(2009年9月17日)
八ッ場ダムに水を貯めるためには、吾妻川にある東京電力(株)の水力発電所への送水量を大幅に減らす必要がある。
→ 巨額の減電補償(数百億円)が必要(減電量の試算結果 年間22,400万kWH)
八ッ場ダムの県営発電所の計画
発電力:最大11,400kW
年間発電量:4,099万kWH
八ッ場ダムによって吾妻川の全発電量は大幅に減少する。
八ッ場ダム事業を継続した場合は上述の要因によって1000億円程度の事業費増額が必要となると予想される。仮に1000億円とすれば、八ッ場ダム建設事業の今後の公金支出額は残事業費1390億円+1000億円=2390億円となる。
一方、中止した場合の必要事業費は国交省が示す生活関連の残事業費770億円程度である。
したがって、中止した方が差引き1620億円も公金支出を減らすことができる。
第一はこの約1460億円の中には水道事業および工業用水道事業への国庫補助金(厚生労働省と経済産業省からの補助金)が含まれており、それを除くと、6割の約890億円である。利水負担金の問題は国庫補助金も含めた数字が罷り通って話が一層大きくなっている。
第二に、特定多目的ダム法および施行令ではダム事業者が自らダムを中止した場合は想定されておらず、利水予定者への全額返還は明記されていないことであるから、利水負担金をどのように取り扱うかは今後の検討課題である。不要なダム建設を推進してきた責任は利水予定者側にもあり、さらに、今回の総選挙で多数の有権者が八ッ場ダムの中止を求めたのに、あえて返還を求めることは民意に反することでもある。
国交省は今後の国費支出額を利水負担金返還額約1460億円+生活関連の残事業費約770億円=約2230億円としているが、1460億円には上述の国庫補助金が含まれているから、国交省の数字は誤りである。
正しくは、利水負担金返還額約890億円+生活関連の残事業費約770億円=約1660億円が今後の国費支出額である。
利水負担金を返還しても、事業を継続した場合の公金支出額約2390億円より約730億円小さい金額になる。
しかし、利水者負担金の返還は公会計内での国と地方の負担割合のことであって、公金支出額の総額、すなわち、国民の負担額が変わるわけではないから、本質的な問題ではない。
1で述べたとおり、ダムを中止した方が、公金支出額がはるかに小さくなるのであって、広い視点から見て無駄な公費の支出をなくすため、ダムの中止が必要である。
大滝ダム(奈良県・吉野川、国交省)
関係都県は利水負担金の他に八ッ場ダム事業の治水分として平成20年度までに526億円負担してきているが、これは河川法に基づく直轄事業負担金であって(ダムの場合は3割負担)、返還するような法的な根拠は何もないから、返還を求められるものではない。これは橋下徹大阪府知事が問題視した直轄事業負担金である。今まで道路等などの直轄公共事業が中止されても返還されたことはなく、八ッ場ダムの中止についてもしこの返還の話が出れば、今までに中止した直轄公共事業の全部に波及することになるから、国交省はこのことには触れることはできない。