2008年2月2日 毎日新聞群馬版より転載
「川原湯温泉:取り戻せ、にぎわい ◇八ッ場ダムで客減 国、県支援で地元住民運営」
長野原町のJR川原湯温泉駅前に3日、飲食のできる休憩所を兼ねた温泉街の案内所が仮オープンする。国や県、町の支援を受け、同温泉観光協会(樋田洋二会長)が管理にあたる。八ッ場ダム建設の影響で観光客の減少が続いており、同協会は「活気を取り戻すきっかけにしたい」と期待を寄せる。
案内所の名前は「梣(とねりこ)」。運営するのは同地で飲食店「旬」を営む水出耕一さん(53)、良江さん(49)夫妻。旅館のパンフレットなどを置き、客から要望があれば案内もする。コーヒーや軽食を用意し、散策で疲れた客が足を休ませることもできる。また名物の温泉たまごや地場産乳製品も販売。春には野菜の直売も検討している。
川原湯は年間20万人以上の観光客が訪れた1960年代をピークに、現在は10万人前後に減少。さらにダム建設に翻弄(ほんろう)される生活に疲れた経営者が町外へ転出し、旅館も20軒から10軒へ半減した。
水没予定地区のため、ダム完成後は代替地で温泉街は再建されるが、同協会は当面の活性化策として案内所を要望し、国からの借地に県の予算で建てられた。
同駅は温泉街と吾妻渓谷の最寄り駅として、紅葉などのシーズンに大勢の行楽客であふれる。だが、飲食店や土産店がなく、観光客から「休む場所がない」と苦情が寄せられることもあった。案内所はこうした要望に応えたものでもある。
水没までの時限的な施設だが、水出さんは「このまま衰退させるわけにはいかない。何とかにぎわいを取り戻したい」と願っている。
写真=仮オープンの準備に追われる水出さん。「地元住民と観光客がここで触れ合えれば」と話す。 【伊澤拓也】