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荒瀬ダム 撤去、終盤 球磨川、本来の姿へ

 わが国初の本格的なダム撤去として注目される熊本県・球磨川の荒瀬ダム工事は終盤を迎えており、来年度には終了する予定です。
 脱ダム運動の先進地である球磨川流域を長年取材してきた記者によるレポートが紙面に掲載されています。

 球磨川では、荒瀬ダムの10キロ上流に瀬戸石ダム(電源開発)があります。この瀬戸石ダムも撤去しなければ、球磨川の本来の清流はよみがえりませんので、流域住民が瀬戸石ダムの撤去も求めてきましたが、瀬戸石ダムの水利権は2014年3月に新たに20年間の更新が許可されてしまいました。
 荒瀬ダムの撤去は、川辺川ダムの休止とともに、熊本県が潮谷義子・前知事の時代に方向性が決まりましたが、2008年、蒲島郁夫知事に交代すると、熊本県は瀬戸石ダムの水利権更新に支障なしとの意見を出し、瀬戸石ダム撤去のせっかくのチャンスを潰してしまいました。

◆2016年11月12日 毎日新聞熊本版
 http://mainichi.jp/articles/20161112/ddl/k43/040/383000c
ー荒瀬ダム 撤去、終盤 球磨川、本来の姿へ 上流の瀬戸石ダムに影響 ー

 八代市の球磨川で進む荒瀬ダムの撤去工事が終盤を迎え、1953年にダム建設が始まる前の川本来の姿に戻りつつある。11日には、左岸付近のダム土台部分を崩すための発破作業が始まった。今年度中に土台部分を撤去する予定で、水面に出ている河川内構造物が消えることになる。撤去工事は来年度で完了する計画。【福岡賢正、笠井光俊】

 荒瀬ダムは高さ8メートルのコンクリートの土台部分の上に9本の門柱を築き、鋼鉄製の8枚のゲートで流れをせき止める貯水量1013万立方メートルの発電専用ダムだった。着工2年後の55年に完成したが、ダム湖に恒常的にアオコが漂って悪臭を放つなど水質が悪化し土砂堆積(たいせき)で河床が上がって洪水も頻発するようになった。このため住民から撤去を求める声が上がり運営する県が2012年度から国内初の撤去工事を始めた。

 すでに両端を除く7本の門柱と8枚のゲートが取り除かれ、川を横断していた堤体も右岸側から3分の1ほど撤去が終わった。このため平常時に水が流れる「みお筋」部分が完全に復活し、ダム建設前の自然な流れに戻っている。ダム湖に沈んでいた瀬やふちも姿を現し、ダムの直下流にあった球磨川最大のアユの産卵場も再生した。

 11日は、残っている左岸付近の土台部分を崩すための第1回目の発破作業が実施された。午後1時半から、両岸の国道や県道を約10分間通行止めにしたうえで、土台部分の一部にひびが入るように埋め込んだ爆薬を爆破させた。県企業局によると、同様の発破作業を約30回実施して順次、土台を撤去していくという。

 荒瀬ダム撤去の一方で一層際立ってきたのは、荒瀬ダムの10キロ上流で今も川をせき止めている瀬戸石ダムの問題だ。ダム湖内では相変わらずアオコの発生が続き、ダム湖より上流までは雨で濁流となっても短期間で水が澄むが、ダム湖より下流は何日も濁りが続く。

撤去運動を主導した同市坂本の本田進さん(83)は「荒瀬ダム撤去で戻ってきた自然を生かして地域の活性化につなげようと思っても、この夏は猛暑と少雨でダム湖に発生した大量のアオコが下流に流され、荒瀬ダム撤去で再生した河原の石に付着して緑色の帯で縁取られたほど。アユもほとんど釣れていない。球磨川を日本一の川に戻すには瀬戸石ダムの撤去も実現させねば」と話す。