轄だった。しかし、「下水道は国交省の管轄。管路の管理は水道と下水道一体化でやったほうが合理的」という理由で、2年前、水道も国交省の管轄に移された。これが、実は、水を「命と健康」から切り離した民営化への狡猾な布石だった
いきなり「水道民営化」と言えば国民の反発をくらうので、2023年あたりから、国は「ウォーターPPP」という、横文字を使った計画を発表。水道の「民営化」ではなく、あくまでも、上下水道の「官民連携」だと強調している。
*PPPとは、「官民連携(Public Private Partnership)」の略称。民間の資金やノウハウを活用し、公共施設の建設、維持管理、運営などを行うこと。
【ウォーターPPPとは?】
「ウォーターPPP」は4段階に分かれる。
レベル①:処理場や管路の「保守点検・運転管理」を民間委託。
レベル②:①に「薬品調達」を加える
レベル③:①と②に「補修・修繕」を加える
ここまでが、3~5年の民間委託であり、従来から全国で行われてきた。
そして、ラスボス、レベル④が登場する。これが問題のウォーターPPP。レベル④は「コンセッション方式」とも呼ばれ、上下水道施設の所有権を行政が持ったまま、運営権を10~20年、民間に渡す。
問題は、料金を民間が直接収受する、つまり、利益は民間に行ってしまうのだ。
で、ここからが、「悪知恵の天才」国交省の本領発揮。いきなりレベル④では国民の抵抗が大きい。
そこで、ひねり出したのがレベル3.5! 3以上、4未満。 友達以上、恋人未満。上下水道の維持管理と「更新」を民間に委託する。期間は10年間。レベル4と違って、料金は自治体が収受する。ここが肝!自治体の抵抗が少なくなる。

【レベル3.5からレベル4(民営化)に】
国交省は、埼玉県八潮市で起きた下水道陥没事故を盾に取り、全国の自治体に、こう迫っている。
「水道・下水道の管路の改築を国費で支援する。ただし、2027年度以降、ウォーターPPPレベル3.5の導入を決定することが条件である」
管路の更新には膨大なお金がかかり、水道管1kmに1億~1.5億円かかるといわれている。自治体はどこも自前で更新出来ないので、当然、国費に頼らざるをえなくなり、国交省に従うしかない。かくして、あっと言う間に、全国の自治体でウォーターPPP導入が進む状況になった・・・
しかも国交省は、「レベル3.5」を10年間実施したあとに、レベル④(コンセッション方式)に移行することを条件としているのだ。これはまさに、麻生太郎氏が叫んだ「日本の水道を全て民営化する」の実現ではないか。
【民営化した国の現状は?】
水道民営化の「先進県」宮城県では、民営化前までは、当年度純利益が18億円あったが、民営化後は、4億円の赤字となった事実がある。
世界的にも、南アフリカでは水道料金を払えない貧困層が水道を止められ、汚染された川から水を汲み、コレラが蔓延した。英国でも、水質の低下と漏水の激増。水道料金の値上げで何百万人もが水道を止められた。企業の財政破綻も浮上している。
フランス・パリでは、民営化した1985年から2009年のあいだに水道料金が265%上昇。企業利益優先で維持管理費を削減し、漏洩事故が増えた。そこで、2010年に水道を再び公営化。その際、市民参加のもと、水道事業や水問題について議論する場を創設。ガラス張りの経営に転換した結果、45億円のコストを削減し、水道料金を8%下げることに成功した。
【千葉県の現状は?】
国交省の「誘導」に、全国の自治体がなびいており、千葉県も例外ではない。「PPP/PFI方式による民間提案窓口」が設置され、ウォーターPPPへと誘導する準備が進んでいる。
県内では、千葉市、野田市、香取市、市原市、柏市、習志野市など、制度の導入可能性調査などが進められており、今後も増え続ける模様だ。
我が佐倉市の状況を紹介すると、昨年9月に事業者へのアンケート調査を実施。市によると、「大半からウォーターPPPに参入意欲があると回答があった」とのことだが、調査結果を見ると問題点が浮き彫りになってくる。
「管路管理の専門技師等が在籍していない」と答えている事業者が多く、技術者不足が顕著なのだ。これまで、地方自治体は独自に技術者を雇用・養成・研修に努めてきた。レベル3.5が導入されると、10年間は民間に任され、自治体が培ってきた技術力や知識は伝達されなくなる。レベル4に移行すれば、20年間になる。もし、その後、再び公営化されたとしても、既に自治体が持っていた知識や人材は消滅している。
【私たちにできることは?】
この問題に詳しい尾林芳匡弁護士は、国交省の動きについて、次のように語っている。
「自治体を補助金で釣って、レベル3.5で10年間。レベル4(民営化)へのなだらかな迂回作戦だ。しかし、水道は公衆衛生、生活と健康に欠かせない。憲法25条の2項には、≪国は、公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない≫とある。水道の民営化は国の責任の放棄であり、憲法25条の違反だ」
私たちの命に直結する水道水なのに、「民営化」問題はほとんど知られていない。水面下で着々と進められているこの問題を、まずは、もっと多くの人に知らせる必要がある。学習会開催や情報発信と同時に、各自治体の議会で追及し、民営化の問題点を明らかにする。また、署名運動も有効だ。
八ッ場ダム問題で連携した1都5県の皆さんと、再び「水道民営化反対運動」で繋がっていきたい。