台風の影響を考慮して延期されていた浅川ダムの試験湛水が10月11日に開始されたとのニュースが流れています。
浅川ダムの工期は来年3月末。わずか半年の試験湛水で安全性を十分確かめることができるのでしょうか?
八ッ場ダムの現在の計画では、試験湛水期間は2018年10月から2019年3月末までと予定されており、浅川ダムと同じく半年間です。
◆長野県公式ホームページより(2016年10月11日更新)
・浅川ダム試験湛水の状況について
http://www.pref.nagano.lg.jp/asakawa/dam/tansuijyoukyou.html
http://www.pref.nagano.lg.jp/asakawa/dam/s-tansui.html
◆2016年10月11日 信濃毎日新聞
http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20161011/KT161011ASI000007000.php
ー県営浅川ダム(長野市)試験湛水を開始ー
県は11日午前、県営浅川ダム(長野市)に水をためて安全性を確認する「試験湛水(たんすい)」を始めた。水をためることに伴うダム本体の傾き、漏水の有無や、地滑り対策の効果などを確認する。同ダム計画は、田中康夫元知事の「脱ダム」宣言による本体工事の中止など紆余(うよ)曲折を経て、2010年3月に着工。ダムは試験後に本格運用を始める方針で、事業は最終段階に入った。
浅川ダムは治水専用ダムで、通常時はダムの下部に設けた穴「常用洪水吐(こうずいば)き」(高さ1・45メートル、幅1・3メートル)から水を流し、洪水時には自然に水がたまる仕組み。高さ53メートル、上部幅165メートルで、総貯水容量は110万立方メートル。県は、ダムを含む流域の治水水準について「100年に1度」程度の大雨(日雨量130ミリ)に対応できる規模としている。総事業費は約380億円。
この日は、ダム建設に携わった共同企業体(JV)による式典の後、県が「湛水式」を開催。常用洪水吐きをふさぐゲートを下げ、流入部分を閉鎖し、貯水池に水をため始めた。県長野建設事務所(長野市)の山岸勧所長は湛水式で、「安全確認に万全を期し、できるだけ細かに状況を公表したい」とあいさつした。
試験は1日1メートルを目安に水をためるよう調整。常用洪水吐きから最高水位までは約42メートルあり、11月中旬から来年1月上旬ごろに満水となる見通しだ。試験中は県職員がダム管理棟に24時間態勢で常駐し、データ観測や巡視を行うほか、ダム管理棟脇に設置した2台のウェブカメラの映像を、県浅川改良事務所のホームページで常時公開する。
◆2016年10月13日 日経コンストラクション
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/atcl/cntnews/15/101200558/
ー長野県の浅川ダム、紆余曲折を経て試験湛水開始ー
長野県は、長野市内で建設を進める浅川ダムで、10月11日から試験湛水を開始。同日午前に施工者JV主催で湛水式を開催した。
この9月末時点の現場。上流側から見た浅川ダム。上部にスリット状の非常用洪水吐き(6門)が見える。写真で堤体下方のやや左手付近に常用洪水吐きがある(写真:長野県)
浅川ダムは長野市北東部で、信濃川水系(長野県内は千曲川)の浅川に設ける洪水調節専用のダム。堤体高53m、堤頂長165m、堤体積14万3000m3の重力式コンクリートダムだ。自然調節の常用洪水吐き1門(高さ1.45m、幅1.3m)と自由越流の非常用洪水吐き6門(それぞれ高さ1.8m、幅13m)を備える。総貯水量は110万m3。通常時は貯水しない流水型ダム(穴あきダム)で、増水時に流水を貯めて水害防止を図る。
今後の降水量やそれに伴う流入量によるが、県のシミュレーションでは1カ月から3カ月の範囲で目標とするサーチャージ水位に到達する見通しだ。サーチャージ水位は、常用洪水吐きの敷き高から高さ42.1mのレベルに当たる。試験湛水中の貯水位や状況画像などは、県浅川改良事務所がホームページで順次公開する予定だ。
「脱ダム宣言」から15年余、完成は目前
浅川ダムについて、「脱ダム宣言」を唱えたことで知られる田中康夫・元長野県知事が本体工事を一時中止したのは2000年11月のこと。02年9月、県は本体工事の契約を解除した。その後、流域の住民や市町などを交えた議論を重ねたが、全体の合意形成は事実上、行き詰まりの様相を見せる。最終的に県は、ダムを治水専用としたうえで河川改修と組み合わせた案を提示し、07年に現在の建設事業でベースとなる河川整備計画の認可に至った。
こうした紆余曲折を経た後、同ダムの本体工事は10年5月に着工。大林組・守谷商会・川中島建設JVが施工を手掛け、14年7月に堤体本体へのコンクリートの最終打設を完了した。契約工期の17年3月に向けて、建設工事は最終盤の段階に入っている。現時点で総事業費は380億円、本体工事費は地すべり対策工事を含めて約68億円だ。
◆2016年10月12日 産経新聞
http://www.sankei.com/region/news/161012/rgn1610120023-n1.html
ー田中元知事が中断の長野県営浅川ダム試験湛水開始ー
田中康夫元知事による「脱ダム宣言」の象徴となった長野市の県営浅川ダムで県は11日、工事完成への最終段階となる試験湛水(たんすい)の作業を開始した。通常時は水をためない「穴あきダム」に注水することで強い負荷をかけ、安全性を確認する。建設に反対する住民らによる訴訟が東京高裁で続くが、作業が終われば長年にわたり流域の住民を苦しめてきた暴れ川の治水対策は節目を迎える。
浅川ダムは、千曲川に流れ込む浅川(長野市-小布施町、延長17キロ)の治水と利水を目的に計画され、平成12年9月に本体部分の工事契約が結ばれた。しかし直後に就任した田中元知事が同11月、工事を中断した。さらに脱ダム宣言で事業は白紙となり、治水対策は有識者や地元住民らによる検討委員会に委ねられた。だが恒久的な対策は見いだされず、県議会による田中元知事に対する不信任決議の引き金になった。
その後、治水の安全度を下げた河川改修や遊水池の整備などが検討されたが、国や地元の理解が得られないまま、村井仁前知事が19年に穴あきダムの建設を決めた。治水専用で通常時は貯水せずに底部に設けた排水口(高さ1・4メートル、幅1・35メートル)から川の水が流れ続け、大雨の時だけ一時的に水をためる構造とした。22年5月に着工し、同9月に就任した阿部守一知事も建設の継続を決定した。
ダム本体は高さ53メートル、横幅165メートルで、最大貯水量は110万立方メートル。周辺の付け替え道路も含めた総事業費は約380億円。流域全体で行われた河川改修事業(昭和52~平成27年度)と、千曲川との水位差で浅川の水があふれる「内水氾濫(はんらん)」への対策事業(26~30年度)を組み合わせ、市街地への洪水を防ぐ。
試験湛水は、排水口をふさいで1日1メートル以下の高さとなるように水をためていく。流水量によるが、11月下旬~12月上旬にはダム最上部から水が流れ出す満水状態に達する見通しだという。排水時も同様のペースでゆっくりと水位を低下させ、2月中旬には作業が終了する予定。
県は作業期間中に、水位の変化に伴って起こるダム本体のわずかな変形量のほか、岩盤との継ぎ目からの漏水量や地滑り対策を実施したエリア、地下水位の変化などを観測する。それにあわせて安全を確認するために職員が24時間態勢で管理事務所に常駐する。
11日に現地で行われた湛水式では、県や工事関係者ら約20人が見守るなか、県長野建設事務所浅川改良事務所の小林功所長が「湛水開始」を宣言し、排水口のゲートが閉じられた。
県河川課は「安全性を示して住民の理解が得られるように努めたい」としている。観測の状況は常時、同事務所のホームページに公開される。
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★関連ページ→長野県の浅川ダム、10月試験湛水開始