水没五地区の子供たちが通学する長野原第一小学校の統廃合問題が、年末からマスコミでたびたび報道されている。
第一小は長野原町の林集落にあり、2002年、国道沿いの木造旧校舎から山奥の現在地に移転した。2001年の補償基準調印後、地域人口が減少する中、第一小の児童数も急減。立派な校舎と少ない児童数が注目され、テレビ番組『朝ズバッ』で”ムダな公共事業”と批判を浴びたこともある。
現在の児童数は31名だが、今後2年の間に5,6年生10名が卒業、新入生は2名の予定。子供が走り回る校庭なら草が生えることもないが、長野原第一小では先生方が草退治に頭を悩ませるという。
2007年末、国交省より工期延期の見通しが発表されたことで、ダム完成後の固定資産税を見込んできた町財政は、今後ますます厳しい運営を迫られることになる。長野原町の一般会計決算書(平成18年度)によっても、教育費が歳出に占める割合は約1/4と最も多く、第一小の統廃合は避けて通れない課題と見られている。
地域整備の財源を八ッ場ダムの受益者とされる下流都県から賄っている長野原町では、ムダな公共事業という世論の批判を懸念する。
長野原町ダム課では、「廃校が決まったかのように報道されているが、まだ統合を検討している段階。新聞各社に抗議した。今朝の讀賣新聞には、耐用年数に達していない学校を廃校にする場合、国から受けた補助金を返還する必要があるとの指摘がある。第一小の場合も、これに当たる。統廃合は、まずは児童数減少により教育の場としてふさわしいか、という不安がもとにある」と説明する。
2008年1月11日 讀賣新聞より転載
「公立小中校、5年後1100校減 30校に1校 少子化・財政難で 本紙調査 」
全国の公立小中学校がおおむね3~5年後に、少なくとも1117校減る見通しであることが、読売新聞社の全国調査でわかった。
少子化の影響で、一つのクラスに複数の学年が学ぶ「複式学級」を抱える学校が増えていることや、自治体の合併による財政効率化で統廃合を迫られていることなどが背景にある。統廃合が進めば、地域住民が不便を強いられることは必至で、スクールバスの導入や校舎の建て替え費用など、政府も新たな財政負担を求められるとみられる。
調査は昨年11~12月に実施。47都道府県と全市区町村の教育委員会に、小中高校などの統廃合や新設を伴う再編計画、学校数の増減を尋ねた。その結果、2万2420校ある小学校は2008年度には211校減少し、中学校も1万150校から50校減ることがわかった。
今後の小中学校の再編については、全市区町村1820の中の436自治体(23・9%)が再編を実施または検討中と回答。このうち239自治体が計画や構想に基づく将来の学校数を挙げ、07年度と比較すると、小学校が848校、中学校が269校それぞれ減ることが判明した。計画がそのまま進むと、30校に1校が姿を消すことになる。
減少数を都道府県別でみると、北海道が最も多い109校で、広島県が90校、山形県が71校。
市町村別では、新潟県佐渡市が現在の小中50校を27校に減らす計画だ。これ以外にも、青森市が昨年、小中74校を45校に減らす構想を示しながら、住民の反発で事実上撤回したケースもある。通学距離の問題や一層の過疎化への懸念から住民の反発は強く、調査でも22自治体が計画の凍結や見直しを迫られ、必ずしも計画通りに進んでいるわけではない。
ただ、文部科学省の調査では、複式学級を抱える学校が3000校を超えているうえ、公立小中学校の校舎や体育館のほぼ3分の1は、現行の耐震基準を満たしていない。統廃合が今後、さらに加速する可能性は高い
国の補助金返せず 実質「廃校」を「休校」 公立小中の悲鳴 自治体 統廃合財源ない
あと数年で、全国の公立小中学校が、1100校以上も消える見通しとなることが判明した讀賣新聞社の全国調査では、廃校状態なのに、校舎建設時に国から受けた補助金が返せないといった理由で、「休校」となった学校が続出していることも判明した。「学校を統廃合しようにも財源がない」-。全国各地の自治体からは、苦しい台所事情に悲鳴があがっている。
徳島県西部にある人口1万人強のつsるぎ町は、小学校19校のうち14校が、児童がいないため「休校中」だ。最も長い学校では10年以上も休校が続いている。
2003年から休校している端山小学校は、用務員だった67歳の女性が町から月1万円で、草むしりや花の手入れをしている。3階建ての校舎に物置代わりで、05年に2町1村が合併する前の資料が積み上げられていた。
1997年休校の平野小学校は、町の高齢者デイサービス施設として、カラオケセットやダンス用の大鏡も備えられている。06年休校の皆瀬小では、お年寄りたちがカーリングに似たスポーツを楽しんでいた。
どの小学校も廃校にしないのは、校舎の耐用年数に達していない学校を廃校にすると、建設時に受け取った国の補助金を、残った年数に応じて返還しなければならないため。徳島県教委によると、県内の公立小271校中46校が休校中だ。つるぎ町教委の切上悦男教育長は「補助金返還の免除や、取り壊し費用の補助がなければ手に負えない」と国に対策を求めた。
広島県庄原市も今年度末で小学校9校を休校にする。42小学校のうち13校がすでに休校中で、実質的に小学校が半減する。同市教委は「財政的な問題が解決すれば順次廃校の手続きを取る」としている。
12年度までに村立小中学校を7校から3校に減らす計画を立てた群馬県嬬恋村では現在、計画を凍結中。小学校5校のうち4校が国が求める耐震基準を満たしていない可能性が高く、校舎を新設するのに少なくとも約10億円が必要だが、国から見込まれる補助額は2億円程度という。
村教委では「統廃合は将来の財政効率化にもつながるのに肝心の財源がない。国の支援はぜひ必要で、同じ思いをしている自治体は、全国に数多くはるはずだ、と訴えている。