八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

川辺川ダムの代替案をめぐる 球磨川治水対策協議会

 2009年の政権交代の際、民主党の政権公約(マニフェスト)に八ッ場ダムとともに「中止」を掲げられた熊本県の川辺川ダム。いずれも国交省のダム事業ですが、川辺川ダムは政権交代前に下流の自治体や熊本県の反対表明があったことから、八ッ場ダムとは異なり、事業は継続されていません。しかし川辺川ダム事業の中止手続きはとられておらず、国交省はいまだに川辺川ダム計画をあきらめていないと言われます。
 ダム中止手続きをとらない理由は、ダムに代わる「治水」(洪水対策)の代替案がまとまらないこと、とされています。

 さる3月21日、川辺川ダムの代替案を検討する「球磨川治水対策協議会」の第7回会合が、続いて、そのトップ級会議(九州地方整備局長、熊本県知事、市町村長)が22日に開かれました。

 これらの会議の配布資料が国交省九州地方整備局・八代河川国道事務所のホームページに掲載されています。
 http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/river/damuyora/index.html 

 1月6日~2月6日の期間で行われた意見募集(パブリックコメント)の結果も掲載されています。
 http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/site_files/file/activity/kaisaisiryo/20170321sankoushiryou1.pdf

 上記のパブコメには110人が意見を出しており、多くの人が球磨川の行く末を案じていることがわかります。その大半の意見は検討案の内容がよくわからないので、住民への説明を丁寧に行ってほしいというものでした。

 今回の意見募集を行った国土交通省の狙いは、代替案がなかなか決まらないことに業を煮やして、川辺川ダム計画を復活せよという声が出てくることにあったように思いますが、幸いなことにそのような意見は数人だけでした。

 地元の人々にとって、球磨川は身近な存在です。大雨の際、水がどのように流れるか、水害に対してどう備えればよいか、ダムがいかに河川環境にダメージを与えるかを流域住民がよく知っており、国交省が洪水の恐怖をあおっても騙されないだけの知恵を身につけていることが川辺川ダム計画の復活を阻んでいるようです。

 ひるがえって、利根川流域はどうでしょうか。八ッ場ダムの事業費を負担する首都圏一都五県の住民の多くにとって利根川は遠い存在であり、「利根川流域住民の生命と財産を守る」という名目で八ッ場ダム事業が進められていることを殆どの人が知りません。

 関連記事を転載します。

◆2017年3月23日 毎日新聞熊本版
http://mainichi.jp/articles/20170323/ddl/k43/010/247000c 
ー球磨川治水対策協議会 避難方法検討を 八代市長が注文 トップ会議 /熊本ー

 球磨川水系の「ダムによらない治水を検討する場」を引き継いだ「球磨川治水対策協議会」は22日、国土交通省九州地方整備局長と蒲島郁夫知事、流域市町村長によるトップ会議を県庁で開いた。

この1年間の協議会での検討内容の他、「検討する場」で作られた治水対策の進捗(しんちょく)状況を確認した。

 トップ会議は年1回開かれている。副市町村長ら実務者が中心の同対策協議会は21日、8項目の治水策の組み合わせを検討することを決め、22日のトップ会議でその方針を改めて確認した。

会議では、中村博生・八代市長は「放水路案は『新球磨川』を作ることと理解しているが、下流域の八代で一気に水量が増える可能性があり、住民避難のやり方も合わせて検討してほしい」と注文した。

複数の市町村長は「実現可能性やコストを含めてできるだけ早く組み合わせ案を提示してほしい」と要望した。【笠井光俊】

◆2017年3月22日 毎日新聞
 http://mainichi.jp/articles/20170322/ddl/k43/010/257000c
ー球磨川治水対策協 8項目で組み合わせ検討 /熊本ー

 球磨川水系の「ダムによらない治水を検討する場」を引き継いで設置された「球磨川治水対策協議会」の第7回会合が21日、人吉市であった。今後、球磨川本流と支流・川辺川を計6区間に分け、河道掘削など8項目の治水策の組み合わせによる治水効果の検討に入ることを確認した。

 これまで治水策は9項目だったが、森林保全など流域での対策は「今以上の治水効果が薄い」として除外。川水を安全に流下させる対応(引堤(ひきてい)▽河道掘削▽堤防強化)、洪水を貯留・分流させる対応(遊水地▽市房ダムの能力アップ▽放水路)、その他(宅地かさ上げ▽輪中堤)の8項目を検討対象にする。

 その上で国土交通省九州地方整備局と県は、安全流下と洪水貯留・分流の各グループ内での組み合わせを先行して検討し、実施可能な範囲でその他の2項目も検討を進める方針を示し、了解された。

組み合わせ案と一緒にコストも提示される予定。九地整は「組み合わせ案の整理に相当の時間は必要だが、できるだけ早く提示したい」と話した。

 また会合では、9項目の治水策について1月~2月初旬に実施したパブリックコメントの結果が公表された。球磨川流域内外の110人の7割近くは「住民に意見を求めるなら、分かりやすく説明してほしい」「住民説明会を開催してほしい」といった意見だった。

 また同協議会はダム建設を除外して治水策を検討しているが、蒲島郁夫知事が白紙撤回した川辺川ダム建設が「最良」とする意見が数件あった。一方、球磨川中流にある瀬戸石ダムの撤去を求める意見もあった。【笠井光俊】