八ッ場ダム建設の主目的は、「都市用水の供給」と「利根川の洪水調節」です。このうち、「都市用水の供給」は高度成長期の首都圏の水需要の増加を背景に、八ッ場ダム建設の最大の目的とされ、そのために東京都をはじめとする利根川流域一都五県は八ッ場ダム事業の利水負担金を払い続けてきました。
しかし、水余りが首都圏でも年々顕著になる中、八ッ場ダム建設の大義は失われています。
日本水道協会の「平成24年度水道統計」が発行されましたので、そのデータを入もとに、全国の水道の一日最大給水量および利根川流域6都県の上水道の一日最大給水量の推移を2012年度まで描いたグラフを掲載します。
全国においても、八ッ場ダムの水を供給する利根川流域6都県においても、1990年代から一日の最大給水量が減少の一途を辿っているのが一目でわかります。
以下のグラフを見ると、全国の1994~2012年度の18年間の減少量は973万㎥/日で、1,000万㎥/日近くになります。
利根川流域6都県の1992~2012年度の20年間の減少量は約200万㎥/日になります。
そのうちの東京都水道の推移をみると、東京都においては最大給水量の減少が特に顕著です。
東京都水道についての以下のグラフには、今年の8月までの一日最大給水量も入れました。9月になって気温が下がったので、8月の一日最大給水量である465万㎥/日が今年度の一日最大給水量になるはずです。
ところが東京都は、2015年度には592万㎥/日まで増えるとの予測を立てています。こうした無茶苦茶な予測は、都市用水の供給を主目的とする八ッ場ダム事業の負担金を東京都が支払い続けるためのものです。八ッ場ダム事業によって東京の水道行政が歪められている実態が、このグラフからも垣間見えます。
わが国の人口が減少している中で、東京都、埼玉県などは、人口増加が今も続いている地域ですが、これらの地域でも八ッ場ダムの完成予定とされる2019年度以降、人口が減少すると国立人口問題研究所は予測しています。
人口増加にもかかわらず水需要が減少しているのは、工業用水の需要低下、節水機器の普及、水道事業者による漏水防止対策などによるものです。
水需要縮小の時代において、八ッ場ダムをはじめとする新規の利水ダムが必要であるはずがありませんが、国も関係都県も過大な水需要予測を根拠に八ッ場ダム事業を推進しています。
以下の文字をクリックすると、それぞれのグラフがダウンロードできます。
全国の水道の給水量の推移
利根川流域6都県の水道用水の推移
東京都水道の配水量の推移