2010年10月から始まったダム検証は、5年半が経過し、全国の直轄ダム・水資源機構ダムで検証結果が出ていないのは、思川開発、木曽川水系連絡導水路、大戸川ダム、丹生ダム、利賀ダム、筑後川水系ダム群連携事業、城原川ダムの7事業となりました。
それぞれ、昨年からダム検証の結果を出すための動きが見られます。
(注:ダム事業には、直轄ダム・水資源機構ダム以外に、国庫補助を受けて建設される都道府県営ダムがあります。)
例えば、筑後川水系ダム群連携事業の検証の動き
http://www.qsr.mlit.go.jp/n-kawa/kensyo/04-damugunrenkei/kensyo-damugunrenkei.html
木曽川水系連絡導水路事業の検証の動き
http://www.water.go.jp/chubu/chubu/kensho/index.htm
これら未検証ダムのうち、思川開発(南摩ダム)、大戸川ダム、筑後川水系ダム群連携事業、城原川ダムの4事業は事業推進の方向が明らかになってきています。
富山県に予定地のある国直轄の利賀ダムについては、事業主体である国交省北陸地方整備局はまだダム推進の姿勢を示していません。
利賀ダム検証案についての意見募集が昨日から始まりましたが、その内容を見ると、ダム案のコストがまだ示されておらず、今回の意見募集は代替案を絞り込むための意見募集です。
国交省北陸地方整備局サイトより
http://www.hrr.mlit.go.jp/river/togadamu/date/iken/iken.html
利賀ダムを検証するための「検討の場」の第3回会合は3月29日に開かれました。この場で、富山県知事と関係五市町はダム推進を要求しました。
「利賀ダム建設事業の関係地方公共団体からなる検討の場」の資料は以下のページに掲載されています。
http://www.hrr.mlit.go.jp/river/togadamu/togadam%20kensetsujigyounokankeichihoukoukyoudantai.html
関連記事を転載します。
◆2016年3月30日 読売新聞富山版
http://www.yomiuri.co.jp/local/toyama/news/20160329-OYTNT50348.html
ー「利賀ダム」事業継続求めるー
「検討の場」で知事と5市長
民主党政権時代の2009年に本体工事が凍結された国の直轄ダム「利賀ダム」(南砺市、総事業費1150億円)を巡り、国と県、西部の5市が建設の是非を話し合う「検討の場」の第3回会合が29日、砺波市内で開かれた。
国土交通省北陸地方整備局はダムに代わる治水対策案4案などを提示し、石井知事と5市の市長はいずれもダム事業の継続を求めた。
治水対策の技術的な検討に時間がかかったことから、会合は前回の11年3月以来5年ぶりの開催となった。
利賀ダムは、庄川水系の利賀川に建設が計画され、治水と工業用水の確保を目的としている。現在、工事用道路の整備だけが進められており、工事の進捗(しんちょく)率は事業費ベースで約38%(15年度末見込み)。
民主党政権時代に、利賀ダムを含め全国83のダムで検証作業が始まり、これまでに47のダムが事業継続、24のダムが中止と決定されている。
◆2016年3月30日 チューリップテレビ
http://www.tulip-tv.co.jp/news/detail/index.html?TID_DT03=20160330144731
ー利賀ダム5年ぶりの検討会 国交省がダム代替案を提案ー
民主党政権によってダム本体の着工が凍結された「利賀ダム」について、建設の妥当性を検証する会議が5年ぶりに開かれました。
国土交通省がダムの建設に代わる治水対策案を示したのに対し、石井知事は改めてダムの重要性を訴えました。
検討会には、石井知事と庄川流域の5人の市長が出席。
国交省の担当者が、『治水』や『水の流れのコントロール』などの3つの観点から、ダム建設に代わる25の案を示しました。
これらの案は、いずれも30年に一度の災害を想定し、川底の掘削や人工的な支流の整備などの際のコストを重視しています。
利賀ダムの事業は、庄川の支流の利賀川で計画されていて、氾濫を防ぐ効果に加え、工事用道路の整備を期待する声もあります。
民主党政権によって2009年に本体工事が凍結され、その後、建設の妥当性をめぐる検討が続いています。
示された代替案について石井知事は、利賀ダムが150年に1度の大災害を想定していることを指摘し、より高い安全性の確保に理解を求めました。
「他の方法のほうがコストが安いから、そちらでということにはならないはずなんですね」「結果として150年に一度の安全度のある利賀ダムの建設促進が図られる」「ぜひそういう方向で国にも働きかけていきたい」(石井知事)
今後は、代替案について関係機関から意見を聞いたあと、次回の会議でさらに検討を行う予定です。
◆2016年4月4日 神戸新聞
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201604/0008955520.shtml
ーダム計画検証完了遠く 旧民主主導公共事業見直しー
民進党結成に伴い、20年近く掲げた看板を下ろした民主党。その“最盛期”の2009年秋、政権の座についた直後に華々しく打ち出した「ダム検証」を覚えているだろうか。「コンクリートから人へ」の掛け声の下、公共事業見直しの象徴として兵庫県内3カ所を含む全国84カ所の計画で始まった必要性の再検討。政権運営の行き詰まりと党勢低迷で国民の関心を失ったが、6年半たった今も作業は完了していない。(小川 晶)
「地元から早期終了を求める動きもあり、対応方針素案をまとめました」。2月初旬ごろ、兵庫県総合治水課に、国土交通省近畿地方整備局の担当者から丹生(にう)ダム(滋賀県)の検証作業について連絡があった。
事業主体は、独立行政法人「水資源機構」で、兵庫県は渇水対策の分野で関係自治体に加わる。検証に主体的に関わる立場ではなかったが、具体的なやりとりがあったのは約2年ぶりだった。
従来の方針にとらわれないダム検証は、民主党政権が政治主導で打ち出した“目玉施策”だった。12年に政権が自民、公明両党に戻ってからも検証は継続。国交省によると、対象となった84カ所のダムのうち、12カ所でまだ結論が出ていない。
治水、流水維持、渇水対策の三つの機能が想定される丹生ダムもその一つ。同整備局などによると、関係自治体の意見を集約する会合を14年1月まで5回開き、「建設は有利ではない」とする中止寄りの方向性を出した。その後、地元説明を経て、機能別の評価などを盛り込んだ対応方針素案を固めたという。
同機構は「多目的ダムで検討すべき項目が多く、地元への周知も丁寧に進めた」と経緯を説明する。まだ事業評価監視委員会や国交省有識者会議の審議などが必要で、完了のめどは定まっていない。
一方、結論が出ていないダムの中には、関係自治体の会合が今年3月末まで約5年間も途絶えていた利賀(とが)ダム(富山県)のようなケースもある。
検証に携わった経験がある国交省関係者は検証の意義や基準の厳格さは変わっていないと強調する一方、「民主党が政権を失い、事業の優先順位が低下した可能性は少なからずある」と指摘。同党がマニフェスト(政権公約)に建設中止を明記し、検証の象徴だった八ツ場(やんば)ダム(群馬県)が11年度に「継続」と結論付けられ、検証全体がトーンダウンした影響もあるとみる。
ダム検証を所管する国交省水管理・国土保全局は「早期に結論を出すよう指導する立場ではあるが、急がせると予断を与える恐れがあり、特に期限も決めていない」としている。
ダム検証 国の有識者会議が定めた基準に基づき、国や都道府県などの事業主体が関係自治体などの意見を「検討の場」で集約して方針を決定する。有識者会議での再検討を経て、最終的に国土交通大臣が継続か中止かを判断する。兵庫県内では3カ所の県営ダムが対象となり、武庫川(西宮、宝塚市)は中止、金出地(かなじ、上郡町)と西紀(篠山市)が建設継続と決まったが、いずれも事前に県がまとめた方針通りだった。
—転載終わり—
神戸新聞の記事に載っている表を見ると、中止決定ダムが24ありますが、これらのダム事業は事業者の都合で中止になったものです。
八ッ場ダム同様、反対の声の大きい問題のあるダム事業は全国各地にありますが、事業者自らが検証を行うことになっているため、どれほど問題があっても事業者が推進しようとしているダム事業は中止されていません。