Yahoo! ニュースより転載
2009年3月16日19時1分配信 毎日新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090316-00000066-mai-soci
八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)の本体着工(09年度)を目前に、水没予定地にある川原湯温泉の人気が再燃しつつある。「景色を見られるのは今だけ」と、県が水没を逆手にとったPRを展開、団体宿泊客への助成などが奏功した格好だが、ダムを巡っては、民主党が建設中止を掲げるなど反対の動きも活発化。論争の高まりが宣伝効果につながる皮肉な現象となっている。
温泉は、源頼朝が狩りの帰りに発見したのが始まりと伝えられ、明治期の歌人、若山牧水が愛した秘湯。だが、ダム建設の影響で旅館主らの転出が急増、最も活気があった80年代に22軒あった旅館は、7軒に。宿泊客も98年の約10万人から07年は約3万人に減った。
県は昨年10月から、10人以上の宿泊客に1人当たり3000円の補助を開始。ダム予定地などの工事現場ツアーも付くのが特徴。リピーターを増やすため、宿泊客に次回助成券(3000円)を渡している。これまでに団体助成は予約を含め326人、次回助成は222人が利用した。助成は温泉の移転まで続けられる見込みだ。
川原湯温泉旅館組合の豊田明美組合長は「右肩下がりだったが、このところは手応えを感じる。助成利用者は確実に増えている。水没前に『一度来てみよう』という人が多いのでは」と話す。
一方、県特定ダム対策課は「ダムの必要性を理解してもらい、移転前の温泉街を活気付けたい」と話し、助成には建設の正当性を強調する狙いもある。
ただ、工事現場ツアーの利用者からは「伝統的な温泉街がなくなるのは寂しい」という声も。人気再燃で、行政の思惑とは裏腹に、ダムの必要性に立ち返った議論が広がる可能性もありそうだ。【伊澤拓也】