八ッ場ダムが中止となった場合、国が関係都県に負担金を返還する必要があるのではないか、という指摘があります。負担金には「治水負担金」と「利水負担金」があり、「利水負担金」については、すでにこちらに説明を掲載していますが、↓
https://yamba-net.org/wp/modules/news/index.php?storytopic=6&start=15
「治水負担金」も含めて、改めて解説を掲載します。
◆知事が返還を要求している治水負担金には地方交付税が含まれている
地方交付税の制度は複雑ですが、普通地方交付税の中に事業費補正というものがあって、国の河川事業の負担金や、国庫補助のある地方河川事業に対して交付税措置がとられています。ダムも対象になっていますので、八ッ場ダムの治水負担金(直轄負担金)にも地方交付税が出されています。
ダムの治水負担金に対する地方交付税措置の割合は45%です。(起債の元利償還金に対して50%で、起債は負担金の90%まで認められるので、90%×50%=45%)
ただし、財政に余裕があることから不交付団体になっている東京都に対しては地方交付税措置がとられていません。
八ッ場ダムについて考えてみますと、平成20年度までに八ッ場ダムの治水負担金として6都県が支出したのは、約525億円(5県413億円、都112億円)ですが、 そのうち地方交付税を除く各都県の負担額を試算すると、およそ340億円になります。都県知事は利水負担金だけでなく、治水負担金525億円も返せという要求をしていますが、その中に交付金が少なからず含まれていて 話が大きくなっています。
6都県が平成20年度までに支出した八ッ場ダムの利水負担金1460億円には厚生労働省と経済産業省からの国庫補助金が含まれ、それを除くと、約890億円です。ですから、治水負担金と利水負担金を合わせた6都県の支出額は表向きは約1985億円ですが、実際にはその中に国庫補助金(利水負担分)と地方交付税(治水負担分)が含まれていますので、それらを除く6都県の実際の負担額は約1230億円と、ぐっと小さくなります。
◆返還に法的根拠なし
ただし、治水負担金は河川法に基づく直轄事業負担金ですから(ダムの場合は3割負担)、返還するような法的な根拠は何もなく、返還を求められるものではありません。今まで道路等などの直轄公共事業が中止されても返還されたことはなく、八ッ場ダムの中止について仮に返還の話が出れば、今までに中止した直轄公共事業の全部に波及することになりますので、国交省が触れることはできないものです。さらに、もし返還すれば、地方交付税の国への返還も必要となるでしょうから、 治水負担金の返還は地方にとってもアンタッチャブルな問題であると思います。
〈参考記事〉
●2009年9月20日 朝日新聞政治面
「八ツ場ダム、自治体負担金を返還へ 前原国交相が表明」
http://www.asahi.com/politics/update/0919/TKY200909190333.html
●2009年9月9日 下野新聞
「八ツ場ダム 中止なら負担金返還を 会見で福田知事」
http://www.shimotsuke.co.jp/journal/politics/election/45syuin/news/20090909/203313