八ッ場ダム事業は、本体工事費が全体のダム事業費のわずか9%といういびつな計画によって進められようとしています。本体工事費以外の工事ー付帯事業は税金のブラックホールと化していますが、この付帯事業の一番の目玉が、高規格四車線付け替え国道の建設です。
しかし、この国道建設、用地買収は四車線で進められていますが、建設されているトンネルも橋も二車線しかありません。地元では、「ヘビがカエルを呑み込んだような変な道路」と言われていまが、衰退するダム予定地周辺の農家は高齢化し、利益を生まなくなった農地が道路用地として買収されることに反発する住民は多くありません。こんなことが全国で起こっているという記事を転載します。
2008年4月30日 朝日新聞より転載
高速道路などの「高規格道路」で、4車線分の建設用地を確保しながら2車線分しか造られていない区間が2140キロあることが分かった。全区間の4分の1を占め、ほとんどが想定した通行量に届かずに4車線化のめどがたたない。道路の交通需要予測の甘さが、無駄を生んでいる。
08年3月までに完成した高規格道路は計9332キロ。国土交通省などによると、2140キロのうち、高速道路は1490キロ。残り650キロは自動車専用道路で、完成後に高速道路に格上げされる「抜け道高速」500キロも含んでいる。
高速道路分は、国交相の諮問機関・国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)が4車線での整備を決定し、旧日本道路公団が4車線分の土地を買収。自動車専用道路は国交省が4車線整備を決定し、建設用地を買ってきた。
道路整備の基準を定めた政令「道路構造令」で示された1日1万台の通行量を、いずれも将来は確保できるとして、4車線化が決まった。
国などは早期完成を目指し、まず2車線を整備した。だが、その後、見込んだ通行量を確保できる見通しが立たず、4車線化は棚上げされた。秋田県の東北横断自動車道秋田南―秋田北(16キロ)や京都府の近畿自動車道舞鶴西―舞鶴東(11キロ)、福岡県の椎田道路(16キロ)など890キロ分は10年以上前に2車線分ができたが、4車線化は実現していない。
旧道路公団民営化後の06年、国と高速道路会社の今後45年間の道路建設計画が決まったが、高速道路1490キロの4車線化は盛り込まれず、凍結が確定した。高速道路会社の自己負担で4車線化することもできるが、高速道路会社幹部は「採算性が見込めないと無理だ」と慎重だ。
国交省は「全国のネットワークが完成すれば、需要は高まり、4車線化に一定のめどがつく」と説明する。ただ、4車線を前提とした道路整備は用地買収などの費用がかさむため、批判が出ている。02年に橋本大二郎高知県知事(当時)が国交省に「4車線にとらわれず、地域の実情にあった規格で早期に完成させるべきだ」と要望。同省は中村宿毛道路を一部2車線で整備している。
政府は昨年末に決めた道路整備中期計画(08~17年度)で、整備計画が決まっていなかった高規格道路2900キロを整備する方針を決めたが、うち422キロは2車線で造る。4車線化に必要な通行量が当面見込めないためだ。
東京湾アクアラインなどでも実際の交通量が予測を大幅に下回るなど、交通需要予測はこれまでも問題視されてきた。福田首相は今秋に出る交通需要予測を元に道路整備中期計画を作り直す考えを表明しているが、予測内容が適正かどうかが問われそうだ。