2005年12月9日 讀賣新聞より転載
「『設計に誤り、違法』ダム計画取り消し…大阪高裁ー滋賀・永源寺第2」
農林水産省が計画している滋賀県東近江市の永源寺第2ダムを巡り、地元住民らの「不要なダムで事業計画にも欠陥がある」とする異議申し立てを国が退けたのは不当とし、住民らが国を相手にこの決定の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が8日、大阪高裁であった。
若林諒(まこと)裁判長は「事業計画にはダムの規模を誤って設計した重大な瑕疵(かし)があり違法」として1審・大津地裁判決を取り消し、住民側に逆転勝訴を言い渡すとともに、ダム建設を巡る訴訟で初めて、実質的に計画自体を取り消す判断を示した。
農水省が新たな事業計画を策定しても、建設の前提となる地元農家の3分の2以上の同意を得るのは困難な状況で、判決が確定すれば建設中止に追い込まれる可能性が高い。
ダムの事業計画策定について若林裁判長は、農水省自らが定めた土地改良事業時の設計基準に基づく実地測量や地質調査などが行われず、不正確な公共測量図が使われていたことを重視。その結果、ダムの規模を当初より10%以上拡大するなど変更を余儀なくされ、建設費も倍増が試算されるようになったと指摘。「国に裁量権はあるにしても、ダムの規模を誤って設計した瑕疵で、事業の経済性など基本的な審査要件が無意味になってしまいかねず、計画自体の取り消しは免れない」と結論付けた。
地元住民らは「減反などで水需要は増えず、事業費に見合う効果も得られない」として1994年10月に提訴。02年10月の1審敗訴後、40人が控訴していた。
ダム建設をめぐる訴訟で異議申し立てを退けた決定が取り消されたのは、農水省の「川辺川ダム」(熊本県)事業計画変更訴訟で、福岡高裁が03年5月、原告側の請求を認めた判決(確定)に次いで2例目。
進藤真理(なおみち)・近畿農政局長の話「国の主張が認められず、誠に遺憾。判決内容を検討し、関係省庁と相談して対応したい」