八ッ場ダム事業で使用されていることが問題となっている大同特殊鋼・渋川工場の有害な鉄鋼スラグは、群馬県内の水道水を運ぶ群馬用水沿いの管理道路にも使われていることが明らかになっています。
水資源機構では、同機構が管理する群馬用水幹線水路沿いの管理用道路等の路盤に使用した鉄鋼スラグについて、基準値を超えるふっ素等が含まれていることから、全量撤去することとしています。
同機構は鉄鋼スラグの撤去工事に先立って、鉄鋼スラグ直下の土壌調査を実施し、その結果を昨日10日、記者発表しました。
平成26年9月10日 水資源機構 群馬用水管理所 記者発表
「鉄鋼スラグの撤去工事について」(第2報)
http://www.water.go.jp/kanto/gunma/osirase/20140910%20slag.pdf
群馬用水は、利根川上流の沼田市岩本地点にある(株)東京電力の綾戸堰右岸から取水し、渋川市で赤城幹線と榛名幹線に分水して県内に水道用水、農業用水を供給しています。
鉄鋼スラグの撤去が決まった「小暮第6開水路」(前橋市)は赤城幹線の一部で、水資源機構によれば、前橋市などが県央第二水道事務所(渋川市北橘町)で取水した後、粕川、新里方面へ水を運ぶ水路です。(上記資料4ページに詳しい地図が載っています。)
今朝の上毛新聞に掲載された関連記事です。
◆2014年9月11日 上毛新聞
ー大同特殊鋼スラグ 水資源機構調査 1カ所でフッ素溶出量基準越えー
鉄鋼メーカー、大同特殊鋼渋川工場(渋川市)のスラグ問題で、水資源機構群馬用水管理所は10日、スラグ撤去予定の22地点でスラグの下にある土壌を調べた結果、1カ所のフッ素溶出量が土壌汚染対策法に基づく基準値を上回ったと発表した。同管理所はこの地点の土壌がどの程度の深さまで汚染されているかを調べ、土壌撤去が必要かを判断する。
同管理所は、水路沿いの管理道路の建設時に使ったスラグの撤去を予定しており、撤去工事に先立って深さ50センチまでの土壌中のフッ素と六価クロムを調べた。
超過したのは前橋市の小暮第6開水路の道路で、水と混ぜた際に溶け出す溶出量の基準値(1リットル当たり0.8ミリグラム)に対し、1.2ミリグラムを検出した。同所を含めた22地点の含有量と、それ以外の21地点の溶出量は基準値を下回った。
—転載終わり—
3/27の水資源機構の記者発表によれば、群馬用水では、幹線水路沿いの一部の管理用道路の路盤材料として鉄鋼スラグを平成16年度から平成21年度の工事で使用していたことが明らかになりました。
http://www.water.go.jp/kanto/gunma/event/2014/slab.pdf
6/11の水資源機構の記者発表によれば、同機構は使われていた16カ所すべての撤去工事を行うとしており、その中に今回撤去工事を発注した「小暮第6開水路」(330メートル)が含まれています。
●水資源機構による6/11の記者発表「鉄鋼スラグの撤去工事について」よりー
http://www.water.go.jp/kanto/gunma/osirase/20140611Pressreease.pdf
(3/27発表の調査結果を踏まえ、同機構では)「バリケードにより立入を制限するとともに、群馬県等の環境部局の助言を踏まえ、その対応について主務省、利水関係者等と調整してまいりました。
○その結果、今般、これらの鉄鋼スラグについて、
①水道用水等の水源として利用される用水路等の直近に基準値を超えるふっ素等を含む鉄鋼スラグが使用されていること、
②群馬用水を使用している水道事業者等から強い撤去要望があること、等の状況を踏まえ、全量を撤去することとしました。
○撤去工事は、すべての鉄鋼スラグ(16箇所、別紙参照)を対象とするものであり、6月中に工事契約の手続きを開始し、概ね半年程度で工事を完了する予定としています。撤去した鉄鋼スラグについては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に従い適正に処理いたします。また、管理用道路等については、アスファルト舗装で復旧します。」
—転載終わり—
上記記者発表の関連記事です。
◆2014年6月12日 上毛新聞
ー水資源機構 管理道路のスラグ撤去 大同特殊鋼排出で路盤 群馬用水沿い、駐車場もー
鉄鋼メーカー、大同特殊鋼渋川工場(渋川市)のスラグ問題で、水資源機構群馬用水管理所は11日、このスラグを路盤として使っていた用水沿いの管理道路計1945メートルと、資材置き場や駐車場など計1340平方メートルを工事し、スラグを撤去すると発表した。用水の水質には問題ないが、利用者からの要望などを踏まえて判断した。作業は年内に完了させる方針。大同側は応分の負担額を支払う意向を示しているという。
工事するのは、管理道路が赤城山南面を中心とした前橋市の11カ所と、榛東村の1カ所。資材置き場や駐車場などが前橋市の3カ所と渋川市の1カ所。スラグが使われていた全16カ所を対象としている。
スラグは用水沿いで、管理道路(幅約3メートル)の表面の路盤として使用されている。工事ではまずスラグを撤去し、砕石を敷いた上でアスファルトで舗装する。これに合わせてスラグの下にある土壌のフッ素や六価クロムの含有量を検査し、水質も継続的に調べる。
同管理所は3月、用水沿いの計8カ所を調べ、いずれの路線からも基準値を上回るフッ素などの有害物質を検出した。周辺の水や土は基準値を下回ったが、①用水のすぐ近くにある②利用者から要望がある――ことなどから撤去を決めた。
同用水は沼田市から取水し、桐生・新里方面と高崎・榛名方面に延長。2004~09年度の工事で問題のスラグを使っていた。現在は現場への立ち入りをバリケードで制限している。
一方、県が09年度以降に発注した公共工事27件でもスラグを含んだ砕石が使われていたが、混合比が約15%と低いことや、道路に露出していない点などから、県は撤去しない方針。
◆2014年7月17日 しんぶん赤旗
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-17/2014071717_02_1.html
ー有害鉄鋼スラグ調査 水資源機構 塩川議員聞き取りー
有害物質のフッ素や六価クロムを含む鉄鋼スラグを鉄鋼メーカー大同特殊鋼の渋川工場(群馬県渋川市)が道路資材として販売していた問題で15日、日本共産党の塩川鉄也衆院議員は水資源機構群馬用水管理所(前橋市)で聞き取りをしました。酒井宏明党県議と角田喜和党渋川市議が同席しました。
群馬用水の幹線水路沿いの道路で鉄鋼スラグを使っていることから、同機構は3月に調査を行い、複数の地点のスラグの溶出量がフッ素と六価クロムの基準値を超えていました。
同機構は6月、水路沿いの道路約1・9キロにあるスラグを撤去することを決めました。
塩川議員は「県内各地の路盤材で、大同特殊鋼のスラグが使われている。撤去に踏み切るのは機構が初めてだ。今後の国土交通省や群馬県などの対応に関わってくる。撤去までの経緯を聞きたい」とのべました。
群馬用水管理所の壱岐宏所長は「調査では水質に問題がなかったが、水路そばにあったことから、(自治体など)水道事業者から強く撤去の要望があった」と説明。費用は、同社に応分の負担を求めるとしています。
同社の鉄鋼スラグは2008年以降、群馬県内の国交省発注工事45カ所で使ったことが判明。八ツ場(やんば)ダム建設予定地でも使ったことがわかっています。
また、県や渋川市、前橋市の工事でも使っており、対策が急がれています。同社は廃棄物処理法違反の疑いがあります。
鉄鋼スラグ 溶かした鉄(銑鉄)を精錬した際に生まれる酸化物がスラグです。大同特殊鋼渋川工場は航空機の特別な部品を製造する際、電気炉での精錬時間を短縮するフッ素を含む蛍石を使っています。また、さびにくくするために使用するクロムが六価クロムとなります。
—転載終わり—
八ッ場ダムは利根川流域一都五県の水源施設として、今年度中に国交省関東地方整備局が本体着工する方針です。毎日新聞が一面トップスクープで八ッ場ダム予定地周辺に有害な鉄鋼スラグが埋め立てられていることを報じた8月5日、国交大臣が現地での調査指示を表明しました。
しかし、1カ月たった今も、現地では調査が実施されているという話は聞かれません。国交省現地事務所の職員が地元住民に、安全性に問題はないと説明しているという情報が寄せられています。また、例によって、毎日新聞が嘘を書き立てているとか、ダムに反対する市民団体が有害な鉄鋼スラグを撒いているというとんでもないデマも流されています。
国土交通省はもちろん、八ッ場ダム事業の負担金を支払っている水道事業者には、地元と下流域の住民の安全安心に直結するこの深刻な問題に、真摯に対応するよう求めたいと思います。