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水資源機構による思川開発事業(南摩ダム)推進の動き

 独立行政法人・水資源機構が事業主体である思川開発事業(南摩ダム)を検証するための検討の場 第6回幹事会が3月29日に開かれ、代替案との比較で思川開発が最も有利だという評価案が示されました。
 思川開発事業に関係する自治体は、茨城県、栃木県、埼玉県、千葉県、東京都で、3月29日の幹事会にはこれら都県の担当部長、局長らが出席しました。

 この会議は、全国で進んでいるダム事業の検証の一環として行われたものです。「ダム事業の検証」は実質的に、ダム事業の推進にお墨付きを与える手続きとなってしまっていますが、ダム検証の手続きがわかりにくいこともあってか、マスコミの報道が殆どありません。多くの人が知らない間にダム事業が推進されつつあります。今回の会議についても、報道は地元の下野新聞一紙のみであったようです。

 水資源機構のホームページに3/29の幹事会の配布資料が掲載されています。
 http://www.water.go.jp/honsya/honsya/verification/omoigawa.html

 近々、評価案をまとめた検証素案が示され、パブリックコメントと公聴会が行われる予定です。

 思川開発事業は「思川・利根川の洪水調節」、「新規利水の開発」、「流水の正常な機能の維持」、「異常渇水時の緊急補給」という四つの目的を持つ事業ですが、いずれの目的も必要性がなく、虚構の事業といえます。
 洪水調節に関しては、南摩川は小川と呼べるような小さな川であり、そこにダムを造って洪水調節をしても、下流の治水には役立ちません。
 しかし、昨日の会議では、栃木県の担当部長から、思川開発ができていれば、昨年9月の水害を防げていたかもしれないので、早期に完成してほしいという意見がありました。思川開発(南摩ダム)ができていたとしても、昨年9月の水害を防げたはずがないことは、事業の中身を理解していれば分る筈です。5都県の担当者の殆どは、お決まりのフレーズー「検証の早期終了と工事の早期完成を」、「一層のコスト縮減を」を繰り返すばかりでした。
 事業者側は、公共事業を大盤振る舞いする安倍政権下で事業を一気に推進しようとしているようです。事業にブレーキをかけるために、反対運動の更なる広がりが必要です。

 地元紙の関連記事を転載します。

◆2016年3月30日 下野新聞
http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/top/news/20160330/2280365
ー「南摩ダム、事業継続が最も有利」 水資源機構などが評価案 反対団体「茶番劇」ー

 鹿沼市の思川開発事業(南摩ダム)の是非を検証する「検討の場・第6回幹事会」が29日、さいたま市内で開かれた。
 事業主体の国土交通省関東地方整備局、水資源機構は代替案と比較検討した結果、「ダム案」が最も有利との評価案を示した。
 整備局、機構は渡良瀬遊水地を活用する案や新たに思川沿いに遊水地を造る案、湯西川や五十里など既存ダムを活用する案などを評価した。
 その結果、治水は新規遊水地案が有利、ほかの3目的はダム案が有利とされ、目標達成度やコスト、10年後の実現可能性などの観点から総合的に評価し、ダム案が最も有利とした。

 5都県からは「ダム案有利が示されたのであれば、早期に整備を進め治水効果を発揮してほしい」(栃木県)などと、15年9月の関東・東北豪雨に言及し早期に事業を進めるよう求める意見が相次いだ。
 
 一方、市民団体からは疑問の声が上がっている。
 「思川開発事業を考える流域の会」の高橋比呂志(たかはしひろし)事務局長は「検証メンバーは事業推進の立場で、まともな検証でない。茶番劇だ」と憤った。