群馬県の県庁所在地、前橋は、昔の利根川氾濫原に発達した、良質の地下水に恵まれた街です。八ッ場ダムの水を割り当てられる県央第二水道によって、この地下水も切り捨てられつつあります。しかし市内の企業は、「地下水ビジネス」によって、この地下水を活用することも可能です。
ダム計画は水需要増大を前提としていますが、前橋では水需要が下がり気味。水道局は企業に水道水を利用してもらおうと躍起です。ダム計画と地下水ビジネスが、一般家庭の水道水に負担を強いるー全国で起きている水行政の歪みが、水源県でも起こりつつあります。
2005年11月12日 朝日新聞群馬版より転載
「前橋の地下水 大口料金値下げへ 地下水ビジネスに対抗」
前橋市水道局は11日、水道水の代わりに地下水をくみ上げて利用する「地下水ビジネス」に対抗するため、病院やホテルといった大口の利用者に対する水道料金を細分化し、値下げする方針を明らかにした。週明けの審議会に諮問するなどして、来年5月使用分からの移行を目指している。
水道局によると、これまで1カ月の水道水使用料は、基本料金に加え、8立方メートルを超える場合は使用量に応じて課される従量料金を支払う。従量料金はそれぞれ、8~30立方メートル(1立方メートル当たり111円)、30~50立方メートル(同144円)、50~300立方メートル(同179円)、300立方メートル以上(同198円)の4段階に分かれていた。
このうち300立方メートル以上に該当する大口利用者に対して、3千~6千立方メートル(同175円)、6千~1万立方メートル(同165円)、1万立方メートル以上(同155円)の3段階を新たに設ける。
地下水ビジネスは主に西日本で成長しているといい、大口の利用者には水道水よりも割安になるとされる。今のところ市内に地下水ビジネスが進出したケースはないが、水道局総務課は「大口の利用者を失えば、水道料金(収入)が減り、一般市民への負担増につながる」と警戒感を強める。
県内で地下水ビジネスに対抗するため料金を値下げした自治体は例がないという。