川原湯温泉の柏屋旅館の経営者が代替地に建てた老人ホームが7月に営業を開始するとのニュースを地元紙が報じています。
川原湯温泉の柏屋旅館は、かつては水没予定地の温泉街の坂道の一番上にありました。戦後の高度成長期、働き者の女将さんの活躍で、大きなコンクリートの建物を建て、川原湯で最も多い、収容人数150人を誇る旅館でした。
当時、柏屋旅館は川原湯のダム反対闘争の中心的な旅館の一つでした。反対闘争が30年前に事実上終息した後も、川原湯では条件闘争が続き、2004年に代替地の分譲基準が高額に設定されたときは、柏屋旅館の先代のご当主が異議を唱える姿がテレビで映し出されました。
水没予定地の柏屋旅館が休業に入ったのは2010年4月。翌2011年11月には旅館が解体されました。
川原湯では水没予定地の柏屋旅館の隣にあった高田屋旅館の経営者も、すでに別の土地で老人ホームを経営しています。
水没予定地の川原湯温泉には20軒もの旅館が軒を連ねていましたが、現在、代替地の川原湯温泉で旅館を再開しているのは3軒、今夏に再開を予定している旅館が一軒、民宿を経営しているのが一軒です。
川原湯温泉の中軸であった二つの老舗旅館が業種を転換したことは、ダムに反対した住民たちが懸念した通り、代替地における観光業を取り巻く経営環境の厳しさを物語っているのではないでしょうか。
◆2016年6月11日 上毛新聞
http://www.jomo-news.co.jp/ns/4314656072966159/news.html
ー八ッ場ダム代替地に老人ホーム完成 風呂は温泉、足湯もー
柏屋旅館が来月開業 長野原
長野原町の八ツ場ダム建設に伴う打越代替地に、川原湯温泉の柏屋旅館が建設を進めていた老人ホーム「はなかしわ」が完成、10日に内覧会が行われ、多くの見学者が訪れた。内覧会は11、12の両日にも行われる。 開業は7月1日。
老人ホームを経営する柏屋旅館は、江戸時代末期創業の老舗。代替地での旅館開業を検討していたが、スタッフの高齢化などで現段階での旅館としての開業は困難と判断し、老人ホームの経営に乗り出すことにした。
完成した施設は、木造平屋建ての約590平方メートル。入居時の要件は60歳以上の要介護者となっている。定員は20人で8畳程度の個室が20部屋あるほか、通所介護事業所と訪問介護事業所を併設する。老人ホームの利用料金は月9万9780円。
温泉旅館の運営母体が経営することから、源泉を活用し、老人ホームの風呂に温泉を使用するほか、足湯施設を併設した。足湯は入居者だけでなく、広く来訪者に開放する。
豊田幹雄社長は「この施設を中心に少しでも地元に活気が戻るとうれしい。足湯があるので、多くの人が気軽に訪れる施設にしたい」と話した。