2月28日に開催された国交省近畿地方整備局の有識者会議では、淀川水系の大戸川ダムと丹生ダムの検証案が取り上げられました。同局はこれまで両ダムとも中止の方針で下が、このたび出された検証案では大戸川ダムは推進、丹生ダムは中止と方針を転換しました。
二つのダムの検証案を一つの会議(わずか二時間)にかけるのは、大戸川ダム推進への風当たりを弱めるためと考えられます。
かつて近畿地方整備局は、住民参加の淀川水系流域委員会を主導し、河川行政改革の先頭バッターの役割を担っていましたが、今ではその面影はありません。一人当たりわずか5分の公述が許された公聴会と同様、有識者会議も通過儀式として開かれただけで、国交省の方針に反対する意見は出ませんでした。
とはいえ、必要性がない大戸川ダムについて、このまま推進されるのを黙って見過ごすことはできません。パブリックコメントが3月14日まで行われていますので、皆様も意見の提出をご検討いただければと思います。
https://www.kkr.mlit.go.jp/river/kensyou/daido_publiccomment1602.html
◆2016年2月29日 京都新聞
http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20160229000188
ー滋賀・大戸川ダム、環境評価「不十分」 国交省会議で学識者指摘ー
検証手続きが再開した大戸川ダム(大津市)と丹生ダム(長浜市)について、国土交通省近畿地方整備局は29日、大阪市内で検討結果について学識経験者から意見を聞く会を開いた。大戸川ダム建設を有利とする報告書素案については「流域の治水安全度を考えれば妥当」と評価する声の一方、「環境に対する量的な検討が不十分」と指摘する意見が出た。
防災や環境などの専門家11人が出席。2013年の台風18号で被害に遭った流域を調査した中川一京都大教授(水工学)は「大戸川流域の安全性という点では、早急な向上が必要。ダムは早期かつ経済的に治水安全度を上げる有効な手段」と話した。その上で「(下流の)宇治川、淀川の安全度向上にどうつながるかが素案から読み取れず、説明が不十分」と注文を付けた。
環境評価の記載には厳しい意見がみられた。鳥類を研究する須川恒龍谷大非常勤講師は「動植物の重要な種が確認されていないとする根拠は何か。10年以上前の調査に基づいている」と指摘。竹門康弘京都大准教授(河川生態学)も「どの治水案にしても、環境に対する便益と損失が一切、提示されていない」と強調した。
事実上の中止方針が示されている丹生ダムについては、「河川の流量不足などの対策は十分練るべき」「確保した用地の保全は国が責任を持って実施してほしい」などの意見があった。
◆2016年3月1日 朝日新聞滋賀版
http://digital.asahi.com/articles/ASJ2Y35S0J2YPTJB002.html?rm=319
ー環境面に懸念の声も ダム「有利」案で有識者ー
2009年に建設が凍結された大津市の大戸川ダム計画を検証している国土交通省近畿地方整備局は29日、治水案では「ダムが最も有利」とした報告書(素案)について学識経験者ら10人から大阪市で意見を聴いた。流域の安全を高めるため有効だとする意見の一方、環境面から慎重な検討を求める声も相次いだ。
河川整備に住民意思を反映させるため、整備局が設置した「淀川水系流域委員会」のメンバーらが出席。意見は報告書をまとめる際の参考となる。
「評価の仕方が不十分。環境面の便益、損失が一切反映されていない」。環境生態学の専門家はそう不満を述べ、賛成、反対以前の問題だと指摘した。「琵琶湖や瀬田川の生態系をどう守るかも評価に入れてほしい」との声もあった。
一方で「早期に、経済的に治水の安全がはかられる必要がある」とする意見や、環境面の検討が弱いとしつつも、「ダム建設が妥当。人命が損なわれては困る」との指摘もあった。
整備局などは、長浜市余呉町に計画され事実上の建設中止となった丹生(にう)ダムについても聴取。「協力し、家屋を移転した人にも説明責任を果たしてほしい」などの意見が出された。
◆2016年3月1日 読売新聞滋賀版
http://www.yomiuri.co.jp/local/shiga/news/20160229-OYTNT50153.html
ー大戸川ダム、「環境への影響検討を」ー
◇有識者ら「国交省検証は不十分」
7年前に本体工事が凍結された大戸川ダム(大津市)を巡り、国土交通省近畿地方整備局は29日、ダム建設案が他の治水案よりコスト面などで有利とした同整備局の検証結果について、有識者からの意見を聴く会合を大阪市内で開いた。有識者からは「環境に与える影響の検討が不十分」とする意見が相次いだ。
整備局の検証結果は、どの治水案でも環境への影響に大きな差はなく、コスト面などから総合的にダム案が最も有利としている。
会合には防災や治水、環境などの専門家らが出席。淀川の「わんど」で国の天然記念物・イタセンパラの生息調査をしている大阪府立富田林高の小川力也教諭は「野生生物は一度失えばなかなか戻らない。ダムが造られた結果、環境がどうなるのか慎重に検討してもらいたい」と発言。
他にも、同整備局が示す環境への影響の根拠を尋ねたり、さらに調査を行うことを求めたりする意見が出た。
また、同整備局の検証でダムの整備案が「有利でない」とされた丹生(にう)ダム(長浜市)について、出席者から「建設に協力してきた人たちには『国に裏切られた』という思いがある。思いをくんで、きちんと説明をしてほしい」などの声が聞かれた。
◆2016年2月29日 産経新聞
http://www.sankei.com/west/news/160229/wst1602290088-n1.html
ー凍結中の大戸川ダム建設、反対意見なし 有識者の意見聴く会「環境には配慮を」ー
建設凍結中の大戸川ダム(大津市)計画をめぐり、国土交通省近畿地方整備局は29日、治水対策としてダム建設が「最も有利」とした検証結果の報告書素案について、有識者から意見を聴く会を大阪市内で開いた。
一部から「環境への評価が足りず配慮が必要」との声が出たが、建設への反対意見はなかった。
会には大学教授や河川関連のNPO法人理事ら10人が出席した。京都大防災研究所の竹門康弘准教授は「建設による環境への損失や便益の試算がなく、これらを加味して事業評価すべきだ」と指摘。他の出席者からも、周辺の希少種など生物環境への配慮が必要との意見が出た。
ダム建設については、治水面から有効性を認める意見が一部からあり、反対や異論はなかった。
大戸川ダム計画は流域自治体の反対を受け、平成21年に国が凍結。整備局は今後、素案について滋賀、京都、大阪の3府県知事らの意見を聴くなどし、賛同が得られればダム事業への対応方針としてまとめ、最終的に国交相が適否を判断する。
◆2016年2月29日 NHK
http://www3.nhk.or.jp/lnews/otsu/2063138491.html?t=1456744390259
ー大戸川ダム 専門家から意見ー
建設計画が凍結されている大津市の「大戸川ダム」をめぐり、国が示した、流域の治水対策としてダム建設が「最も有利だ」とする検証結果について、専門家から意見を聞く会議が大阪市で開かれました。
大津市の「大戸川ダム」は、淀川下流の洪水防止などを目的に建設が計画されましたが、平成20年、地元の滋賀県のほか、下流の大阪府や京都府の知事らが建設に反対し、計画が凍結されました。
その後、国土交通省がダム建設が必要か改めて検証し、今月、ほかの案と比べて費用が低くおさえられ、流域の治水対策として「最も有利だ」とする結果を示していました。
29日、この検証結果について、国が学識経験者の意見を聞く会議が大阪市で開かれ、大学教授など10人が出席しました。
出席者からは、「治水対策で安全度が高まり、経済的な負担も低いことから、ダム建設は有効な手段だ」といった意見や、「ダム建設による、周辺の環境や地域社会への影響の評価が不十分だ」といった意見などが出ていました。
国土交通省近畿地方整備局河川計画課の奥野真章課長は、「ダム建設が有利だとする方針に変わりはなく、環境面で指摘があった点は検討したい」と話しています。
国は、今後、滋賀県や、大阪府、京都府の知事からも意見を聞き、最終的な事業案をまとめることにしています。