さる12月21日、国交省関東地方整備局は事業評価監視委員会を開催しました。国交省の案を了承した委員会の名簿はこちらです。↓
http://www.ktr.mlit.go.jp/kyoku/office2/jigyohyoka/pdf/members.pdf
2007年12月23日 東京新聞より転載
「計画発表から42年 八ッ場ダム工期五年延長 本体着工目途立たず 総工費4600億円据え置き本当?」
福田康夫首相のおひざ元である群馬県で計画され、「必要のない公共事業の東の横綱」ともいわれる八ッ場ダムの工期を五年延長する案が、二十一日に東京都内で開かれた国土交通省関東地方整備局の事業評価監視委員会で承認された。だが疑問が残る。工期延長で四千六百億円の総工費が今後、膨れあがることはないのか。そもそもダム本体の着工にたどり着くことができるのか。(坂本充孝)
監視委では、八ッ場ダムについて幾つかの細かな質問が発せられたが、工期延長の根本的な理由や今後の見通しを問いただす声はなく、いつのまにか承認となった。事前に市民団体から事業そのものの問題点を指摘する意見書が提出されていたが、言及する委員はいなかった。
五年も工期が延びたのにもかかわらず、総事業費の見通しは四千六百億円のままに据え置かれた。
国交省側の説明では、「環境対策」「住民の生活再建対策」などで当初計画より百九十二億円のコスト増が発生したが、この分は新技術導入などによりコスト縮減二百十億円で吸収するという。
記者会見では「工事コストは主に地盤の良しあしで決まり、最初から余裕をみている」との説明もあった。しかし工期延長は二度目。二〇〇一年にも工期を延長し、二年後に、物価上昇や消費税を理由に二千百億円を四千六百億円へ事業費倍増を発表した。
このために現時点で周辺整備なども含めた実質的な事業費は約六千億円になり、起債の利息も入れると八千八百億円に達するという試算もある。
国交省側は「今後、突発的な状況の変化がない限り、総事業費の見直しはない」というが、鵜呑みにしていいのか。
また、たった五年の延長で工事が終了するのかと危惧する声も多い。
今月十日、「公共事業チェック議員の会」(事務局長・保坂展人衆院議員)の視察団が群馬県長野原町の現場を訪問した。この時点でダム本体の工事は着工の目途すら立っていなかった。
周辺のJR吾妻線や国道145号の付け替え工事も難航している。
新川原湯温泉予定地地主(五六)は「土地を売るつもりはない。国交省は信用しない」と断言した。十八日には国道のトンネル工事現場内で崩落事故があり、作業員一人が命を失った。
代替地と国道を結ぶ橋は「現在設計中」という説明で、移転予定の住民の一人(四七)は「移っても生活ができるのか」と不安を漏らした。
半世紀にわたってダムに翻弄された地域の再生を考える「八ッ場あしたの会」の渡辺洋子事務局長は「いたずらに結論を引き延ばすのはやめてほしい」と話す。
「地域の人たちが望んでいるのは生活再建であり、ダム本体ではない。これまでは、ほかに選択肢がないと思いこまされていただけ。利用価値を失ったダムを無理に造るのはやめにして、地域復興の道筋を作るのが国の責任です」