八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

川辺川ダム水没予定地について生活再建協議の場設置

 一昨日、三日月国交副大臣が川辺川ダム水没予定地の五木村を訪ねました。”東の八ッ場、西の川辺”といわれるように、川辺川ダムは八ッ場ダムと同様、長期化して流域住民から多くの疑問が投げかけられてきたダム計画ですが、すでに代替地が完成し、個別補償交渉もほぼ終わっていることもあり、水没予定地の五木村ではダム中止を受け入れ、再生に向けての取り組みが始まっています。
 国交省は八ッ場ダムより中止の手続きが容易な川辺川ダム水没予定地を対象に、大型公共事業中止のモデルケースにするとしていますが、より困難を伴う八ッ場ダム問題の解決は先送りするのでしょうか? 

●2010年6月21日 熊本日日新聞より転載
http://kumanichi.com/news/local/main/20100621001.shtml
ー国交副大臣、五木村振興策「協議の場」設置確認ー

 国土交通省の三日月大造副大臣が20日、川辺川ダムの水没予定地を抱える五木村を訪問し、村の振興策について蒲島郁夫知事、和田拓也村長らと意見交換。国、県、村で「ダム中止後の生活再建を協議する場」を設置することを確認した。三日月氏は「地元の意向を聞きながら、スピード感を持って取り組みたい」と意欲を示した。

 川辺川ダムをめぐっては、前原誠司国交相が昨年9月に事業中止を明言。蒲島知事も一昨年9月、建設反対を表明している。国、県、村の3者協議がスタートすることで、国主導の村再建策がようやく動きだす。

 取材に対し、三日月氏は「国交省が協議の場の窓口となるが、課題によっては省を超えて知見を持ち寄りたい」と述べた。ただ、今後のスケジュールや、協議の進め方については「白紙」と答えるにとどまった。

 来年の通常国会に提出を予定している村の生活再建に関する特別措置法案にも、「協議内容は大きく影響する」と指摘。ダム中止後を想定した水没予定地の利活用も協議テーマの一つになる、との見解を示した。

 意見交換は村役場会議室で行われ、村議や球磨川流域の首長らも出席。和田村長は「村はダムに翻弄[ほんろう]され、苦渋の決断をした。計画を押し進めた国と県は、村再生に大きな責任がある」と述べた。

 三日月氏は「ダム中止にいたる過程で、心配と生活上の不便をお掛けして申し訳ない」と陳謝した上で、ダムによらない治水の整備と水没地域の生活再建を約束した。蒲島知事も「村の再建には国、県、村の共同体制が必要」と話した。

 意見交換に先立ち、三日月氏は水没予定地の頭地地区などを視察した。(本田清悟)

●2010年6月21日 西日本新聞より転載
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/179482
ー五木村再建へ協議機関 川辺川ダム問題 国、県、村が設置合意ー

 国営川辺川ダム計画の水没予定地がある熊本県五木村について、国と熊本県、五木村の3者は20日、計画中止後の村の再建策を協議する機関を設置することに合意した。国土交通省の三日月大造副大臣が五木村役場を訪ね、蒲島郁夫知事や和田拓也村長らと会談して決めた。
 民主党政権は「五木村の再建を(大型)公共事業中止のモデルケースにする」(前原誠司国交相)と位置付け、協議機関の議論を来年の通常国会に出する補償法案に反映させる考え。具体的には、村が「約400億円分が未実施」と主張する関連道路の整備や橋の建設、国有地になった水没予定地の活用策などを話し合う見通し。
 三日月副大臣は「過疎化の進む村の現状がよく分かった。スピード感を持って取り組みたい」と述べたが、協議機関を設置する時期は明言しなかった。
 和田村長は今回の合意を「一歩前進」としながらも「大事なのは再建策の内容」と強調した。

●2010年6月21日 毎日新聞熊本版より転載
http://mainichi.jp/area/kumamoto/news/20100621ddlk43010247000c.html
ー五木村:生活再建、副国交相と村長ら意見交換 「協議の場」に期待と苦言 /熊本ー

 川辺川ダム計画で村中心部が水没予定地とされた五木村の生活再建を巡り、国土交通省の三日月大造副大臣と蒲島郁夫知事、和田卓也村長らが20日、村役場で意見交換した。3者による協議の場の設置が決まり、新段階に入るが、長く国策に翻ろうされてきた村側からは「地元が満足する内容でなければ、公共事業中止のモデルケースにはならない」などの苦言も出た。【笠井光俊】

 意見交換には村議会や人吉・球磨地域の首長らも出席した。三日月副国交相が「協議の場」について「国交省内の各部局が持つあらゆる知見を使うだけではなく、農業や教育など各省庁もかかわって国全体として取り組む。村の立て直しを一緒に考えていきたい」と述べた。蒲島知事は「3者の共同戦線が必要で、設置はありがたい。県も最大限やっていく」と語った。

 和田村長も「総合的な施策をぜひお願いしたい」と歓迎しつつ、「地元の生活再建を安く仕上げることができて良かった、ということではモデルケースとは言えない。国道の整備など、今すぐにでもできることは多い。それらから、できるだけ早くやってほしい」とクギを差した。

 村議会の照山哲栄・ダム対策特別委員長は「村の現状をしっかり認識してほしい。よほどのことをしないと、この村はもう立ち行かない。しっかりした生活再建策が示されない限り、『川辺川ダム中止』は認めない」と強調した。三日月副国交相は「村にとってまさに『待ったなし』だと感じている。何度でも村を訪れて現状を知り、しっかり検討していく」と答えた。

 意見交換会に先立ち三日月副国交相は、この日の大雨で増水した球磨川のほか、住民が水没予定地から移転した頭地、高野の両代替地や村内の国道未整備部分などを視察した。

●2010年6月21日 人吉新聞より転載
http://www.hitoyoshi-press.com/local/index.php
ー「生活再建協議の場設置へ」 和田村長は「一歩前進」と評価 三日月国土交通副大臣が五木村訪問ー

 国土交通省の三日月大造副大臣が20日、川辺川ダム問題に揺れる五木村を訪れ、村、県と3者による意見交換会の中で生活再建を協議する場の設置を正式に提案し、村と県も合意した。同副大臣が全体総括を担当し、早期設置を目指す方針。
 協議の場設置については、今月2、3日に郡町村長会と人吉市合同で要望活動した際、同副大臣(当時・大臣政務官)が考えを伝えていた。
 同副大臣は、午前9時半に五木村に到着。頭地代替地、神屋敷地区の国道445号未整備カ所、宮園地区を視察したあと、同10時半から同村役場で意見交換会に臨んだ。
 村から和田拓也村長と議会、県から蒲島郁夫知事、オブザーバーとして郡市の市町村長らも出席。
 同副大臣は、ダム計画着手から中止への政策転換の過程を振り返り「長きにわたり五木、相良の皆さんに心配と生活上の不便を掛け、心からお詫び申し上げたい」と陳謝。
 協議の場設置について、「政策転換をさせていただく以上、ダムによらない治水をソフト、ハード両面からしっかり整備することと合わせて、水没地域の生活再建を県と協力し、村の意向を伺いながら進めていくことを約束したい。そのためにダム中止後の生活再建を協議する場を国として設置させていただき、スピード感を持って進めたい。国交省各局、省内にとどまらない林業、農業などの観点からも再建に取り組む体制を、協議の場を窓口につくっていく」と説明した。
 意見交換では、和田村長が「時間をかけると高齢化はますます進む。できることをやっていただきたい」、田山淳士村議会議長が「ここまで来たら取り返しがつかない状況。国、県の手を借りないと立ち上がれない」、照山哲榮村議会ダム対策特別委員会委員長は「あまりにも工期が長過ぎる。これでは蛇の生殺し。今のままでは五木は駄目になる」と村の窮状を訴え、国と県に素早い対応を求めた。
 同副大臣は「協議するため何度でも村に寄らせていただいて皆さんの実態を伺い、生活再建、地域振興にどう結び付けるか考えていきたい」、蒲島知事は「国、県、村の新しい協議の場の検討を踏まえて、モデルケースとなるような振興計画を作らなくてはならないと思っている」などと答えた。
 終了後、同副大臣は「今後についてはまだ白紙だが、スピード感を持って進める」。和田村長は「一歩前進として評価している」と話している。