長野県の河川では、アユを放流しても釣れなくなったという記事がネットにアップされています。
釣り人によれば、放流したアユが釣れないのは、長野県に限ったことではなく、全国的な問題のようです。要因は冷水病、カワウなど色々考えられますが、旧水産庁が水資源開発に歩調を合わせて、1963年から稚魚放流を義務付けたツケがこの10年で一挙にやってきた、という指摘があります。川の荒廃を放流でカバーしようという対策が破綻をきたした、ということのようです。
◆2017年2月27日 THE PAGE
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170227-00000012-wordleaf-soci
ー「放流してもアユが釣れない」長野の河川で魚が減った?ー
「信州の河川から、なぜ魚が消える?」。長野県の内水面漁場管理委員会で、委員からこんな声が相次ぎ、本格的な調査の可否などについて県側に検討を求めています。委員会は魚の病気の予防策や放流・増殖する魚の量などを調整する実務作業が本来の中心的な仕事。しかし、放流しても釣果がないといった県内河川の最近の傾向に危機感を募らせた委員から「原因解明を」との意見が続出。同県の諏訪湖のワカサギ大量死問題と合わせ、県内河川のもう一つの問題として浮上する可能性も出てきました。
漁業関係者や専門家らが審議
内水面漁場管理委員会は、知事から独立して河川・湖沼(内水面)における水産動植物の採集、捕獲や増殖について調整したり対策を講じる機関。漁業法と地方自治法で設置が義務付けられ、長野県は県内各地の漁業協同組合、養魚場、釣りの団体、漁業や環境の専門家などの学識経験者ら13人で委員を構成し、会長は平林公男信大繊維学部教授です。
13日に開かれた委員会では、魚の伝染病のコイヘルペスウイルス(KHV)病の対策と、各漁協から提出された種苗(稚魚など)の放流量の変更希望について審議し、それぞれ決定しました。
コイヘルペスは2003(平成15)年に茨城県霞ケ浦で発生してから各地に広がり、長野県では翌04年度に34市町村で発生を確認。このため05年に同委員会は全国の動きと合わせ「県内の河川・湖沼など公共用水面で捕ったコイは生きたまま持ち出してはならない」とする「委員会指示」を実施しています。
2015年度以降は県内で発生していませんが、全国の発生状況はここ数年11~13都道府県と横ばい状態で一定の発生があり、他自治体の持ち出し禁止の解除もここ数年ないため、長野県は引き続き2017年度も持ち出し禁止とすることにしました。
解禁日に数匹しか釣れない川も
こうした病気対策に加えて委員会を困惑させたのが県内河川の魚の減少。この日申し出があった各漁協の増殖変更の説明でも「昨年6月に300キロのアユの稚魚を放流したが、試し釣りをしてもアユの姿が見えない。釣り客も少なく、不調だった」「川によっては10年来、アユを放流しても解禁日に数匹しか釣れない」などと報告。漁協によっては「こうした状況で組合員も減少し、漁協の経営は年々悪化している。今年度は赤字見込みだ」と、内水面漁業の衰退につながる実態も訴えています。
危険な伝染病の対策に加え、先細りの漁業の実態に、委員からは「アユを放流しても釣れない。川の状態を回復させる対策を進めてほしい。委員会としても注視していきたい」「放流しても釣れないのは河川環境が悪化したためと思われるが、原因は何か」などと意見や質問が相次ぎました。
カワウの食害? 原因は不明
事務局は「原因は特定できない。カワウや外来のコクチバスの食害とも言われているが実態は不明です。水質環境については明確な因果関係は確認されていない」などと説明し、「放流した魚が消える」原因は不明。
これについてある委員は「内水面の資源の利用について当委員会の役割は大きい。アユがいなくなる原因が分からないもどかしさがある。何とかしなければいけない」と強調。「気象庁は長年のデータを積み重ねて予報をしている。内水面の実態についてもいろいろな角度のデータを積み重ねて環境の変化などをつかむべきではないか。その仕組みを作れるのは行政しかない」と、県側に訴えました。
長野県では昨年7月に数十万匹ともいわれるワカサギが死んで、湖水の酸欠などが取りざたされているものの、この件もいまだに原因は不明。専門家による検討会で本格調査を予定しています。
内水面漁場管理委員会は知事の諮問に対する答申や、対策が必要なときに関係者に「指示」を出すことができますが、行政委員会として自ら積極的に調査活動をすることはできないため、委員のこの日の発言の多くは「私見だが」などと条件付きに。事務局の県は、これらの意見は関係部局などに伝えるとしています。
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■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説