当会では、八ッ場ダム予定地の猛禽類に関する国交省の調査報告書を情報公開請求により入手し、専門家に分析していただいた結果を明日開催する学習会でお伝えします。
関連記事が一週間前の東京新聞に掲載されましたので、転載します。
◆2014年5月25日 東京新聞特報面
-「八ッ場」のイヌワシ・クマタカ ダム建設後も繁殖 本当? 国側予測 市民 調査法や判断に疑問ー
八ッ場ダム(群馬県長野原町)の建設予定地周辺で、絶滅のおそれのある奇勝猛禽類のイヌワシ(天然記念物)とクマタカの営巣状況調査の結果が明らかになった。国側はダム建設後も繁殖は維持されるとするが、市民からは、調査方法や結論への疑問の声が上がっている。(篠ヶ瀬祐司)
イヌワシとクマタカの営巣状況は、市民団体「八ッ場あしたの会」の情報公開請求で明らかになった。国土交通省が開示したダム建設に伴う環境への影響と猛禽類の調査報告書は、民間調査会社や財団法人が二〇一二、一三年にまとめたもの。国交省関東地方整備局は「環境保存や猛禽類保全対策の基礎資料として活用している」とする。
報告書によると、ダム予定地周辺では、一九九四年の繁殖シーズンから二〇〇五年のシーズンまで、一つがいのイヌワシの営巣が確認された。その後四シーズンは未確認だったが、一〇年と一一年のシーズンに再び営巣が確認された。
クマタカは九八年からの調査で、最大七つがいの存在が確認された。一一年のシーズンでは一つがいでヒナが巣立った。
報告書は、この間のクマタカの巣立ち率は34.6%で、全国平均37.2%と同程度だと指摘。ダム関連工事での環境変化を認めつつも「生息にとって重要な狩り場と営巣環境は広く残されることから、長期的には繁殖活動は維持される」と予測している。
関東地方整備局は報告書を踏まえ、ダムが完成しダム湖に水が張られたのちも、イヌワシとクマタカは「環境の一部が改変されても種は維持される」(河川計画課)と判断している。
だが、この調査や判断に、市民団体側は疑問を投げかける。
「あしたの会」から分析を依頼されたNPO法人「ラムサール・ネットワーク日本」の花輪伸一共同代表は、クマタカの巣立ち率の低下傾向に着目する。「十四繁殖シーズンの平均は全国並みでも、〇九年以降は高い年で16.7%にとどまっている。狩り場面積や獲物数の減少が理由として考えられるが、調査では原因の究明がされていない。」
判断にも首をひねる「つがいによっては、狩り場を含めた活動圏の三割以上の環境が変わる。将来も繁殖が続くかは不透明だ」
イヌワシはどうか。「九四年以降、巣立ち確認は九五、九八年の二シーズンだけ。ダム関連工事などの影響も考慮すべきだ。イヌワシの繁殖地は狭まっている。予定地が繁殖の限界線だとすれば、毎年繁殖するよう保全を急ぐ必要がある」
環境省の指針「猛禽類の保護の進め方」は、イヌワシについて「早急な保護対策がなされなければ、このまま絶滅に向かうことが危惧される」と指摘。クマタカも「(開発など)事業の影響を最小限にとどめられる計画を立てることが望ましい」と、営巣地や狩り場の保全検討を求めている。
開示された報告書は、観察区域図などで墨塗りが目立つ。国側は「生息に支障をきたすおそれがあるためだ」とする。花輪氏は「巣の位置は非公開にしたとしても、調査方法や結果などを必要以上に隠しては、データやまとめ方の妥当性が検証できない」と指摘する。
こうした分析結果は六月一日午後二時から、「あしたの会」が群馬県庁昭和庁舎(前橋市)で開く学習会で公開される。
~~~転載終わり~~~
●6月1日のイベントのお知らせ
https://yamba-net.org/wp/?p=7121
●「イヌワシ・クマタカ」に関する国交省の情報開示資料について、こちらに資料データ、要約を載せています。
https://yamba-net.org/wp/problem/wazawai/hakai/seisoku/