八ッ場ダムの本体工事について疑問がありますので、以下の公開質問書を国交省関東地方整備局に送付しました。
2014年12月9日
国土交通省関東地方整備局長 越智 繁雄 様
八ッ場あしたの会
八ッ場ダム本体工事の工期に関する公開質問書
国土交通省関東地方整備局八ッ場ダム工事事務所は11月20日に報道機関向け現地説明会を開き、本体工事の工期について次の計画を示しました。
2015年1月からダム本体工事の基礎掘削
2016年6月~2018年5月 ダム本体のコンクリート打設
2018年9月まで 水門設備の据え付け
2018年9月以降 試験湛水
しかし、この工程計画は今年3月に八ッ場ダム工事事務所が地元で説明した内容と大きく異なっています。地元での説明では別紙の資料「本体工事契約手続き開始のご報告」が配布され、次のような説明が行われました。
八ッ場ダム本体工事をⅠ期とⅡ期に分ける(Ⅰ期が別紙の赤い範囲、Ⅱ期が青い範囲)。
Ⅰ期は1月8日に入札公告を行った範囲で、全体の9割である。
Ⅱ期は今回の入札公告を超える範囲の工事で、落札業者と随意契約を結んで実施する。
これは、国が後年度の費用負担を約束する国庫債務負担行為の上限が5年とされているため、6年間に及ぶ八ッ場ダム本体工事をⅠ期とⅡ期に分けなければならなかったことによるものです。
そして、1月8日の入札公告で示された工期は2018年10月1日でした。
以上のように地元での説明では、1月8日の入札公告に基づいて契約された本体工事は本体工事の全体ではなく、Ⅱ期の工事が残されていることになります。そのことは本体工事の入札公告に「後工事についても、本工事にて合意した単価等を使用するものとする」と記されていることからも伺えます。
したがって、地元での説明では、2018年度9月までに本体工事が終わることはなく、2019年度までに持越しになります。ところが、今年11月20日の報道機関向け説明会では上述のとおり、2018年9月までに水門設備を据え付け、本体工事を終了すると説明しました。この二つの説明は明らかに異なり、本体工事完成までの期間が1年程度違っています。
八ッ場ダム工事事務所はなぜ、今年3月の地元での説明とは異なる説明を11月20日の報道機関向け説明会で行ったのでしょうか。そして、国庫債務負担行為の5年上限を超えるⅡ期工事はどうなったのでしょうか。このように不可解なことがいくつもありますので、それらの疑問を解明するため、今回、公開質問書を提出することにしました。
以下、質問しますので、真摯にお答えくださるよう、お願いします。なお、ご回答は12月19日(金)までにFAXまたはメールでお送りください。
質問事項
1 本体工事のⅠ期とⅡ期について
八ッ場ダム工事事務所は今年3月の地元での説明で、「本体工事をⅠ期とⅡ期に分けて行う。1月8日の入札公告による本体工事はⅠ期の範囲であり、9割程度である」と説明しました。この説明に誤りがあるかどうかを明らかにしてください。
もし誤りがあるならば、どのような説明が正しいのか、そして、なぜ誤った説明を今年3月の地元での説明で行ったのか、3月の説明以降、変更があったのであれば、なぜそれを地元に説明しないのかを明らかにしてください。
2 国庫債務負担行為の上限5年を超える工事について
八ッ場ダム工事事務所は今年3月の地元での説明で、国が後年度の費用負担を約束する国庫債務負担行為の上限が5年とされているため、6年間に及ぶ八ッ場ダム本体工事をⅠ期とⅡ期に分けなければならないと説明しました。
八ッ場ダム本体工事には国庫債務負担行為の上限5年以内の工事とそれを超える工事、すなわち、Ⅰ期工事とⅡ期工事があるのかどうか、それぞれの工事範囲は別紙の赤い範囲、青い範囲でよいのかどうかを明らかにしてください。
3 入札公告に書かれた後工事について
本体工事の入札公告には「後工事についても、本工事にて合意した単価等を使用するものとする」と記されています。この「後工事」は上述のⅡ期工事を意味していると考えられますが、そのような理解でよろしいかどうかを明らかにしてください。
4 11月20日の報道機関向け説明会の内容について
八ッ場ダム工事事務所が今年3月の地元での説明で語った内容が正しければ、11月20日に報道機関向け現地説明会で語った内容は明らかに矛盾することになります。八ッ場ダム工事事務所はなぜ、今年3月の地元での説明とは大きく異なる説明を11月20日の報道機関向け現地説明会で行ったのでしょうか。その理由を明らかにしてください。
5 八ッ場ダム本体工事の完成時期について
今年3月の地元での説明の内容が正しければ、八ッ場ダム本体が完成するのはⅡ期工事が終了する2019年度になってからとなりますが、そのような理解でよろしいかどうかを明らかにしてください。
6 本体工事の約10か月の遅れに着いて
上記の報道機関向けの現地説明会の内容を報じた記事(読売新聞群馬版11月21日)に「同事務所の土屋秀樹副所長は『例年より雨が多いなどの影響で、(本体工事は)約10か月の遅れが出ている』と話している。」と記されています。約10か月の遅れとは具体的にいつからいつまでを指すのか、すなわち、当初は何月から始めるべきものであったものが実際に何月までずれ込んだことを意味するのかを明らかにしてください。
7 本体工事の514日間の工期短縮について
清水建設㈱等の共同企業体が今年8月、514日間(約17か月)の工期短縮を提案して本体工事の契約をしましたが、この514日短縮が実際にどのような意味を持つのかについて、次の4点を明らかにしてください。
① 514日の工期短縮は具体的にどのような工事を開始してどのような工事を終了するまでの期間の短縮を意味するのでしょうか。
② 514日の工期短縮を実現できなかった場合、受注会社にペナルティが課せられるのでしょうか、課せられるならば、ペナルティの内容はどのようなものになるのでしょうか。また、ペナルティは未達成の工期短縮日数と比例するものなのでしょうか。
③ 上記6のとおり、「(本体工事は)約10か月の遅れが出ている」ことが明らかにされています。となると、514日間(約17か月)の工期短縮が仮にできたとしても、実際には当初の計画からは7カ月の短縮しかできないことになりますが、そのような理解でよろしいでしょうか。
④ 上記1、2のとおり、八ッ場ダム本体工事には国庫債務負担行為の上限5年を超えるⅡ期工事がありますが、Ⅰ期工事のみを対象としたと考えられる514日間の工期短縮とⅡ期工事はどのような関係になるのでしょうか。Ⅱ期工事を早めることになるのでしょうか。