政府は17日、初の水循環白書を閣議決定しました。
一昨年7月、水循環基本法が制定され、昨年2015年7月に水循環基本計画が策定されています。
内閣官邸にある「水循環政策本部」のHPに水循環白書が掲載されています。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/mizu_junkan/h27_mizujunkan_shisaku.html
白書は、「水循環施策をめぐる動向」と「平成27年度 水循環に関して講じた施策」の二部構成とのことです。
平成27年度水循環施策について(PDF形式:1MB)
平成27年度水循環施策 (PDF形式:9MB)
「水循環基本法」は多くの期待を集めて制定され、報道記事からも環境に配慮した施策が進む印象を受けますが、残念ながら新たな法律によって現在の水行政、河川行政が変わる気配はありません。
政府は、内閣官邸に「水循環政策本部」を設置し、水循環白書をつくって水循環政策に取り組んでいるように見せていますが、水循環基本法が実効力を持たないように、水官僚、河川官僚が骨抜きにしてしまったという指摘もあります。
上記の白書を見ると、共同通信の記事(毎日新聞掲載)にあるように、ダム等の施設の維持管理が将来的に大きな課題となることに触れてはいるものの(「平成27年度水循環施策」17ページ)、ダムに関する記述は「全国各地の森林、管理ダム等において、水源林やダムの見学会や周辺でのレクリエーション等の様々な取組を実施した」ことを「水循環に関する普及啓発活動」として取り上げ(「平成27年度水循環施策について」7ページ)、ダムカードの配布(「平成27年度水循環施策」49ページ)やダム予定地にダム計画を受け入れさせるための「水源地域整備計画」(「平成27年度水循環施策」63~64ページ)、「水の週間」に絡めたダム事業の各種キャンペーン(「平成27年度水循環施策」69ページ)など、これまで国交省が全国のダム事業を推進するために行ってきた膨大なダム関連事業を含め、ダム行政そのものを「水循環施策」に位置付けています。
「平成27年度水循環施策」17ページより
関連記事を転載します。
◆2016年5月17日 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20160517/k00/00e/040/142000c
ーダム、水道、農業用水路「不十分」 水循環白書ー
政府は17日の閣議で決定した2016年版水循環白書で、ダムや水道、農業用水路の耐震化が不十分との認識を示した。ゲリラ豪雨の増加などで近年は水害が激しくなっているとして、備えの重要性を強調。高度成長期以降に整備された各種施設が一斉に更新時期を迎えるため、老朽化への対応が急がれるとした。
最近の地震や豪雨災害で、長期の断水や汚水処理施設の機能停止が相次ぎ「脆弱(ぜいじゃく)さが明らかになった」と指摘。施設の耐震化に加え、水道事業などの事業継続計画(BCP)の作成、地域間の相互応援体制づくり、人材育成を急ぐべきだとした。災害時の地下水の利用も課題に挙げた。(共同)
◆2016年5月17日 NHK
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160517/k10010523851000.html
ー水循環白書を閣議決定 自治体などに計画策定求めるー
政府は17日の閣議で初めてとなる「水循環白書」を決定し、自治体などに対し水資源の保全と有効利用などを目的に求めている計画の策定が進んでいないとして、河川の流域全体を視野に入れた計画を策定するよう求めています。
政府は17日の閣議で、水循環基本法に基づいて河川など水資源の現状と課題をまとめた初めての「水循環白書」を決定しました。
それによりますと、水循環基本法に基づいて、自治体などに対し水資源の保全と有効利用などを目的に求めている「流域水循環計画」の策定が、内閣官房のアンケート調査によってほとんど進んでいないことが明らかになったとしています。
白書では、関係機関が連携して河川の流域全体を視野に入れた計画を策定するよう求めているほか、東日本大震災など、自然災害の際に水道が甚大な影響を受けたことを踏まえ、復旧訓練や地下水の一時的な利用などの必要性を指摘しています。
◆2016年5月17日 日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS16H7B_X10C16A5EAF000/
ー地方自治体の水循環計画、策定7%どまり 初の白書ー
政府は17日、水循環白書を閣議決定した。水質や水源の保全、地下水の利用などの政策を一体的に進めるための計画を策定した地方自治体が全体の6.7%にとどまると指摘。「流域全体を視野に入れた取り組みをいっそう推進していく必要がある」とした。
2014年に成立した水循環基本法に基づく初めての白書。水循環基本法は複数の自治体にまたがり管理が難しかった河川を流域単位で管理するよう求めている。
自治体がつくった87計画中、流域全体を対象にしたものは13しかなかった。白書は福井県の大野盆地や東京都と神奈川県にまたがる鶴見川流域の事例を紹介し、地域間の連携を促した。
◆2016年5月17日 時事通信
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016051700145&g=eco
-流域連携の推進を=初の水循環白書決定-政府ー
政府は17日の閣議で、水循環基本法に基づき初めてまとめた水循環白書を決定した。自治体や企業が連携し、河川や水系ごとに地下水の保全や渇水といった水関連の課題に取り組む「流域マネジメント」推進の重要性を強調している。
白書は水循環に関する施策に関し、行政や企業がそれぞれ個別に対応していると指摘。今後は流域単位を基本に、各主体が課題に対する共通認識を持ち、河川流域の将来像を共有することが重要だと強調した。その上で、福井県大野市で関係者が協議会を設置し、連携して地下水保全に取り組んだ事例などを紹介した。
◆2016年5月17日 産経新聞
http://www.sankei.com/life/news/160517/lif1605170017-n1.html
ー水質汚濁対策へ「流域マネジメント」推進盛り込み 28年版水循環白書ー
政府は17日午前の閣議で、自治体や企業が連携して、渇水や洪水、水質汚濁などの課題に取り組む「流域マネジメント」の推進を盛り込んだ平成28年版水循環白書を決定した。複数の自治体にまたがる河川に関し、行政や事業者が情報を共有する必要性や、水資源を有効に使うための専門知識を持つ人材が不足していることを指摘した。
27年度に講じた水循環の施策については、健全な水の使用に関する教育や、河川流域における自治体間の連携推進など9分野を明記した。
同白書は26年に制定された水循環基本法に基づき、初めて作成された。