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水資源白書で取り上げられたダム周辺地域の衰退

 国交省が7月31日に発表した2013年版「水資源白書」について、時事通信がニュースを配信していました。

 ■2013年7月31日 時事通信
 http://www.jiji.com/jc/zc?k=201307/2013073100770&g=eco
 
 -ダム周辺の人口減少=山林荒廃、土砂崩れ増加も-水資源白書ー

 国土交通省は31日、2013年版「日本の水資源」(水資源白書)を公表した。白書は、ダムの周辺地域の人口が減少していることを紹介。
 今後、管理の行き届かない山林が荒れ、山の地盤が緩くなり、土砂崩れや水質汚濁の増加につながると警鐘を鳴らしている。
 白書によると05年から10年にかけて、牧尾ダムのある長野県王滝村は人口が約14%減少し、湯西川ダムのある栃木県日光市は約5%減少した。
 国交省はこれまで、ダム周辺地域の活性化を目指し観光資源や特産品のPRを支援してきたが、これらの地域では人口減少に歯止めがかかっていない現状が浮き彫りになった.

 —転載終わり—

 この記事に関する「水資源白書」の記述は水資源白書の概要版19ページに載っています。
 以下に転載します。
 http://www.mlit.go.jp/common/001006522.pdf  
 キャプチャ-1

 (2)ダム水源地域の現状と保全の動き
 戦後、安定した水資源確保や電力供給を目的として多くのダム事業が計画・実施される中で、水没移転に伴う新生活への不安や、下流地域の住民のみが治水・利水面で受益することに対する水没地域の住民の不均衡感が高まっていた。こうした状況から、水没者の生活再建の支援、およびダムの建設による水源地域の影響緩和の措置が不可欠と認識され、昭和 48 年度に水源地域対策特別措置法(以下、「水特法」という。)が成立し、水源地域整備計画に基づく整備事業(地域の振興を図るための、土地改良、道路、林道、下水道等の社会基盤整備)が実施されてきた。ダム水源地域の社会構造の変化により、ハード整備と合わせ、ソフト対策の必要が高まってきたことから、水特法は平成6年度に一部改正され、水特法で行う措置の1つに「水源地域の活性化のための措置」が加えられた。これまで、ダム水源地域への専門家の派遣や地域リーダーの養成研修、観光資源・特産品のプロモーション等により地域の活性化の支援を行ってきたほか、平成 23 年度からは、行政、有識者、地域活性化活動に取り組む各団体がお互いの顔が見える関係の中で、様々な知見や情報を共有し問題解決や新しい取組みに繋げていくとともに、水源地域活性化活動の核となる人材を育成することを目的とした「水源地域支援ネットワーク」の構築にも取り組んでいる。また、国土交通省直轄および水資源機構の管理ダムについて、水源地域の自立的・持続的な活性化のための行動計画「水源地域ビジョン」の策定・推進が平成 13 年度から行われている。
 人口の変化について見ると、ダムを有する水源地域とその流域における受益地では、ダムを有する水源地域の多くで人口の減少が顕著であることが分かる(図1-3-4)。国土交通省国土計画局の推計によれば、2050 年には 2005 年現在の居住地域のうち、6割以上において人口が半分以下に減少し、約2割は無居住地化すると予測されている(図1-3-5)。また、適切に管理されない森林や農地の拡大は、台風等の際に風倒被害や土砂災害等の発生の原因となるだけでなく、土砂流出による濁水の発生、ダムへの流木の流入等につながることが懸念される。
 ダム水源地域の保全を図るための施策としては、これまでに水特法の水源地域整備計画による社会基盤整備事業の実施や、水源地域支援ネットワークおよび水源地域ビジョンの推進等、水源地域活性化のためのソフト施策が行われてきた。
 今後、安定的な水資源の確保の観点から、人口の減少がさらに進むことが想定される状況において、ダム水源地域の保全を図るためには、これまでの施策に加えて、ダム水源地域が流域の下流受益地域に果発し、流域全体でダム水源地域を支え、保全していく施策をさらに講ずる必要がある。