人口減少により、全国の水道事業の経営が悪化し、水道料金の値上げが避けられないという実状を日経新聞が報じています。
節水型機器の普及と人口減少で水道使用量が減り、料金収入が減少していく一方で、水道施設の老朽化が進行していくのですから、今後の水道経営は非常に厳しいものがあります。
しかし、八ッ場ダム事業で見られるように、ダム事業に参画している自治体は、人口と水需要の右肩上がりが今後続くという予測をもとに、水源開発がさらに必要だと主張してダム事業を正当化します。長崎県の石木ダム事業でも、人口減少の著しい佐世保市がダム事業に参画し続けることで、水道経営を一層悪化させようとしています。
政府は水道経営悪化に対する処方箋として、今国会に水道法改正案を提出し、水道の広域化や民営化を促そうとしていますが、こうした方向性は真の処方箋にはなりえません。記事には書かれていませんが、水道事業の民営化が失敗し、公営事業に戻すケースが世界中で見られます。身の丈に合った水道行政への転換が求められています。
◆2017年4月6日 日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO14967450V00C17A4EE8000/
ー水道料金、30年後は1.6倍に 人口減で収支悪化 政投銀試算ー
人口減少を受けて全国の水道事業が苦境に立たされている。利用者が減る一方でインフラ更新の費用がかさみ、収支が極端に悪化するのが避けられないためだ。
今後30年で水道料金の6割引き上げが避けられないとの試算も出てきた。近隣の自治体同士がコスト削減へ連携する動きが広がるが、民営化などもう一段の対応を迫られる筋書きも現実味を帯びてくる。
水道事業は水道法に基づいて地方自治体の水道局や水道部が運営しているケースが多い。総務省によると、全国で約1350の事業体があり、ガスや電気と比べて事業者数が多い。半分が慢性的な赤字体質とされ自治体財政を圧迫している。
日本政策投資銀行は水道事業で利益を確保するには、30年後に今の1.6倍の料金が要るとの試算をまとめた。水道料金は現在1立方メートルあたり平均172円。人口減少を加味し単年度で経常利益を確保するには、21年度から毎年1.7~2.1%値上げする必要があるという。46年度に281円になる計算だ。
背景には、需要が減るのに設備更新の投資が膨らむ構造問題がある。人口減少に加えて節水型の家電や食器洗い機の普及で水道使用量が減少。全国の水道事業者の有利子負債は7兆9000億円と料金収入の3倍に達する。高度成長期に整えた水道管の耐用年数は50~60年で、20年以降に更新投資のピークが来る。
実際、料金引き上げが目立ち始めた。静岡県三島市は10月から35年ぶりに平均34%値上げする。「県内でもっとも安価な料金だったが、投資が進まず老朽化していた」という。福井市は28年度に84億円の財源が不足する見通しを受け、値上げの検討に着手した。
コストを減らす広域連合も増えている。青森県八戸市を中心とする市町村は86年に事業を統合し、施設の集約を進めて財務を改善した。埼玉県秩父市は周辺4町と16年4月に事業統合し、施設管理を一元化。香川県は県内の水道事業統合へ11月に組織をつくり、18年の事業開始をめざす。
政府は水道事業の広域化を後押しするため、今国会に水道法改正案を提出。都道府県ごとに再編計画を作るよう求め、助成制度も用意する方針だ。
先進国でいち早く水道事業を見直した英国では2000団体あった水道事業者を10地域の公社に再編し、89年に民営化した。アフリカなど途上国の一部では水の確保が経済成長のカギを握る場合があり、水を巡る議論が世界で広く関心を集めている。