昨日18日より、八ッ場ダム事業によって吾妻川沿いの国道145号線が一部廃線となりました。
この措置に抗議する声明を太田国交大臣と大沢群馬県知事に提出しました。
国土交通大臣 太田昭宏 様
群馬県知事 大沢正明 様
国道145号線の封鎖に対する抗議声明
八ッ場あしたの会 代表世話人 大熊孝ほか
八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会 代表 嶋津暉之
群馬県は本日11月18日正午をもって国道145号線の一部区間(吾妻渓谷の長野原町と東吾妻町の町境~上湯原橋)を供用廃止としました。また、吾妻渓谷の下流部も18日より車両通行止め、12月1日より徒歩通行も不可となり、渓谷内の国道は全面通行止めとするとのことです。
現在、水没予定地には国道を生活道路として使用している住民が居住しています。住民有志らは8月8日、大沢群馬知事に対して、「地域住民の生活道路である国道145号線の廃止並びに通行止めは地域住民の足を奪うだけでなく、心情をも踏みにじる行為であり、到底受け入れることは出来ない」とする要望書を提出しました。しかし、国土交通省と群馬県は、住民らの願いを無視して、10月より当該区間の廃道手続きに入りました。かけがえのないライフラインから一方的に閉めだす暴挙に対して、住民らは強く抗議しています。
国道は封鎖後、拡幅して本体工事専用ルートとして利用するとのことですが、本体工事予定地以外では数少ない住民が通行するのを妨げる必然性はありません。国道が封鎖されれば、住民らは急カーブ、急傾斜の多い狭い町道しか使えず、緊急時、積雪時は特に不便を強いられることになります。こうした強権発動は、行政不信をこれまで以上に募らせるものです。
また、吾妻川に沿って走る国道145号線は、日本ロマンチック街道と呼ばれる重要な観光ルートでもあります。多くの観光客が国指定名勝・吾妻峡や天然記念物・川原湯岩脈を訪ね、吾妻川の流れと周辺の岩山、渓畔林の織りなす景観を嘆賞してきました。国道の封鎖・廃道化は、私たち国民が国道封鎖区間の渓谷美に触れる機会を永遠に奪われてしまうことを意味します。
観光立国を標榜し、2020年の東京オリンピック開催を控えながら、多くの観光客の願いを踏みにじる国土交通省は、これだけの犠牲を払ってダム事業を進める必要性を国民に説明できないままです。
負の遺産となることが明らかな八ッ場ダムを建設するために、水没予定地住民の生活権を侵害し、観光客を閉め出す国道封鎖に厳重なる抗議を表明します。
2014年11月18日
関連記事を転載します。
◆2014年11月19日 朝日新聞群馬版
http://digital.asahi.com/articles/ASGCK7R55GCKUHNB019.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASGCK7R55GCKUHNB019
ー八ツ場ダム本体工事ひかえ、国道145号通行止めー
八ツ場ダム(長野原町)の本体工事に先立ち、本体建設予定地周辺の国道145号(旧道)が18日正午、通行禁止になった。水没する地区の住民生活を支える役目を終え、今後は工事の専用道路となる。
18日正午すぎ、県職員らが一般車両の通行を阻む工事用バリケードを区間の上流の端に置いた。接続する町道も封鎖された。通行禁止区間は吾妻渓谷手前の東吾妻町松谷から長野原町林まで。このうちダム本体予定地から水没予定の上流方向の3・6キロは、公道でなくなる廃道手続きが完了した。国は工事専用道路として県に使用許可申請し、工事用道路として本体建設を加速させる考えだ。
県は4日に廃道を正式発表し、その後、本体予定地から下流方向も通行止めにすることが明らかになった。下流区間は観光名所の吾妻渓谷を含み、東吾妻町は来年春ごろの解除を期待する。県は「要望を聞いて検討するが、まだ決まっていない」としている。
水没地区に残る住民らは廃道の撤回を求めていた。18日は旧川原湯温泉駅や本体予定地の脇を通る145号沿いを、ダム見直し派の市民団体「八ツ場あしたの会」のメンバーらが横断幕を手に歩き、抗議の意思を示した。水問題研究家の嶋津暉之さん(71)は「観光道路としても生活道路としても、ダム完成までは使える。住民の意見を踏まえず問答無用で止めるのは怒りを覚える」と話した。(井上怜)
◆2014年11月19日 上毛新聞
ー国と県 国道145号の一部区間を閉鎖、廃道 八ッ場工事車両専用にー
長野原町の八ッ場ダム本体工事に絡み、国と県は18日、同町の国道145号の一部区間を閉鎖、廃道にした。町もこの区間に世俗する町道の一部を通行止めにした。今後は土砂などを運搬する工事車両の専用道路として整備する。
県道路管理課によると、閉鎖はダム本体建設地(川原畑)から上湯原橋(林)付近までの3.6キロ間。通行止めをめぐり、一部の地元住民が反対していたが、予定通り同日正午に作業が始まり、国や県の職員らが通行止めを知らせる看板やバリケードを設置した。
町内の主婦(52)は「慣れ親しんだ道路なので寂しい気持ちもあるが、ダム工事を進展させるためには仕方ない」と話し、会社員の男性(47)は「バイパス完成後は通る機会が減ったが、吾妻渓谷など窓から見える景色が良い道だった」と名残り惜しそうだった。
ダム建設に反対する「八ッ場あしたの会」など2団体は同日、太田昭宏国土交通大臣と大沢正明知事に国道封鎖に対する抗議声明を送ったほか、両団体の会員約20名が封鎖反対を掲げて閉鎖区間を歩いた。