”東の八ッ場、西の川辺川”ーわが国東西の二大巨大ダム事業で知られる川辺川ダム計画のある熊本県では、川辺川と同じ球磨川水系の荒瀬ダム撤去をめぐって、市民運動と行政の対立が日ごとに激しくなっています。
1955年に完成した県営荒瀬ダムは、ダムによる振動,悪臭,洪水の被害増大や環境破壊などの問題があり,流域住民から撤去の要望がなされ、これを受けた熊本県の潮谷義子前知事が2010年からの撤去を表明しました。ダム撤去決定に当たって熊本県は、費用対効果について十分検討し、その後はダム撤去の方法をめぐり丁寧な議論が進められました。
欧米ではダム建設の時代が終わり、ダム撤去が重要な課題として実施されていますが、荒瀬ダム撤去はわが国最初の大型ダム撤去として注目されてきました。
ところが、2008年6月4日、潮谷氏に代わって熊本県知事に就任した蒲島郁夫知事は、流域住民への説明もないまま、一転してダム撤去を凍結する方針を明らかにしました。熊本県の市民団体は翌日から次々と抗議声明を発表。全国の水問題にかかわる市民団体に協力を求めました。
熊本県の市民団体による抗議文↓
http://kawabegawa.jp/moushiire/20080605_kenmin.html
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八ッ場あしたの会より、熊本県知事への要請書
2008年6月9日
熊本県知事 蒲島郁夫殿
八ッ場あしたの会
代表世話人 野田知佑、大熊孝、加藤登紀子ほか
「荒瀬ダムの撤去凍結」の撤回を要請します。
このたび、蒲島知事が荒瀬ダムの撤去凍結を発表されたと聞きました。熊本県が荒瀬ダムの撤去を決めたとのニュースに接したとき、私たちは全国に先駆けた英断として、大いに期待しました。わが国には現在、3000近くのダムがありますが、ダムの歴史はまだ百年足らず、殆どのダムが戦後建設されたものです。コンクリートのダムには寿命があり、今後のわが国にとって重い負の遺産となることを強く危惧するものです。
球磨川は豊かな水産資源を生み出すばかりでなく、全国に名高い清流として、熊本県民のみならず、日本人にとってかけがえのない大切な川です。首都圏からも多くの観光客が球磨川を訪れており、球磨川の自然環境が改善され、流域の住民によって今後、球磨川の自然環境がさらに保全されてゆくことを願っています。
熊本県民が知事に提出した「抗議文」の意をお汲み取りいただき、流域住民の民意を踏みにじることなく、「荒瀬ダムの撤去凍結」の撤回を決断されることを強く希望します。