2007年6月15日 毎日新聞群馬版より転載
八ッ場ダム建設で水没する川原湯温泉(長野原町)の旅館経営者らで作る同温泉組合(豊田明美組合長)が14日、県庁を訪れ、小寺弘之知事に生活再建の前提となる代替地の整備やダムの早期建設を陳情した。同温泉地区は今秋に代替地の第1期分譲が予定されているが、国の工事の遅れが目立つため、旅館主らは現地での生活再建へ不安を募らせている。
豊田組合長ら9人が、小寺知事らに代替地の現状を伝えた。豊田組合長らはダム建設が遅れたことで人口の減少や旅館の老朽化が進んだと説明。さらに、秋に分譲が予定されている代替地に上下水道や電気、ガスが通っていない上、道路の整備が不十分な点を挙げ「代替地に再建の夢を抱いたはずの住民も疲れてきている」と、早期整備を求めた。
これに対し、小寺知事は「手続き上のことはスムーズにできるよう努力する。国にも積極的に働き掛けたい」と応じたという。
代替地に移るのは川原湯のほか▽川原畑▽長野原▽林▽横壁の計5地区。今年度は計33世帯に土地を分譲する見込みで、うち区画整備が比較的進んでいる長野原と川原畑地区では今月末にも分譲が始まる。ただ、上下水道管が走る国道145号の付け替え工事は依然として4割程度しか進んでおらず、水道は当面、仮設タンクを使う予定だ。
国土交通省八ッ場ダム工事事務所の藤田浩副所長は「移転住民との区画交渉が難航し、工事日程も遅れてしまった。09年までに全住民の分譲地への移転ができるよう努力したい」と話している。【伊澤拓也、鈴木敦子】