2009年8月9日
八ッ場ダムに関する政党アンケート結果のお知らせ
2009年総選挙を控え、八ッ場あしたの会では7月23日付で自由民主党、民主党、公明党、日本共産党、社民党、国民新党、新党日本に公開アンケートを送りました。〆切の8月6日までに送られてきた回答を公表します。なお、回答のなかった公明党に確認したところ、「今回は回答を見合わせる」とのことでした。
質問1、2では、八ッ場ダム計画を進めるべきか否かについて尋ね、それぞれの判断の根拠を問いました。国民新党以外の野党は、八ッ場ダム建設中止の政策を明らかにしており、総選挙の結果、与野党が逆転すれば、9月に予定されている八ッ場ダム本体工事の契約は中止されることになります。野党は八ッ場ダムの必要性に疑問を呈するだけでなく、八ッ場ダム計画によりダム予定地の人間社会と自然環境が甚大な被害を蒙ってきたとの認識を示しています。
八ッ場ダム本体工事を中止する場合には、水没予定地とされてきた地域に対してどのような政策に取り組むかが注目されます。質問3に対して、八ッ場ダム中止を掲げる各野党は、生活再建、地域振興、自然再生の事業に取り組むとしています。また、より具体的な政策について質問4で尋ねたところ、各野党が「地元住民の意見を聞き、生活再建を優先する」、「関連事業の見直しを行い、必要なものは継続する」、「情報公開を徹底する」と答えています。これらの回答は、地元住民に犠牲を強いてきたダム政策を否定するだけでなく、水没予定地域の再生事業に取り組み、住民が地域の主体となることを目指すとの各党の政策方針を明らかにしたものといえます。
質問5の回答では、こうした政策を実現するために、ダム中止後の生活再建・地域振興を可能とする法整備が必要と各党が回答しています。民主党は「ダム水没地周辺地域の住民等の生活再建支援と地域振興を特別措置法」を国会に提出する準備を進めていますが、日本共産党、社民党、新党日本は、「他党と連携して法整備を進める」としており、法整備について四党の考えが一致していることを示していると考えられます。
ダム本体工事が中止された場合には、半世紀以上の長い歳月、犠牲や苦難を強いられてきた水没予定地と周辺地域に対して、政策転換による被害を最小限に留めるとともに、地域の人々が希望をもてるよう、速やかに政策が実施されることを希望します。
八ッ場ダムに関するアンケート
1952年に最初の構想が発表された国の八ッ場ダム事業は、半世紀余りを経て数多くの問題が明らかとなり、事業継続の可否が大きな争点となっています。以下の質問にお答えください。
1. 八ッ場ダム事業についてのお考えをお聞かせ下さい。(複数回答可)
○治水・利水上必要な施設である
自由民主党
○必要性に疑問がある
民主党、日本共産党、社民党、新党日本
○ 地元住民に犠牲を強いてきた
民主党、日本共産党、社民党、新党日本
○ ダム予定地域を破壊してきた
民主党、日本共産党、新党日本
○ 災害の危険性がある
日本共産党、社民党
○看過できない環境破壊である
民主党、日本共産党、社民党、新党日本
○ その他
自由民主党― 地元住民の方々に苦渋の決断をして頂いた経緯が存在。
共産党― 国及び関係する都県に、巨額のむだな財政負担を強いている。
国民新党― 現時点において出来るだけ客観的な調査によって事業継続か中止を決める。
2. 国土交通省は総選挙直後に八ッ場ダムの本体工事に着工するとしています。このことについて、ご意見をお聞かせ下さい。
○予定通り、本体工事に着工すべき
自由民主党
○八ッ場ダム建設を中止すべき
民主党、日本共産党、社民党、新党日本
○その他
国民新党―現時点において出来るだけ客観的な調査によって事業継続か中止を決める。
3. 2で「八ッ場ダム建設を中止すべき」と回答した政党にお尋ねします。ダム建設中止に当たって配慮すべきことはなんでしょうか? (複数回答可)
○水没予定地住民の生活再建
民主党、日本共産党、社民党、新党日本
○ダム予定地周辺の地域振興
民主党、日本共産党、社民党、新党日本
○地元住民の心情
民主党、日本共産党、社民党、新党日本
○ 着工済みの関連事業の継続
民主党
○ 自然環境の再生
民主党、日本共産党、社民党、新党日本
4. 2で「八ッ場ダム建設を中止すべき」とお答えになった政党に、どのような手順でダム建設中止の道筋をつけるお考えかお尋ねします。(複数回答可)
○ 八ッ場ダム事業は関連事業も含め、政治決断ですべて中止する
なし
○ 八ッ場ダムの本体工事を凍結する
民主党、日本共産党、社民党、新党日本
○地元住民の意見を聞き、生活再建を優先させる
民主党、日本共産党、社民党、新党日本
○ 第三者による委員会により、ダムの必要性を改めて検証する
日本共産党
○ 八ッ場ダム事業に関する情報公開を徹底する
民主党、日本共産党、社民党、新党日本
○ 関連事業の見直しを行い、必要なものは継続する
民主党、日本共産党、社民党、新党日本
○ 関係都県にダム計画の廃止について意見を求め、合意形成を図る
民主党、日本共産党
5. わが国では、一旦始まったダム事業が中止となることは想定されておらず、長期間に及ぶダム計画により疲弊した地元は、ダム中止後も大きな犠牲を蒙ってきました。この問題を解決するために、ダム事業見直し後の法整備が必要との指摘がなされています。法整備についての貴党のお考え、お取り組みについてお答え下さい。
○ ダムが中止になった場合でも、現在の法律で対応可能
自由民主党
○ 新たな法整備に取り組んでいる
民主党― ダム水没地周辺地域の住民等の生活再建支援と地域振興を特別措置法の制定等で対応していきたい。
○ 他党と連携して法整備を進める
日本共産党、社民党、新党日本
○ その他
自由民主党― なお、時代の変化に応じて対応していく必要性は否定しない。
国民新党― 地域振興のための必要な立法措置はするべきである。
【八ッ場ダム問題についてのご意見 自由記述】
■自由民主党―
○ 八ッ場ダムについては、利根川流域1都5県の住民の生命・財産を守る治水上、1都4県への安定的な水供給を可能とする利水上必要不可欠な施設として、その必要性は東京、群馬、茨城いずれの裁判の判決でも認められている。
○ また、事業に参画する1都5県の知事も全て事業推進の意見であり、八ッ場ダムの地元町長も一日も早いダムの完成を要望している。
○ したがって、八ッ場ダムを一日も早く完成させ、事業効果の早期発現を図るべき。
■日本共産党―
ダム計画に翻弄され、50年以上にわたって、必要な公共事業も満足に実施されず、新たな建物の建設も規制され、経済活動や生活向上も阻まれてきた住民の被害は深刻です。国が長年の犠牲に対する補償を行い、生活再建を支援するのは当然です。
■社民党―
八ッ場ダムは本来の建設目的に照らして検証するかぎり、必要性がないといわざるをえない。社会的な大損失・大損害であり、八ッ場ダム建設は中止すべきである。
当初はダム反対の姿勢であっても、長い年月の経過で疲れ果て、ダム建設にやむを得ず同意したところも少なくない。それらの人々は代替地等への移転を前提として将来の生活設計を行っており、現段階でのダム計画中止はその生活設計を白紙に戻し、地元の人々を絶望の淵に追い込むことになりかねない。そうならないためにも、地域インフラから個人生活に及んだ犠牲に対し、後処理をどうするか、ダム中止後も、ダム予定地の生活再建の推進を可能にする制度をどうするか、議論を活発化させ、早急に政策判断を行わねばならない。
ダムに限らず、大型公共事業の中止後の制度作りこそが必要であり、公共事業に頼らなくても地域が自立できる支援制度として、基金を設けて、産業の復活や環境保護のための補償などに活用すべきである。具体的には、生活再建事業として、生活再建支援措置、住宅及び営業用建物の新改築に対する助成金の要する支出と利子補給、地域社会構築支援措置を行うこととし、その財源は、ダム起業者と利水・治水・発電の受益予定者が地域振興支援基金を設置して必要な事業費を負担することとすべきである。また、移転補償契約または補償金支出がすでに終了していても、移転予定地域の住民が移転前の生活を望む場合はその意思を優先できるようにすべきである。社民党は、「住民参加の公共事業チェック機構の創設」や中止ルールを盛り込んだ「公共事業基本法」を訴えており、「ダム計画中止後の生活再建支援法案」の制定も考えている。社会資本整備の遅れを取り戻すことも特別立法で対応すべきだと考えている。いずれにしても他党と連携を図りながら必要な対策をすすめていきたい。
■新党日本―
「脱ダム宣言」こそ、「脱ムダ」宣言。
既得権益にのった「ムダの大掃除」を行います。