八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

もろい地質

八ッ場ダム事業の問題点

ダムによる損失と危険性

(最終更新日:2019年11月1日 作成日:2013年1月29日)

もろい地質

地すべり対策と代替地の安全対策

水没予定地の川原湯地区住民が移転しつつある打越代替地は地形を大規模に改変した人工造成地。2015年12月25日撮影

水没予定地の川原湯地区住民が移転しつつある
打越代替地は地形を大規模に改変した人工造成地。
2015年12月25日撮影

八ッ場ダム湖予定地には脆弱な地層が広く分布しています。
八ッ場ダム事業では水没予定地住民の移転代替地をダム湖のまわりに造成する”現地再建ずり上がり方式”が採用されたため、ダム湖は多くの住宅地に取り囲まれることになります。
このため、湛水後の地すべり対策と代替地の安全確保は八ッ場ダム事業における重要な課題です。

八ッ場ダム事業では2011年のダム事業検証の際、地すべり対策と代替地の安全対策について、対象箇所と対策費の試算が示されました。対策箇所は地すべり対策が10箇所(対策済みの小倉を除く)、代替地の安全対策は5箇所で、対策費用の試算は合計約150億円とされました。
しかし、ダム事業の最終段階になって、これらの対策は大きく後退しました。

詳しい解説はこちらのページに掲載しています。

地すべり等の危険性と国の対策


浅間山の噴火と八ッ場

浅間山

浅間山

八ッ場ダム予定地から30kmあまり離れた群馬県と長野県の県境に、わが国有数の活火山、浅間山があります。八ッ場ダム予定地の地質は浅間山の存在ぬきには語れません。

浅間山は過去何度も大爆発を起こし、そのたびに吾妻川流域に甚大な影響を及ぼしてきました。中でも約2万4000年前の大爆発は、山体を崩壊させる大規模なもので、「応桑岩屑(おうくわがんせつ)なだれ」とよばれる大量の土砂が吾妻川に流入しました。吾妻川の川幅は吾妻渓谷で最も狭まる為、岩屑なだれは渓谷で一旦せき止められ、100メートル以上ダムアップしたとされています。

また、1783(天明3)年の浅間山大噴火の際にも、吾妻川を大量の泥流が流れ下り、八ッ場ダム予定地に大きな災害をもたらしました。

八ッ場は地すべり多発地帯

川が元の姿を取り戻した後も、吾妻渓谷上流の両岸傾斜地には、数十メートルの厚さで岩屑なだれの堆積物が残されました。問題は、この場所がちょうどダム予定地に当たることです。

図1:『群馬評論・夏・No87(2001年)』に発表された中村庄八氏の “八ッ場ダム「湖水域」の地形と表層地質”から図形化
図1:『群馬評論・夏・No87(2001年)』に発表された中村庄八氏の “八ッ場ダム「湖水域」の地形と表層地質”から図形化

岩屑なだれが堆積した場所に大雨が降ると、土が水を含み、しばしば地すべりを起こします。土地の人たちは、地すべり跡のくぼみが人の足跡に似ていることから、伝説の巨人“ダイダラボッチ”の足跡と呼び習わしてきました。この地域はまさに地すべり多発地帯なのです。

現在ダム予定地周辺では、吾妻川に注ぐ沢の一つ一つに幾重にも防災ダムを設け、山を切り崩した場所にアンカーを大量に打ち込むなどの付帯工事が進められていますが、もろい地質というこの地域の特殊性が、予想をはるかに上回る事業費増額の一大要因となっています。

ダム湖の両岸が崩落していく

図2:林集落の表層地質断面
図2:林集落の表層地質断面

林地区の数多くの集水井

林地区の数多くの集水井

上の図はダム予定地の左岸にある林集落の断面図です。ここにも岩屑なだれに覆われた地すべり危険箇所がありますが、大きな水ぬき井戸(右写真参照)を設けるなどの地すべり対策によって、地域の住民や交通網の被害は今のところ最小限に食い止められています。

水抜き井戸

水抜き井戸

ところがダムを造って水をはると、ダム湖の中の岩屑なだれ堆積物が水を含んで地すべりを起こし、やがて支えを失ったダム湖周辺も次々と崩落していく可能性があります。

地すべり対策でコスト縮減 !?

国土交通省の記者発表

2003年11月、国土交通省は八ッ場ダム建設の計画変更案を発表しました。事業費は2110億円から5160億円に引き上げられる筈でしたが、約560億円のコスト縮減を見込んで4600億円とされました。

例えば図2の林地区の場合、土砂がダム湖に流れ込まないように、ダム本体を造るときに発生する土を押さえ盛土として有効活用することによってコスト縮減を図ると説明されています。しかしダムに水がはられれば地すべり地形の所まで水がのるので、完璧な護岸工事をしない限り水が土に染み込みます。実際に地すべりが起こればダムに土砂が流れこんでダムの寿命が短くなるだけでなく、中腹に家屋のある住民の生活も脅かされます。コスト縮減によって地すべりの危険度が増す、むしろコストを度外視してもきちんとした地すべり対策をとるべきだと警告する声さえあります。

国は、22ヵ所の地区について地すべりの評価を行っています。
下表の評価結果で、重要度と精査の優先度が両方ともAの評価になった横壁、勝沼、二社平地区の三ヵ所だけで対策を実施することになっています。

貯水池周辺の地すべり地区の評価
貯水池周辺の地すべり地区の評価

土石流危険渓流の指定地に追いやられる住民

代替地の造成風景

代替地の造成風景

一方、川原湯温泉のある吾妻川右岸も、やはり地質が脆弱です。現在の温泉街は谷あいの低い場所にあります。中腹に比較的なだらかな広い傾斜地があるのに、狭い現在の場所に温泉街があるのは、長い歴史の中で地元の人々が今の場所が最も安全であることを経験で学んできたためだと言われています。

ダムが建設されると現在の温泉街は水没し、住民は現地再建ずり上がり方式によって崖の直下の危険指定地に移住を余儀なくされます。移転する住民が安全に暮らす為には、さらなる税金の投入が必要であることは明らかです。

砂防ダム直下の小学校は危険 ~長野原第一小学校~
矢部俊介(土木技術者)

長野原第一小学校全景

長野原第一小学校全景

新しく建てられた長野原第一小学校(2005年4月現在36人)は、近代的で児童が勉強するには良い施設だと考えられる。しかし小学校のすぐ上には建設されたばかりの砂防(防災)ダムが存在する。こんな場所は日本全国広しといえども他に探すのは難しいのではないだろうか?

長野原第一小裏手(砂防ダム)

長野原第一小裏手(砂防ダム)

砂防ダムがあるということは、そこが「危険」だと警告しているようなもので、児童達の安全や将来を考えたものとは到底考えられない。山岳地帯でやむを得ず、この場所しか小学校を移転することができなかったのであろう。砂防ダム付近は工事が終了しておらず、仮設のままの状態で放置してあり、雨が多いこれからの時期には非常に危険といえよう。

長野原第一小裏手(アンカーの列)

長野原第一小裏手(アンカーの列)

小学校の背面は山を削り、強引に整地した跡が生々しく、山の削り面のほとんど全面に「のり面保護工」が施してある。「のり面保護」は削り面の崩落を防止するためのものだが、児童達が遊びで登る危険性もあり、また維持管理を適切に行わなければ崩落することもある。町の教育委員会は、土石流や地すべりが発生する可能性がある場合は、児童を退避させる防災システムを構築していると考えられるが、それにしてもここまでしてダムを建設する意味があるのか、また現地再建を推進する意味があるのか甚だ疑問である。

ダムサイトの岩盤崩壊の危険性

ダムサイト予定地は岩盤に亀裂

吾妻渓谷・鹿飛橋付近。当初の予定地

吾妻渓谷・鹿飛橋付近。当初の予定地

ダムサイトは当初、吾妻渓谷の中心部に予定されていました。現在地に移動したのは1973(昭48)年。名勝・吾妻渓谷の保全が名目でした。
しかし現在地は、1970年、63回国会で、地盤の危険性が指摘された場所でした。

~文化庁・内山文化財保護部長の国会答弁より~

ダムサイト付近

ダムサイト付近

  • 「熱変質をした地質がずっと続いているものと考えられるということで、ダムの基礎地盤としてはきわめて不安定」
  • 「その付近に河床を横断する3メートル幅の岩の断層がある・・・ダムが非常に不安定」
  • 「岩盤に節理が非常に多い・・・大型ダムの建設場所としてはきわめて不安定の状況」

ダム起業者は、いまだにダムサイトの不安を払拭できていません。国土交通省の調査では、継続審議の必要性が指摘されています。

情報開示資料-H14ダムサイト地質解析業務報告書(平成15年3月)

ダムサイト岩盤を走る無数の亀裂

水平の亀裂が無数に走り、高さ100メートル以上に及ぶ鉛直亀裂が3本も入って岩盤がブロック化している。岩盤が一体化しておらず、ダムの基礎地盤として非常に危ない状態にある。

吾妻川の河床低下(浸食)によるダムサイトの低角度割れ目の形成
吾妻川の河床低下(浸食)によるダムサイトの低角度割れ目の形成
ダムサイト基礎地盤のルジオンマップ(ルジオン値:透水性の指標)

ダムサイト基礎地盤のルジオンマップ(ルジオン値:透水性の指標)

ダムサイトの熱変質帯分布図(-3断面)

ダムサイトの熱変質帯分布図(-3断面)

八ッ場ダム本体は大丈夫か

ダムサイト予定地の吾妻渓谷では、2008年、仮排水トンネルの工事(吾妻川のバイパスを造る本体工事の準備工)が始まり、2009年に終了の予定です。

(1)ダム本体の規模を大幅縮小

吾妻渓谷・ダムサイト予定地直下、仮排水トンネルの入り口付近(共産党視察団)

吾妻渓谷・ダムサイト予定地直下、
仮排水トンネルの入り口付近(共産党視察団)

国土交通省は2008年、八ッ場ダムの第三回基本計画の変更により、ダム本体の規模を大幅に縮小する設計変更を明らかにしました。

  • ダム本体の基礎掘削量 149万m3→68万m3
  • ダム本体コンクリート量 160万m3→91万m3
  • 堤高 131m→116m
  • ダム本体関係の工事費 613億円→429億円(ダム建設事業費の9%)

ダム本体の設計変更
国土交通省資料【ダム本体の設計の変更】図

(2)ダム本体の基礎はわずか3メートル

吾妻渓谷ダムサイト予定地(仮排水トンネル)

吾妻渓谷ダムサイト予定地(仮排水トンネル)

国土交通省の説明によれば、ダム本体規模の縮小は地質精査の結果であり、予定地の岩盤強度が予想より高く評価されたためとしています。

この計画変更により、基礎岩盤の掘削は18メートルからわずか3メートルへと縮小されました。しかし、ダム予定地は高透水帯、熱水変質帯が分布しており、1970年当時、建設省自らが国会で「ダムの基礎地盤としてはきわめて不安定」と答弁した場所です。わずかな本数の横杭調査の結果だけでダム本体の基礎を縮小することは、ダム予定地下流住民の生活を脅かす危険を孕む決定です。

この設計変更により、八ッ場ダムの本体工事費は、ダム建設事業費4600億円のわずか9%に減少。工期延長にも関わらず事業費を据え置く計画変更は、関連事業費の増大により本体工事費を縮小せざるをえない矛盾を抱えていることは明らかです。本体工事費の縮小は、今後の八ッ場ダム事業に大きな影を投げかけると予想されます。

ダム本体関係の事業費

なお、八ッ場ダム住民訴訟弁護団は、情報開示と現地踏査による八ッ場ダム予定地地質の徹底分析を進めており、その成果が蓄積されつつあります。

(3)計画変更により、ダム本体のコンクリート量増量

2016年、国土交通省は5度目のダム基本計画の変更により事業費を増額し、増額要因の一つにダム本体の基礎岩盤の掘削費用等による約44億円の増額を挙げました(図1,2参照)。2016年当時進められていた基礎岩盤の掘削作業により、除去が必要な弱層部が想定より深いなどの問題が明らかになったためということです。
2016年11月に国土交通省関東地方整備局が開催した事業評価監視委員会の配布資料(http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000660815.pdf)によれば、ダム本体のコンクリート量は、本体工事のⅠ期工事で101万㎥、Ⅱ期工事で15万6,754万㎥となっており、合計116万6,754㎥です。事業費を低く見積もる必要があった2008年時点では、地質精査の結果、「想定より頑強」とした基礎岩盤が、実際には問題があることが掘削作業によって明らかになったとして、工事が進んだ時点で工事費を増額したことになります。

図1、2 国土交通省関東地方整備局事業評価監視委員会配布資料(2016年8月)より
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000653410.pdf

ダムが災害を引き起こす

ダム推進の旧政権下、ダムによる災害の危険性がマスコミで取り上げられることは稀でした。2009年10月25日、テレビ朝日のサンデープロジェクト「“危ないダム” ~ そして地すべり災害は起きた」が動画サイトで見られます。災害を防ぐはずのダムが、逆に災害を引き起こした事例として、大滝ダム(奈良県)、太田川ダム(静岡県)、二瀬ダム(埼玉県)の問題を取り上げています。

この番組に登場する専門家、奥西一夫氏(京都大学名誉教授)は、大滝ダムをはじめ全国のダムを調査した経験を踏まえ、八ッ場ダム建設によりダム湖周辺で地すべりが起こる可能性が高いとしています。

総選挙後、前原大臣によるダム見直し政策について、様々な議論が起きている状況の中で、奥西一夫氏は災害を引き起こしてきたダムと八ッ場ダムには共通点があるとして、ダム建設中止の必要性について述べています。
 ↓
「ダム建設をひとまず中止すべきいくつかの理由」

~一部転載~
(カッコ内で補足説明を付け加えてあります。)

(大滝ダムにおいては)地すべりが発生する前にも,地すべりが発生した後でも,このように不可解な言動がおこなわれたのはなぜであろうか。わたしはこれを,自らの過ちを認めれば失脚して再び回復できないという上級官僚の恐怖心が,過ちを糊塗して問題をごまかしつつ,前へ前へと物事を進行させて行く原動力になっているのではないかと考える。「公共事業は一旦決めたら後戻りできない」とよく言われるのも多くはこのような原因によっているのかも知れない。論語に「過則勿憚改」(過ちては改むるに憚ることなかれ)という警句があり,しばしば引用されるのであるが,これまでの日本社会が過ちを悔い改めた人に対して極めて非寛容であったこともこのような恐怖心をあおり立て,誤った政策や事業が止めどもなく継続されるという結果を生んでいるのかも知れない。しかし,これからの日本は,いつまでもそのような欠陥社会であり続けるとは思いたくない。ここから我々が学ぶべきことは,おかしいと思ったら引き返す勇気を持つことである。

私は八ッ場ダムに関する訴訟(八ツ場ダム建設にかかわる利水負担金と治水負担金の支出の差し止め請求)に関わって,地すべり危険度と地すべり対策に関する鑑定意見書(http://www.yamba.jpn.org/shiryo/ikensho/ikensho_okunishi.pdf)を提出した。事業者(国と関係都府県)は概査によって地すべり危険度が高いと考えられる22の斜面を抽出しているが,このように地すべり危険度の高い斜面が多い事例は稀である。しかし,事業者はここでも「初生地すべりは予見できないから対策もできない」と称して,自らを免罪し,過去に地すべりが起きたことがわかっている斜面についても,「すべり面となる地層を確定できなかった」として調査範囲から外したり,地すべり対策を実施したくない区域ではわざと調査をしないで,地すべり対策区域を狭く設定したりして,計画段階での事業費を低く抑えようとしている。そして,ダム計画期間中に,地すべり履歴が明確でない斜面で地すべりが発生すると,その斜面だけについて地すべり対策をおこない,それと同じ条件下にあると考えられる他の斜面は一顧だにしていない。このような状態のままダム着工に突き進むと,第2 第3 の白屋地すべり(大滝ダム周辺)が発生してしまうおそれがあって,各種の対策費のために事業費が大きく膨れあがってしまうことは避けられないのではないかと考えられる。大滝ダムでは幸いバイオントダム型の災害にはならなかったが,八ッ場ダムの湛水域ではバイオント型の地すべり性崩壊が危惧される斜面が多い。ここでも,おかしいと思ったら一旦立ち止まり,必要なら引き返す勇気を持つことが肝心である。

2010年3月16日 衆議院国土交通委員会にて
八ッ場ダム問題に関する意見聴取における参考人の陳述資料として提出した資料
奥西一夫氏(京都大学名誉教授)の資料
「八ッ場ダム湛水域の地すべり危険度について」

湛水による八ッ場ダムの危険性―高崎シンポジウムの資料(2012年9月22日)

以下のスライドは、2012年9月22日に群馬県高崎市で開催したシンポジウム「本当に造っていいですか? 八ッ場ダム」で映写したパワーポイントの一部です。
このシンポジウムでは、国交省が2011年に公表した八ッ場ダム検証における「地すべり対策」と「代替地の安全対策」を分析した結果について、講師の中山俊雄さん(応用地質研究会)が解説しました。
スライドの一部を以下に転載します。
シンポジウムの資料
シンポジウムの資料(クリックすると全部のスライドが見られます)

地質工学からみた八ッ場ダム予定地の地盤特徴
1 岩盤は新第三紀の火成岩
割れ目の発達
溶岩表面(冷却しながら移動、クリンカ―の形成)
 浅間山 鬼押し出し
 溶岩内部(冷却収縮、節理の発達)
 (火山地域は地下水が豊富)
2 温泉、温泉変質
3 隆起している地盤(隆起・浸食)
吾妻渓谷の形成(吾妻湖)
浸食、上載荷重の除荷により表層部に割れ目形成
4 浅間山(黒斑山)の大爆発と応桑泥流
地すべり対策の問題点

2011年8月、国交省は八ッ場ダムの検証の中で、地すべり対策を大幅に変更し、地すべり対策の事業費は11地区で約110億円と試算した。

H22八ッ場ダム周辺地状況検討業務報告書  平成24年2月 N工営株式会社

調査期間:平成22年1月27日から平成24年2月29日
この報告結果が関東地方事務所の検討報告に採用された。
検討報告が出されたのは、平成22年8月、調査から7か月。
この期間で基本内容が決められた。
(検討とはいうものの、始めから答えありき?)

業務内容
1)調査(詳細検討河床の絞り込み)
2)安定計算
3)対策工法の検討 概算費用の算定

H22八ッ場ダム周辺地状況検討業務報告書  平成24年2月 N工営株式会社

調査内容の特徴
1)「貯水池周辺の地すべり対策に関する技術指針(案)」にもとづく 。
2)地すべり地と未固結堆積物に区分
未固結堆積物とは応桑岩屑流堆積物、崖錐堆積物、土石流
土石流は地すべりしないと判断し、外した。
その結果、上湯原は土石流堆積地に区分し、地すべり検討から外れた。
3)対象地域は、従来の地すべり地とされた22か所を対象とした。
地形的に大規模地すべり地形は、従前通り外している。
その結果、林地区の地すべり地形は土石流として検討から外した。
4)調査は従来の地すべり地を細分し、数を増やした。

八ッ場ダムの検証による地すべり対策の問題点

① 対策対象外の地すべり地形の崩壊危険度が不明
国交省は試験湛水を行った上で、安定性を最終確認するとしている。

② 安定解析の信頼性は?
安定解析に用いた物性値は推定値であって、物性値をいじれば計算結果の安全率は変わるから、あくまで参考値である。
物性値の取り方で対策必要箇所が増えたり、対策必要規模が大きくなる可能性がある。

③ 押さえ盛土工の問題
貯水池の水面下では押さえ盛り土自体が浮力を受けるため、その効果が削がれるし、さらに湖面の水面変動や水流により、押さえ盛り土自体の変状が起きることも予想されるが、変状の確認は水面下であることから確認が容易ではない。

地震とダム貯水池の地すべり

「貯水池周辺の地すべり調査と対策に関する技術指針(案)」(平成21年7月)では、 地震の影響を考慮せずに地すべり対策を検討することになっている。
国交省は、地震時の地すべりの挙動に係る評価手法が現時点で研究途上にあるからと説明。
八ッ場ダムの地すべり対策の点検でも、地震の影響は一切考慮されていない。

国交省八ッ場ダム工事事務所の現地説明(2012年7月17日)

「ダム検証で示された地すべり対策は、レーザープロファイラーの結果、踏査の結果、既存の地質資料を最大限に考えたものであるが、測量調査と地質調査はしていない。」
「これらの調査をしないと、正確なことはわからないので、地元住民に説明する段階ではない。」

新たな地すべり対策の事業費増額に対する東京都等の拒絶反応

地すべり対策工事(林地区・付け替え国道の法面)

地すべり対策工事
(林地区・付け替え国道の法面)

平成23年8月29日 「八ッ場ダム建設事業の関係地方公共団体からなる検討の場」における東京都都市整備局長代理の発言

「・・・地すべり対策関連で149.3億円が書かれてございます。・・・・・・・1都5県からすれば、今の基本計画に示されている総事業費4,600億円は、平成12年度の地盤安定検討委員会の報告を前提につくられているものと理解されるものでございまして、検証を口実になし崩し的にさらにこれだけ費用が発生すると受けとめられる説明はいかがなものか。
我々としては、149.3億円を前提として、基本計画の変更みたいなことに結びつけられるということであるとすれば、・・・そうですかと受けとめられるものではない・・・。」