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『戦後河川行政とダム開発』 

 今朝の朝日新聞の書評欄に掲載された記事です。
 http://digital.asahi.com/articles/DA3S11280844.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11280844

ー(書評)『戦後河川行政とダム開発』 梶原健嗣〈著〉ー

◇建設の論理を突き崩す労作

 本書は、民主党政権下で「脱ダム」の象徴となった八ツ場ダムと利根川水系を中心に、膨大な資料の検証を通じて、戦後日本の河川行政の根底的な批判を試みた労作である。

 本書の醍醐味(だいごみ)は、著者が一歩一歩、階段を上がるように国交省によるダム建設の論理を突き崩していく、その過程を追体験できる点にある。本書を通じて河川工学に基づくダム建設の論理がその実、きわめて根拠薄弱で、時には誤謬(ごびゅう)を含む曖昧(あいまい)なものだということが次々と明らかにされていく瞬間は、思わず嘆息せざるをえない。その結論が現実から大きく乖離(かいり)し、説明能力をもたないのは、用いられる「科学」そのものが根本的に誤っているか、あるいはダム建設を正当化するよう歪(ゆが)められているかのどちらかだ。

 著者は、「何が何でもダム」ではなく、社会的弱者に被害が集中する最悪の「破堤」を回避する堤防強化こそが急務だと強調する。若い著者渾身(こんしん)のデビュー作の刊行を歓迎したい。

 諸富徹(京都大学教授)

—転載終わり—

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