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国土強靭化法が成立

 特定秘密保護法への世論の関心が高まる中、参議院本会議では次々と問題のある法案が可決されています。「国土強靭化基本法」もその一つです。公共事業のバラマキが加速することによって、財政赤字がさらに拡大します。この国はどうなってしまうのでしょうか。
 福島民報の社説は正鵠を射たものと思われます。

◆2013年12月5日 日経BPネット ケンプラッツ 
 http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/const/news/20131204/643149/

 -国土強靭化法が成立、バラマキ批判への配慮もー

 災害対策の強化を目指す「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靭化基本法」が、12月4日夜の参議院本会議で可決、成立した。

 12月中旬に公布、施行される見込みだ。自民・公明の連立与党は5月20日に「防災・減災等に資する国土強靭化基本法案」として議員立法の形で国会に提出した後、名称と条文の一部を修正したうえで成立させた。

 同法案に対しては野党などが、無駄な公共事業を増やし、国の財政悪化に拍車を掛ける恐れがあると批判してきた。

 これに対して与党側は11月22日、法案の名称に「強くしなやかな国民生活の実現を図るための」という文言を加え、防ぐ対象を「大規模災害等」から「大規模自然災害等」に変更するなどして、法案の目的を限定する姿勢を示した。

 しかし野党からは、「等」という字が残っている以上、対象となる災害は曖昧なままだとする指摘も出た。

 与党はこのほか、条文の中に「人口の減少等に起因する国民の需要の変化」や「財政資金の効率的な使用」など、公共事業の費用対効果への配慮をにじませる文言を加えた。

 政府は強靭化法の成立を受け、関連施策の手始めとして、大規模な自然災害などに対する国土の脆弱性を評価するための指針を定める。

■防災・減災等に資する国土強靱化基本法案の概要(2013年9月13日時点)
(資料:内閣官房)
         安藤 剛 [日経コンストラクション]

◆2013年12月5日 福島民報 論説
 http://www.minpo.jp/news/detail/2013120512554

 ー【国土強靱化基本法】不要支出に監視の目をー

 国土強靱化[きょうじんか]基本法が参院本会議で可決、成立した。大規模な災害、事故への備えをうたう。発生後の復旧を想定した発想を転換し、事前対策に重点を置くとする。

 ただ、施策の内容を示す政府の国土強靱化政策大綱案は、リニア中央新幹線の東京-大阪間の早期整備に取り組む方針を示す。必要な事業か首をかしげざるを得ない。

 東日本大震災からの復興、東京電力福島第一原発事故の収束など被災地に不可欠な予算確保に影響は出ないのか。不要不急な支出は税金の無駄遣いになる。監視の目を光らせなければならない。

 リニア中央新幹線は当初、東京・品川-名古屋間で開業する。JR東海の計画で大阪が目的地とされているが、国が延伸を急ぐ理由はよく分からない。

 東海道新幹線、東海道線が災害で寸断した場合の迂回[うかい]路を想定しているとみられるが、リニア中央新幹線は山間部を貫く。トンネルや橋が多い。地震の大きな揺れに耐え得るのか。車中の乗客救出にも手間取りそうだ。

 営業運転も始まっていない交通手段に、代替ルートとして過大な期待はできまい。

 交通網に加え、電気・ガス・水道、ダム・堤防などの多くは戦後整備された。各地で老朽化が進む。新規事業の着手より、既存の公共施設の修繕、更新への十分な投資こそ、災害に負けない国土づくりにつながるのではないか。

 大綱案は最悪の事態を想定し、「国家100年の大計の国づくりが必要」とする。

(1)人命保護(2)国家・社会の重要な機能維持(3)国民の財産・公共施設の被害最少化(4)迅速な復旧復興-を基本目標に掲げた。過剰な一極集中を回避し、自律・分散・協調型国土形成につなげる視点を持つ、と明記しており評価できる。

 だが、「強靱化」に名を借りた公共事業の野放図な拡大は許されない。基本目標を達成するためには、事業の必要性を国民に説明し、理解を得ながら進める謙虚な姿勢が不可欠だ。少子高齢化が加速し、税収の大幅増は望めない。

 大規模公共事業のばらまきは、借金減らしを目的とする国の財政健全化にも反する。

 安倍晋三首相は福島第一原発の廃炉や汚染水対策、除染、住民帰還促進に向けて「国が前面に立つ」と言う。復興への道のりは遠い。関連予算が減らされることがあってはならない。

 大綱案は、2020年東京五輪に向け国際社会の理解を得る-とした。安全・安心な国土づくりを国際公約するのには違和感がある。国民との約束であるべきだ(鞍田 炎)

◆2013年12月5日 NHKニュース
 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131205/k10013587501000.html

 -国土強靭化基本法が成立ー

 大規模な災害に備えて、老朽化などで損壊のおそれのある道路や橋などを計画的に点検・補修することなどを盛り込んだ「国土強靭(じん)化基本法」が4日夜、参議院本会議で賛成多数で可決され、成立しました。
 「国土強靭化基本法」は、東日本大震災を受けて、大規模な災害による被害の拡大を防ぐため、広く社会資本整備を進めることを盛り込んだもので、政府に、総理大臣を本部長とする「国土強靭化推進本部」を設置し、老朽化などで損壊のおそれのある道路や橋などを点検したうえで、補修などの基本計画を策定するとしています。
 また、政府が迅速な避難や人命救助のための体制を確保し、地域での防災教育の充実を図るとともに、災害時に国の中枢機能が失われないよう地方でバックアップする態勢を整えることなども盛り込まれています。
 法律は、衆議院で施策に優先順位をつけて予算配分の重点化を図ることなどを盛り込む修正が行われており、4日夜、参議院本会議で賛成多数で可決され、成立しました。
 法律の成立を受けて、政府は今後、具体的な施策を盛り込んだ「国土強靭化政策大綱」の策定を急ぐことにしています。

◆2013年12月5日 NHKニュース
 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131205/k10013588241000.html

 -国土強靭化政策大綱の案まとまるー

 「国土強靭(じん)化基本法」が成立したことに関連して、政府は「国土強靭化政策大綱」の案をまとめ、鉄道や高速道路などの交通の大動脈の代替ルートを整備することなどを盛り込んでいます。
 4日夜の参議院本会議では、大規模災害に備えて損壊のおそれのある道路や橋などを計画的に点検・補修することなどを盛り込んだ「国土強靭化基本法」が成立しました。
 これに関連して、政府は東日本大震災を教訓に大規模災害に強い国づくりの指針となる「国土強靭化政策大綱」の案をまとめました。
 それによりますと、基本目標に、人命の保護、国家と社会の機能の維持、国民の財産と公共施設の被害の最小化、迅速な復旧復興の4つを掲げ、具体的な施策として、道路や橋などの維持管理や更新を確実に実施することや、鉄道や高速道路などの交通の大動脈の代替ルートを整備することなどを盛り込んでいます。
 また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、必要な対策を進めるとしています。
 政府は、安倍総理大臣を本部長に年内に開く「国土強靭化推進本部」の初会合で、大綱を決定することにしています。