2005年8月28日 朝日新聞群馬版より転載
■八ッ場ダム計画 野党3党「建設中止を」 市民団体が公開質問状 公明「必要だ」
国交省が長野原町に建設を計画する八ッ場ダムについて、「八ッ場ダムを考える会」「首都圏のダム問題を考える市民と議員の会」が、総選挙を前に、主な政党に公開質問状を送ったところ、野党3党から「建設を中止し、地元の生活再建に力を入れるべきだ」との回答があった。一方、自民党は「担当者不在につき、期限までに回答できない」。考える会顧問の嶋津暉之さんは「地元の生活再建について具体的に考えている点に注目したい」と話した。
○自民「期限内回答は無理」
質問状は、2団体が23日、発足直後の国民新党、新党日本を除く主な5党に出した。26日の締め切りまでに、民主、公明、共産、社民から回答があった。
ダム計画の必要性は、民主、共産、社民が「ない」、自民と連立与党を組む公明が「治水面で必要性はあり、事業は住民や専門家の声を聞きながら進めるべき」と回答した。
理由は、民主が「利根川、荒川流域は水に余裕がある。治水面ではダムに頼らない代替案が必要」、共産が「国交省は大型台風による洪水の治水効果がないことを、国会議員の質問で認めた。50年前の計画に固執しないことが必要」、社民は「国が治水対策で想定する洪水流量は誇大値で、首都圏全体の水需要も横ばい」としている。
中止した場合、3党とも必要と考えるのは地域住民の生活再建だ。「透明な手続きで再建策を支援する」(民主)、「住民への個人補償制度を法制化すべきだ」(共産)、「ダム起業者や利水・治水の受益予定者が基金を設立し、地元の生活基盤整備事業費を負担する」(社民)などをあげる。
とはいえ、水没予定地の同町川原湯など5地区は7月、約1年8ヶ月の交渉期間を経て、移転代替地の分譲価格などの分譲基準の受け入れに最終合意したばかり。来月7日に調印式を控える。予定だと、ダムは07年度に本体工事着工、10年に完成見込みだ。
八ッ場ダムの現地を抱える群馬5区の立候補予定者に聞いたところ、自民前職の小渕優子氏(31)は「補償は第一に考えていく。(事業は)ここまでの実績を踏まえ地域の皆さんと相談していきたい」。民主新顔の田島国彦氏(36)は、「凍結または中止。後は地元の意向を聞いて生活再建、観光対策などをちゃんとするべきだ」。共産新顔の福田あい子氏(52)は、「水も足り、予定地は地滑りの恐れもあるから中止。苦しんだ地域住民には個人補償制度を整備すべきだ」と答えた。