2009年9月1日 朝日新聞一面トップ記事より転載
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http://www.asahi.com/politics/update/0901/TKY200908310440.html
民主党が政権公約で建設中止を掲げた八ツ場(やんば)ダム(群馬県)について、国土交通省は31日、9月に実施予定だった本体工事の施工業者を決める入札を凍結する方針を固めた。同省の谷口博昭事務次官は記者会見で「新大臣の指示に従う」と語り、民主政権に順応する考えを示した。
八ツ場ダムを巡っては、総事業費4600億円のうち3217億円が、ダム本体の建設で水没する住宅地の代替地の確保や、付け替え道路や鉄道の整備などに投じられてきた。本体工事について同省は9月11~18日に、一般競争の電子入札で、落札業者を決める予定だった。
同省は31日、本体工事の一部を含む194億円について、来年度予算の概算要求に盛り込んだ。
一方で、民主党は「時代に合わない大型事業は全面的に見直す」として八ツ場ダムと川辺川ダム(熊本県)の中止を公約に掲げている。また、落札業者と契約締結後に政府側の都合で解約すると、違約金を支払う必要が生じる可能性もある。このため、同省は新政権の発足を前に業者を先行して決めるのは困難と判断した。
しかし、これまでに支出した3217億円のうち1460億円は下流の1都5県が負担しており、中止すれば各都県へ負担金の返還義務が生じる。建設中止には特定多目的ダム法上の基本計画の変更や廃止も必要だ。流域の知事らの意見を聞くことも同法で定められているが、建設反対の知事はいない。地元住民との協議でも難航が予想される。(津阪直樹、歌野清一郎)