このほど、全国のダムの堆砂データ最新版(平成25年度)を国土交通省が開示しました。水源開発問題全国連絡会のサイトにアップされた開示資料をお知らせします。(以下の文字列をクリックすると表示されます。)
http://suigenren.jp/wp-content/uploads/2012/08/ec9608e47225cbe6ccb5b5691c6fbb7b.pdf
上記の表には、全国の935基のダムの総貯水容量、堆砂容量、平成25年度の堆砂量と共に、これらのダムのある水系、河川名、管理者名、流域面積、竣工年月が載っています。
ダム事業で示される総貯水容量は、堆砂容量、利水容量、洪水調節容量などの合計です。このうち堆砂容量は、100年間に上流から流れ込んでダム湖に溜まると予想される土砂量です。ダム事業では、100年分の堆砂容量を見込んでおり、少なくとも100年はダムが使えることになっています。
ただし、これは堆砂がダム湖の底の方からたまっていくことが前提になっています。実際には堆砂容量の上にある利水容量、洪水調節容量の部分でも並行して堆砂が進行しますので、早い時期からダムの利水機能、治水機能が徐々に低下していきます。
この問題はさておき、開示された国交省の堆砂データを見ると、ダムの堆砂容量を超えているダムが数多くあり、中には堆砂量が総貯水容量に近づいているダムさえあります。
以下の表は、このほど開示された全国のダムの堆砂データから、堆砂量が堆砂容量を超えているダムと、堆砂容量はまだ超えていないものの問題を抱えているダムの一部を抜き出したリストです。(表をクリックすると拡大表示されます。)
堆砂量の欄(表の一番右側)が紫色に表示されているダムが堆砂容量を超えているダムで、159基あります。リストの中には、古くなった発電専用ダムや農業用ため池などの小規模ダムと共に巨大ダムも含まれています。
表の左側の欄をオレンジ色に表示したダムを見てみます。
巨大ダムの代名詞ともいえる黒部ダムは昭和35(1960)年竣工、50年余で堆砂容量を超えてしまいました。黒部ダムと同時期に建設された御母衣ダム(1961年)も同様です。
利根川水系のダムとして八ッ場ダムと同時期に計画された下久保ダム(1968年)は、堆砂量が997.8万立方メートルと、堆砂容量1,000万立方メートルに限りなく近づいています。八ッ場ダムを建設するために、吾妻川の中和事業の一環として造られた品木ダム(1965年)は、総貯水容量の8割以上が土砂と中和生成物で埋まっています。
首都圏では相模ダム(1947年)の堆砂量が堆砂容量の約5倍となっており、総貯水容量の三分の一近くが土砂で埋まっています。相模ダムの堆砂は、河口の海岸に異変をもたらしています。
「茅ヶ崎ビーチに異変。その理由は?」
http://bylines.news.yahoo.co.jp/masanoatsuko/20150306-00043579/
同じく相模川水系の宮ヶ瀬ダムは、平成年代に入って八ッ場ダムに次ぐ事業費をかけて造られた巨大ダムですが、完成後12年目にして、100年間で溜めることになっている堆砂容量の三分の一近くが埋まってしまいました。
堆砂量が堆砂容量を越えるとダムの機能が低下し、さらに堆砂が進むと、土砂が溜まったダムは洪水被害を拡大する危険性すらあります。浚渫を行ったり、ダムの上流に貯砂ダムを造るなどの対策が講じられているダムもありますが、多額の費用がかかるため、堆砂の進行を抑えることは困難です。
堆砂の進む速度は流域の地理的な特性によって大きく異なります。火山性の脆い地質や急峻な地形に富んだわが国では、大量の土砂を運ぶ川が少なくありませんが、堆砂容量を決定するダム計画策定時には、ダムの効果を強調するために堆砂の予測は甘く見積もられがちです。
八ッ場ダムの堆砂予測も甘く見積もられていることを以下で解説しています。
https://yamba-net.org/wp/old/modules/news/index.php?page=article&storyid=1482
四国の長安口ダムについて、先頃、徳島県知事が堆砂への抜本的な対策を求めました。長安口ダムの堆砂量は平成25年度時点で堆砂容量の三倍に達していました。
関連記事を転載します。
◆2015年7月28日 毎日新聞徳島版
http://mainichi.jp/area/tokushima/news/20150728ddlk36040588000c.html
ー台風11号浸水:知事「被災者にお見舞い」 ダム貯水量確保、抜本策を /徳島ー
飯泉嘉門知事は27日の定例記者会見で、県内に16日から17日にかけて接近した台風11号の雨で、昨年に続き那賀川流域の阿南市加茂町、那賀町和食が浸水したことについて「被害に遭われた方にお見舞い申し上げたい」と述べた。長安口ダム(那賀町)に堆積(たいせき)し、貯水量を圧迫する土砂への抜本的な対策を国に今後求めていく。
県によると、16日午後4時ごろ、昨年8月の台風11号と同様の進路が予想されたため、県は長安口ダムを管理する国土交通省四国地方整備局に、ダムに昨年より多く水をためるように対策を求めた。
ダムの水位はあらかじめ昨年より1・2メートル下げ、200万立方メートル多くためられる容量を確保したが、飯泉知事は「(まとまった雨で)ダムへの流入量は昨年に匹敵し、結果として和食、加茂地区に被害が集まってしまった」と釈明した。
県は昨年の被害を踏まえ、加茂、和食地区の堤防整備▽洪水が予想される際の水位調整能力を向上する長安口ダムの改造−−を進めている。さらに県は、長安口ダムの上流にある砂防ダム内に蓄積した土砂の大規模な除去を国に求め、長安口ダムに流れ込む土砂を減らす考えだ。飯泉知事は「三つの対策を同時進行し、できる限りの対策を取っていく」と述べた。【蒲原明佳】
—転載終わり—
昨年、国交省より情報開示された平成24年度版の堆砂データはこちらに掲載しています。
https://yamba-net.org/wp/?p=8339
昨年10月、会計検査院が堆砂によるダムの機能低下を指摘した記事をこちらに掲載しています。
https://yamba-net.org/wp/?p=9145