今朝の上毛新聞、東京新聞群馬版などが、八ッ場ダムの代替地の安全性について、群馬県が国交省の計算結果に基づいて問題ないとしたとのニュースを報じています。
8月末に国交省が群馬県に提出した代替地の安全計算の結果は、ダムに貯水しない場合のみを想定したものでした。群馬県はダム推進を主張しており、国交省はこれまでダム湖を前提に周辺地価よりはるかに高額な価格で代替地を水没予定地住民に分譲してきたのですから、群馬県がダムに貯水した場合や工事中の代替地の安全計算結果を求めるのは当然のことです。
今回公表された安全計算結果は、ダムに貯水しない場合を想定したものですが、この安全計算そのものにも正確さには大いに疑問があります。群馬県はどのような確認作業をしたのでしょうか?
ダムに反対した地元がダムを受け入れたのは、「現地再建」を可能とする代替地を用意すると国と群馬県が約束したからでした。約束を交わした1992年当時、代替地は1990年代に完成するとされていました。ところが、代替地の造成がずるずると遅れ、住民の四分の三が代替地をあきらめて転出していく事態となりました。
地元では、もともと代替地計画には無理があったのに、地元にダムを受け入れさせるために、いい加減な計画を立てて住民を騙してきたのではないかという声がかなり前からあります。国交省は八ッ場ダムの検証作業を10月1日に開始するとしています。ダムに貯水した場合の代替地の安全計算結果を公表せずに、検証作業を始めるという無責任な国交省の手法を政治は放置するのでしょうか?
2010年9月23日 東京新聞群馬版より転載します。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20100923/CK2010092302000077.html
ー八ッ場ダム移転代替地 県『耐震性問題なし』ー
県は二十二日、八ッ場(やんば)ダム(長野原町)の水没対象地区の移転代替地について「造成した土地の耐震性に重大な問題はない」として、補強工事の必要な「造成宅地防災区域」の指定基準に該当しないとの検討結果を発表した。
検討時に基礎とした代替地の耐震性に関する国土交通省の調査データについては、ダム湖への湛水(たんすい)を考慮した内容でなかったため、県は「(ダム完成を前提に)湛水した場合を想定した調査や、工事中の造成地の安全性の調査も実施してほしい」と同省に要請した。今回の県の検討結果も、ダムがない状態を想定した内容だ。
代替地については、国交省八ッ場ダム工事事務所が、造成した土地の強度を測るための「安定計算」を、長野原町の川原畑、川原湯、横壁の三地区内の計四区画で実施。いずれの区画も「地震などによる崩壊の危険はない」との判定を出し、八月末に県に報告。県は、四区画について法律に基づき補強工事などの勧告や命令が可能な「造成宅地防災区域」に該当するかどうかの確認作業を行ってきた。
ダム事業の見直しを求める市民団体「八ッ場あしたの会」などは、独自の調査を基に「代替地が造成されたのは、地滑りの危険性が指摘されている地盤の不安定な地域。中規模の地震に対しても、安全性を担保できるか強い疑問が残る」と主張している。 (中根政人)