2010年10月1日
昨年9月17日、前原国交大臣は就任会見で、「全国143ダム事業の見直し」を表明し、ダム行政をめぐる大きな政策転換を強くアピールしました。この時、中止が明言されたのが八ッ場ダムと川辺川ダムです。
それから1年。政権交代前にダム計画の白紙撤回を熊本県知事が表明した川辺川ダムのみ中止が決定したものの、143ダム事業のうち、すでに本体工事に着工している事業については、見直し対象から外されました。残されている83事業は、今も工事が継続中です。こうした状況は、他の政策テーマと同様、民主党政権の政策実現能力に疑問を抱かせるものです。
そしてようやく本日、八ッ場ダムの検証作業が全国のダム事業に先駆けてスタートしました。八ッ場ダムの検証主体は、ダムを推進してきた国土交通省関東整備局です。コスト最重視でダムなし案とダムあり案を比較検討して結論を出すということですが、八ッ場ダムがこれまで国交省関東地方整備局が説明してきたとおり、治水上効果があり、利水上、必要性があるのか、これまでの八ッ場ダム事業にメスを入れる気配は当然のことながらありません。民主党政権は官僚体制が検証作業を進めるという手法で、どのように国民の理解を得ようとしているのでしょうか?
◆2010年10月1日 共同通信47ニュースより転載
http://www.47news.jp/CN/201010/CN2010100101000429.html
ー群馬・八ツ場ダム検証スタート 国交相、結論時期示さずー
八ツ場ダム事業の「検討の場」幹事会であいさつする関東地方整備局の山田邦博河川部長=1日午前、東京都千代田区
八ツ場ダム(群馬県)建設の是非を検証する国土交通省の関東地方整備局は1日、関係自治体の意見を聴く「検討の場」の実務者らによる幹事会を都内で開き、検証をスタートさせた。国直轄ダム事業を対象にした検証は初めて。
検証について馬淵澄夫国交相は1日の記者会見で「一刻も早く結論を出し、住民の不安を取り除く解決の道筋を付けたい」と作業を急ぐ考えを示したが、結論を出す時期は「いつまでにというタイミングを切るものではない」と明言を避けた。
幹事会でも今後の検証スケジュールに議論が集中。群馬県は「八ツ場ダムの問題は地元では生存権の問題。いつ終わるのか」などと質問したが、整備局側は「できるだけ早く」と繰り返すにとどまった。
検討の場は、事業主体の関東地方整備局長とダム流域の6都県知事ら地方自治体の首長15人で構成。今後、ダム以外の治水案とダム案を比較するとした国交省の判断基準に基づく検証状況を整備局長が説明し、知事らと意見交換することになっている。
◆2010年10月1日 毎日新聞より転載
http://mainichi.jp/select/today/news/20101002k0000m040045000c.html
ー八ッ場ダム:必要性めぐり「検討の場」初会合 国と6都県ー
ダム事業を検証する新しい手順がまとまったことを受け、八ッ場(やんば)ダム(群馬県)の必要性を国と関係6都県が再検証する「検討の場」の初会合が1日、全国に先駆けて東京都内で開かれた。
国土交通省関東地整が6都県の担当部長らと幹事会を開催。国が再検証の進め方を説明すると、担当部長らから「ダムは本体建設までが事業のほとんど。本体だけを残す八ッ場は再検証になじまない」「検証結果をいつまでにまとめるかスケジュールが示されていない」と厳しい意見が出た。
再検証の対象は国が事業主体の直轄ダムと道府県が行う補助ダムの計83事業(84施設)。各地整や道府県で検討の場が設置され、「できるだけダムに頼らない治水」への転換に向けた議論が始まる。
◆2010年10月1日 NHKニュースより転載
http://www.nhk.or.jp/news/html/20101001/t10014326001000.html
ー八ッ場ダム再検証の検討会ー
建設中止の方針が示されている群馬県の八ッ場ダムが、ほんとうに必要かどうかを再検証する検討会が始まり、利根川流域の1都5県からは早急に結論を出すべきだという意見が相次ぎました。
都内で始まった八ッ場ダムの必要性を再検証する検討会には、国土交通省の関東地方整備局や、利根川流域の1都5県の担当者が集まりました。初めに国土交通省の担当者が、先月まとまった各地のダム事業を検証する全国一律の評価基準に沿って、堤防の強化や貯水池の整備などダム以外の治水対策を考えたうえで、予定どおりダムを造った場合と、コスト最重視で比較し、結論を出す方法が説明されました。しかし、いつまでに結論を出すかは定められておらず、地元の群馬県などからは「待たされる住民にとっては、もはや人権と生存権の問題になっている。早急に期限を示してほしい」といった意見が相次ぎました。これに対して、地方整備局の担当者は「経験にない検証作業で実際に作業が始まるまで見通しを示しにくい」と答えました。「できるだけダムに頼らない治水」への政策転換を受けて、中止の方針が示されている八ッ場ダムも含めて、全国のダム事業が本当に必要かどうか再検証することになり、これから各地で検討会が開かれます。
◆2010年10月2日 読売新聞群馬版より転載
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20101002-OYT8T00020.htm
ー八ッ場ダム 国、検証日程説明拒むー
「検討の場」初会合6都県の不満続出
八ッ場ダム(長野原町)建設継続の可否を判断する検証作業を巡り、事業に関係する自治体と国が協議する「検討の場」の幹事会初会合が1日、東京都内で開かれた。群馬など流域6都県は検証日程を明らかにするよう要求したが、検証主体の国土交通省関東地方整備局は「かつてない取り組みで、スケジュールを示すのは困難」と拒み、作業の進捗(しんちょく)状況など具体的な説明も一切しなかった。全国の直轄ダムのトップを切って検証が始まったが、見切り発車の様相も濃く、国の煮え切らない対応に6都県から不満が噴出した。
幹事会には、治水や利水で負担金を支出する東京、埼玉、千葉、茨城、栃木、群馬の6都県の幹部職員が集まった。
同整備局の山田邦博・河川部長が冒頭、「地元の不安を解消するため、迅速に予断なく検証する」と呼びかけたが、6都県の関心事は、「いつ検証が終わるのか」という具体的な線引き。討議で都県側にマイクが渡ると、催促の声が相次いだ。
「いつまでに検証結果が明らかにされるのか。現時点で明らかでなければ、いつ頃になれば時期を明らかにできるのか」。埼玉県の小林敏男・土地水政策課長は、たたみかけるように質問。群馬県の川滝弘之・県土整備部長は「(ダム建設が生活再建の成否を左右する)住民の立場で言えば、八ッ場ダムの問題は、基本的人権の問題。早く水没予定地の皆さんに目標を示したい」と迫った。
しかし、同整備局の福渡隆・広域水管理官は「実際に検証が動いていかないと、なかなか具体的な目標時期は示せない」と釈明するにとどまり、東京都の河島均都市整備局長は「今日の回答では、地元の不安は取り除けない。不十分だ」と切り捨てた。
長野原町の高山欣也町長は同日午後、川滝部長から説明を受けたといい、「いきなり『中止』と言っておいて、検証結果のめどもつかないのはおかしい。いつ頃出すという方針ぐらいは示すべき。それが誠意だろう」と国に対する不信感をあらわにした。