2013年5月17日
八ッ場ダムの本体関連工事の入札公告が行われたというニュースの陰で、住民の移転代替地の分譲基準の見直し案が提示されたという重要なニュースが群馬版の紙面に掲載されました。
八ッ場ダム予定地では、1960~70年代に激しいダム反対運動がありましたが、住民の強固な絆を切り崩すために群馬県と国によって”現地再建ずり上がり方式”による代替地計画でしたが提示されたという経緯があります。
ダム予定地の住民は水没線より標高の高い代替地に集落ごと移るというこの計画は、山を切り崩し、沢を埋め立てる大規模な人工造成地を整備する工事を必要とするため、当初完成が見込まれた1990年代には着手されず、2000年代になってからようやく姿を見せ、2005年に代替地の分譲基準が調印されました。
しかし、高額な分譲地価、工事の遅れ、災害のリスクなどが嫌気され、代替地に移転する筈だった多くの住民が代替地計画に見切りをつけて地域の外に転出していきました。
代替地に移転を希望した世帯は、分譲基準調印後の意向調査では当初の三分の一の134世帯に減少していました。その後、住民の転出はさらに加速したため、あしたの会では議員を通して移転希望世帯も減少した筈と国や群馬県に質問してきましたが、国交省現地事務所は移転希望世帯は134世帯という数字を変えずにこれまできました。
以下の記事を読むと、「分譲の取り下げが相次いでいる」とあり、これまでの国交省の見解は事実ではなかったことになります。このように国交省は代替地についての正確な情報を公表してきませんでしたが、代替地計画が破綻していることは明らかです。今後、さらに計画の迷走が予想されます。
◆2013年5月17日 毎日新聞群馬版
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20130517ddlk10010238000c.html
-八ッ場ダム建設:生活再建の道、不透明 関連工事入札きょう公告 代替地整備遅れ /群馬ー
八ッ場ダム(長野原町)の本体関連工事に向け、国土交通省が17日に関連工事の入札を公告することで、4年ぶりに工事が再開される見通しになった。しかし、予定の15年度のダム完成は困難と見られ、住民が移転する代替地整備も遅れがち。建設再開が決まっても地元の生活再建へのスケジュールは不透明なままだ。【奥山はるな、塩田彩】
国交省八ッ場ダム工事事務所は16日、ダム水没予定地の住民が移転する代替地の分譲基準の見直し案を示した。今後、各地区での議論を経て決定。いまだに分譲を受けられない住民を対象に、意向を再確認し、別の代替地への変更を受け付ける。
一方で住民の流出が進み、分譲希望の取り下げも相次いでいるため、現在の上限を超えた追加の分譲も検討する。
見直し案は同日、水没予定地の住民代表でつくる「五地区連合対策委員会」に説明。各地区で意見を取りまとめ、同委の審議を経て、住民の意向の再確認に入る。
ダム工事事務所によると、1979年時点で、長野原町の水没予定地などには422世帯があった。しかし、代替地を購入するだけの補償が得られずに町外に転出した住民も多く、2007年に住民の希望を調査したところ、分譲希望は約3割にあたる134世帯しかなかった。その後も、希望の取り下げが相次いだ。
同事務所は07年6月、希望する世帯を対象に分譲を始めたが、代替地の整備は遅れ、昨年12月末現在で予定面積の約4割(34・2ヘクタールのうち14・2ヘクタール)しか完成していない。移転できた世帯も、約半数の70世帯だ。
計画ではダムの完成予定である15年度に合わせ、住宅や温泉街、観光施設などの代替地移転を目指している。
◇ダム湖畔に桜1万本植えよう 住民、計画策定決める
また、五地区連合対策委員会はこの日、ダム湖畔などに桜を植える「やんば1万本桜計画」の策定を決めた。代替地には生活再建の一環として、温泉街や観光施設の整備を進める計画だが、樹木が少なく殺風景なため、桜を植えて「また訪れたくなるような、おもてなしの水と桜の郷」を目指す。計画は住民が発案。今後、町と観光協会、県、国がプロジェクト会議を発足させ、試験的な植樹を経て、正式に計画を策定する。
地元の学校や企業との連携も視野に入れ、私有地への桜の植樹や苗木の配布、桜の専門的な知識を持つボランティアガイドの育成なども検討する。