昨年9月に利根川支流の鬼怒川を襲った洪水について検証する目的で設置された鬼怒川堤防調査委員会の第四回会合が3月7日に開催されました。この調査委員会はこれが最終回とのことです。堤防の復旧工事が本格化している様子をマスコミに公開し、各紙が伝えています。
調査委員会では、復旧工法に問題がないと結論付けられたようですが、建設省OBの石崎勝義氏は、復旧工法に疑問を投げかけています。(国交省による鬼怒川改修計画の問題点)
◆2016年3月9日 朝日新聞茨城版茨城
http://www.asahi.com/articles/ASJ384K4SJ38UJHB005.html
ー決壊した鬼怒川堤防の復旧工事、本格的に始まるー
昨年9月10日に関東・東北豪雨で決壊した鬼怒川の堤防の復旧工事が、常総市三坂町上三坂地区で本格的に始まった。8日からは本堤防の盛り土工事が本格着手され、5月末までにほぼ完成し、6月に後片付けなどをして終わる予定だ。
堤防は約200メートルにわたって決壊。新たに取り付ける部分を含めて約280メートルの堤防ができる。高さは従来より最大で1・4メートル高い5・4メートル。幅は従来の1・5倍の6メートルとなる。川側の堤防には、長さ7・5~9メートルの鋼矢板292枚が打ち込まれ、水の浸透を防ぐ。堤防に使われる土は4万4千立方メートル。現場近くでは3種類の土を混ぜ、堤防の土にする作業が進められている。これらの様子は8日に報道陣に公開された。
鬼怒川の堤防決壊をめぐっては、原因を調査する鬼怒川堤防調査委員会が4回目の会合を7日に開いた。原因は堤防を越えた水が堤防本体を削り取ったことが主因とする、これまでの案を最終的な結論とすることでおおむね了承された。委員会は閉会し、調査結果は近く公表される。(五十嵐透)
◆2016年3月8日 読売新聞茨城版
http://www.yomiuri.co.jp/local/ibaraki/news/20160307-OYTNT50144.html
ー堤防調査委最終会合 「主に越水が原因」了承ー
昨年9月に起きた関東・東北豪雨による常総市の鬼怒川堤防決壊で、国土交通省関東地方整備局が設置した有識者による鬼怒川堤防調査委員会(委員長=安田進・東京電機大教授)は7日、さいたま市内で最終の第4回会合を開いた。決壊は主に川の水が堤防を越える越水が原因だったとする報告書案をほぼ了承した。同局が近く公表する。委員会は昨年9月に発足、会合のほか現地調査を行うなどし、決壊のメカニズムや復旧工法の妥当性を検討してきた。
報告書案では、決壊が発生した昨年9月10日の状況について、積乱雲が次々と列状に発生する「線状降水帯」で記録的な豪雨が発生した気象状況を指摘。河川巡視員や近隣の住民らが撮影した映像や、聞き取り調査結果を分析し、越水から決壊に至るまでの過程を時系列で記載した。
決壊原因については〈1〉記録的な大雨で川の水位が上昇し堤防を上回って越水が発生〈2〉堤防を越えた水が住宅側の堤防や地盤を削り、その後堤防を構成する砂状の土が次々と崩れた――と結論付けた。堤防の中を川の水が通り抜けて堤防を弱くする「パイピング」は、「決壊の主要因ではないが、助長する可能性は否定できない」とした。
復旧工法については▽堤防を高くし、幅も広げる▽遮水シートなどで堤防内部への水の浸透を抑制▽浸透した水を排水する設備の設置――などで安全性を高めるとした。
安田委員長は「本復旧工事は着実に進められるだろう。ただ、地元の復興はまだまだ。一日も早く復興が終わるよう願っている」と話した。
◆2016年3月8日 毎日新聞茨城版
http://mainichi.jp/articles/20160308/ddl/k08/040/048000c
ー「洗掘」で堤防決壊 調査委報告書案「復旧工法問題なし」 国交省整備局ー
国土交通省関東地方整備局は7日、学識経験者からなる「鬼怒川堤防調査委員会」(委員長・安田進東京電気大教授)を開き、常総市三坂町で昨年9月に鬼怒川が決壊した原因や復旧工法について、これまでの議論をまとめた報告書案を示した。今後は文言などを微修正し、月内にも正式な報告書として公表する予定。
報告書案では決壊について、堤防を越えてあふれ出した水流が堤防の外側を削る「洗掘(せんくつ)」が進んだことが原因とした。また復旧工法としては、決壊した堤防部分の上部と底辺の幅を拡張し、川側の斜面を遮水シートなどで覆う。さらに今後、水が堤防を越えても洗掘が起こらないよう、外側に排水設備を設ける。
同委員会は昨年10月に復旧工事の工法を了承し、工事自体は1月に始まっている。報告書の作成に当たって先月24日に現地調査をし、この工法で問題ないと結論づけた。安田委員長は「一日も早く復旧が終わってほしい」と述べた。工事は6月に完了する予定。【奥山はるな】