◆2009年11月19日 しんぶん赤旗一面トップ記事より転載
ー八ツ場上流 国交省ヒ素データ隠し 情報取りまとめ業務 天下り法人に集中 受注はすべて随意契約ー
群馬県の八ツ場(やんば)ダム建設予定地の吾妻川とその支流で、環境基準を超えるヒ素を長年にわたり検出しながら、国土交通省が公表していないことが明らかになっています。こうしたダム建設にかかわる情報の調査、取りまとめ業務は、国交省OBの天下り法人が随意契約で受注。隠ぺいの背景にある癒着構造が浮かび上がります。
国交省が長年ふせてきたのは同ダム予定地から約10キロ上流にある貝瀬地点などでの環境基準を超えるヒ素濃度データです。現在の環境基準となった1993年以降、毎年のように基準を上回る数値を検出していました。2006年の貝瀬地点の年平均データは基準の12倍、07年には約5倍でした。人体への影響は、下流の利根川で水道用水として取水するため、問題ないとしています。
今回、このヒ素検出の事実が明るみになったのは新聞報道によってでした。
八ツ場ダム事業をめぐっては、毎年多額の調査業務が行われています。06年度だけでも水質や環境調査にかかわる業務は8件、2億2200万円が使われています。調査業務は随意契約で発注したものが目立ちます。
代表的な受注業者が、国交省所管の財団法人ダム水源地環境整備センターです。01年度から28件、11億4000万円の業務を請け負っています。すべてが随意契約によるものです。「水環境影響検討業務」や「環境影響検討業務」といった、ヒ素検出に関連する情報の取りまとめをほぼ毎年のように請け負っていました。
同財団理事長の同省元河川局長など役員には同省OBや大手ゼネコン大成建設の元会長や準大手ゼネコン五洋建設社長が名を連ねています。04年から5年間に国交省OB7人が天下りをしています。
また本紙が入手した同財団設立時の資料には、鹿島建設や大成建設などのゼネコンや鉄鋼メーカー、建材メーカーが出資者として記されています。
人も金も受注者側のゼネコンなどが出す同財団による、情報取りまとめ業務。国交省と天下り法人とのなれあいで、ほかに情報隠しはなかったのか――。情報のさらなる開示が求められます。
◆衆議院国土交通委員会で活発な活動をしている村井宗明議員(民主党)が17日の委員会で提出した八ッ場ダム関連の資料がご本人のサイトにアップされています。
http://www.murai.tv/yanbasitumon.html
・八ッ場ダム「ヒ素隠ぺい問題」のポイント
・八ッ場ダムヒ素関連記事
・八ッ場ダムヒ素濃度について
・八ッ場ダム水環境影響検討業務
・八ッ場ダム環境検討業務リスト
・ダム水源地環境整備センター役員リスト
・ダム水源地環境整備センター出損会社リスト1
・ダム水源地環境整備センター出損会社リスト2
・八ッ場ダム天下りの全体一覧表
◆2009年11月18日 読売新聞社会面より転載
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20091118-OYT1T00606.htm
八ッ場ダム環境調査、天下り先の落札率平均99%
国土交通省の八ッ場(やんば)ダム工事事務所(群馬県長野原町)が2004年度から5年間に発注した環境影響検査の関連業務は、いずれも国交省OBの天下り先になっている財団法人「ダム水源地環境整備センター」(東京)との随意契約で、落札率が平均99・42%だったことがわかった。
18日の衆院国土交通委員会で村井宗明議員(民主)が資料を提示し、前原国交相は「入札は見直していかないといけない」と答えた。
資料などによると、この業務はダム貯水池の水質予測など14件で、センター側に見積金額を出させ、予定価格を下回った時点で契約していた。約2000万~約6800万円の予定価格に対し、落札率は100~98・66%だった。
同工事事務所は、「迅速かつ的確に業務ができる唯一の業者」などと説明している。村井氏は、同センターには国交省のOB7人が在籍している、とも指摘した。