八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダム事業によってふくらむ「東京水道施設整備マスタープラン」

 東京都は今年4月30日、「東京水道施設整備マスタープラン」を発表しました。

 東京都公式ホームページより
 「東京水道施設整備マスタープラン」を策定しました  
 https://www.waterworks.metro.tokyo.jp/press/h26/press140430-1.html

 70ページにもなる上記のプランは、東京都の水道事業に詳しい人でなければ、八ッ場ダムとの関係はすぐには見えてきません。実際、要点をまとめたという2ページの「概要」には、八ッ場ダムの文字はありません。「八ッ場ダム事業」の文字は、マスタープラン本文23ページに「水源の確保」という施策の一つとして、霞ヶ浦導水事業と並んで出ています。
  
 東京都は八ッ場ダムが水道事業にとって必要であるという、これまでの見解を踏襲するために、過大な水需要予測を行い、その結果、マスタープランの施設整備の規模も過大なものとなりました。水道事業は時代状況に即して運営していかなければならない筈ですが、高度成長時代の鬼っ子ともいえる八ッ場ダム事業が水道事業を歪めている一因となっているのです。

 マスタープランを策定するに当たって、東京都は3月27日に「東京水道施設整備マスタープラン施設整備の方向性(案)」に関する意見募集、いわゆるパブリックコメントを発表しました。募集期間は発表当日の3月27日から4月7日まで、わずか10日間という短期間でした。

 八ッ場ダムをストップさせる東京の会、パブコメ原文を開示請求
 東京都は上記のマスタープランを公表した日にパブリックコメントの結果として、次の文書を公表しました。
https://www.waterworks.metro.tokyo.jp/press/h26/pdf/press140430-1-1.pdf

 「東京水道施設整備マスタープラン」施設整備の方向性(案)に対する意見募集の結果について

 この「パブリックコメントの結果」は、寄せられた意見をそのまま紹介することなく、水道局にとって都合の良いように編集し、それに対する決まりきった局の考えを記したいるだけです。「都合の悪い意見は紹介もせず、回答もしない」という対応は、限られた期間の中で意見を提出した人々に対してあまりに不誠実です。

 そこで、「八ッ場ダムをストップさせる東京の会」は、パブリックコメントの原文を情報公開請求しました。同会より、このほど開示された原文を提供していただきましたので掲載します。
 (以下をクリックするとパブコメの原文がご覧いただけます。)

「東京水道施設整備マスターフ=ラン」施設整備の方向性(案)に関する御意見

 「東京の会」が分析したところ、意見提出者18人のうち、プランを評価している人は4人、つまり8割は批判者、51件の意見のうち、賛成は5件、つまり9割が反対意見でした。批判の多くは数値、グラフ等を明示して論理的に詳細に記述されています。
 東京都はパブリックコメントに際して、東京都水道の実状について詳しい情報を提供しませんでしたが、実状をよく知る人々が水道事業の是正を願って、短期間にもかかわらず意見を提出したと考えられます。

 しかし、東京都は最初から、パブリックコメントを〆切って3週間でマスタープランを公表することとしており、パブコメの結果はマスタープランに反映されることはありませんでした。
 国土交通省は八ッ場ダム事業に関わるパブリックコメントに際して、その結果をネット上に公開しますが、結果を事業計画に反映させることはありません。東京都も国交省も、パブリックコメントを形式として行っているにすぎません。

 このほど発行された同会の最新号には、東京都水道の実態に詳しい遠藤保男さんによる、マスタープランについての厳しい見解が掲載されています。ご参考までに、その一部を転載します。

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 「東京水道施設整備マスタープラン」は誰のためのものか?
                                    遠藤保男

 東京都水道局は2014年4月30日に「東京水道施設整備マスタープラン」を発表しました。
 水道局のホームページでは、同プランの趣旨を、「東京水道施設再構築基本構想(平成24年3月)等で示した施設整備の考え方を具体化し、意見募集で寄せられた御意見等も踏まえ、中長期的な施設整備の方向性を明らかにするとともに、10年後の整備目標とその目標を達成するための具体的な取組を取りまとめたものです。」と説明しています。

 2012年に策定した「東京水道施設再構築基本構想」は、予想される首都圏直下型大地震などへの対応として、「首都東京をいかなる自然災害からもまもり、一日たりとも経済活動を停止させない」ことを目標に掲げていました。それを受けたこの「マスタープラン」は、力ずくで自然災害を押さえ込むための耐震化と称した事業と、過大な水需要予測に基づく施設整備目標を設定しての経年施設の更新事業を中心に据えたもので、莫大な費用をかけた事業投資計画になっています。

 これで東京水道利用者の暮らしと健康・生命を守ることができるのでしょうか?
 「マスタープラン」は2011年3月11日の東日本大震災が提起した問題の本質をまったく見失っています。
 先ずその原点は、壊滅的被害にあったときを想定した精神的、物的、両面での準備であり、減災・防災の視点として日頃からの省資源化の徹底であり、人員の確保です。壊滅的被害にあったときを想定した準備で最も大切なのは、現場をよく知る人手の確保であり、修理がしやすい施設であり、エネルギーを消費しない施設であり、ペットボトルの買い置きです。
 こうして見たとき、「東京水道施設整備マスタープラン」は東京水道利用者にとっては弊害でしかありません。 (以下略)