わが国では、国交省が河川行政についてほとんどすべての決定権を握っている一方で、実際に水害が発生した時には、「想定外の雨が降った」と、責任回避に終始するのが実態です。
昨年9月の台風により、水害が発生した利根川水系の鬼怒川では、上流に四基の巨大ダムが建設され、ダムの治水効果が大いに宣伝されてきましたが、水害を防ぐことはできませんでした。水害の被災者らが救済を求めて、茨城県と交渉したことが報道されています。
八ッ場ダム事業の主目的は、利根川の洪水調節ですが、事業費の大半は、ダム本体の建設ではなく、「生活再建関連事業」と称する道路建設などに費やされます。
◆2016年2月18日 東京新聞茨城版
http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/list/201602/CK2016021802000179.html
ー実態に見合った補償を 常総市の「被害者の会」が県と交渉ー
関東・東北水害で被災した常総市民ら約百六十人でつくる「常総市水害・被害者の会」は十七日、県庁を訪れて県と交渉、被害救済策の拡充などを求めた。メンバー二十四人が参加し「国の制度の壁を破り、実態に見合った補償が受けられるよう力を貸してほしい」と訴えた。
同会は、鬼怒川の治水対策に対する疑問や被災者の生活再建に関わる要望などを十二項目にまとめ、事前に県に提出。この日、県側から回答を聞いた。
この中で、鬼怒川上流に建設された湯西川ダム(栃木県日光市)に、県が支出した治水負担金百十一億円の使途をただしたところ、県側は「どう使われているか把握していない」と回答。「床上浸水世帯は半壊ではなく、全壊か大規模半壊に認定してほしい」という会側の要望に対して、県の担当者は「被害認定は国の基準に従って行っており、国に基準の見直しを求めていきたい」と述べるにとどまった。
交渉後、会見した会共同代表世話人の染谷修司さんは「われわれが望んだ回答はほとんど得られず、残念だ」と漏らした。「被害の深刻さについては真摯(しんし)に受け止めてもらえたと思う。被災者支援を拡充するため、県に国との交渉の先頭に立ってほしい」と話した。 (成田陽子)