八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

「嶋津暉之さん、田尻賞受賞」

2005年7月10日

 ”公害Gメン”として公害・環境分野で活躍した故田尻宗昭さんを記念して設立された田尻賞の授賞式が東京、四谷で開催され、八ッ場ダム問題の理論的支柱、嶋津暉之さんが、第14回受賞者として表彰されました。

 嶋津さんと八ッ場ダム問題との出会いは、1960年代後半。水没予定地住民の苦悩を目の当たりにし、山村を犠牲にするダム計画に疑問を抱いたことがきっかけでした。その後、東京都に就職し、工業用水の節水技術を指導。1973年から81年にかけて、当初の2/3の工業用水のカットに成功します。それでも止まらないダム計画の現実から、行政の水需要予測が、ダム計画のために作られる欺瞞に満ちたものであることに気づきます。研究業績を提供することで市民運動を支援する嶋津さんの半生が、ここからスタートしました。

 授賞式では、かつて東京大学で嶋津さんの恩師であった宇井純氏が、「どれだけ水源開発をしても、あればあるだけ使ってしまう都市用水の実態を証明した嶋津さんのマスター論文を見て、二人で頭を抱えたのが昨日のことのよう」と思い出話を披露。「水俣病発生から50年。原爆の被害者救済からはじまり、戦後この国は、被害者の救済問題を解決できずに今に至っている。その中で、嶋津さんの研究は、マスター論文であっても、社会の方向を変える可能性があることを示している事例として、大いに私達を勇気づける」と語りました。