大柏木トンネル

 朝日新聞群馬版に川原湯温泉背後の山に貫通した大柏木(おおかしわぎ)トンネルについての記事が掲載されました。

http://mytown.asahi.com/areanews/gunma/TKY201009280471.html

 記事中の写真に大きな出口が見える大柏木トンネルは、ダム本体の原石を運ぶために造られましたが、ダム本体工事終了後は一般供用されることになっていました。

 大柏木トンネルが開通すると、川原湯と群馬の中心都市、高崎間の距離が大幅に短縮され、便利になります。またトンネルの向こうの東吾妻町・大柏木地区周辺の住民にとっても、吾妻線、国道が利用しやすくなり、早期開通を求める声があります。

 地元では、ダム本体を中止するのであれば、大柏木トンネルの一般供用を前倒しにしてほしい、という意見があります。けれども、ダム中止が正式に決定していないという理由で、こうした意見は取り上げられません。一般供用を開始するためには、仕上げの工事(巻き立て)をしなければなりませんが、そうするとトンネル内部が狭くなり、ダム本体の原石を運ぶための大型トラックが通れなくなるからだそうです。

 この大柏木トンネルは、川原湯のそれまでの水道の水脈を切ってしまうなど、大きな犠牲を払って造られました。ダムの関連事業にはムダな工事もありますが、このように今後に生かすことができるものもあります。これまでダム予定地では、ダム事業と地域振興、生活再建がいつもセットで語られ、結果的に地域の衰退、生活の破壊を招いてきました。こうした状況を食い止めるためには、ダムに従属した生活の問題をダム計画より優先する必要があります。

 大柏木トンネルの川原湯側の出口は、付替え県道に面しています。トンネルを出て左折すると、湖面2号橋(不動大橋)です。湖面2号橋は繋がりましたが、川原湯側の付替え県道との間は難工事が続いています。トンネルを出て右折すると、上湯原代替地の裏手、川原湯温泉トンネルなどを経て、川原湯地区の打越代替地に通じます。上湯原地区の付替え県道が一部開通したことにより、大柏木トンネルの出口周辺がよく見えるようになりました。

2010年9月29日 朝日新聞群馬版より転載
ー八ツ場、結束に亀裂 トンネル望む東吾妻町、質問状連発ー

 八ツ場ダムの「中止」宣言から1年。膠着(こうちゃく)状態が続くなか、事業推進を求める地元自治体の「結束」にほころびが見え始めた。
 東吾妻町大柏木地区にある大柏木トンネルの入り口。むき出しになった半円形の鉄骨、未舗装の路面。あたりは雑草が伸び放題だ。

 トンネルはダム関連事業として整備された。同町大戸地区と長野原町川原畑地区を結ぶ県道の一部で、全長3キロが貫通している。「中止」でなければ、今ごろはダンプカーが行き来していたはずだ。

 「工事用」だが、ダムが完成すれば舗装などを施し、一般開放される予定になっている。

 地元の農業加部敏通さん(54)は「トンネルが開放されれば川原湯や草津温泉の観光客がやって来る。農産物の直売もできる。国からは何も聞いていないが、(ダムが中止になっても)ぜひ通してほしい」と話す。

 ダム直下の東吾妻町と町議会はこの夏、前原誠司国土交通相(当時)に2度、公開質問状を出した。

 「約束した生活再建事業、ダム関連事業はすべて実施していただけますか」

 「必要な事業とは何か、事業別に実施時期をお答えください」

 国がダムの必要性を再検証しているさなか。明確な答えはなかったが、質問状攻勢の狙いは「仮にダムが中止になっても、町が予定している事業まで中止にならないよう、担保しておくこと」(町幹部)にあった。その代表が大柏木トンネルの開通だ。

 こうした東吾妻町の動きにダムの地元、長野原町側はおだやかでない。

 トンネル開通が両町の利益になることを認めながらも、「水没地区の住民を差し置いて、『中止』を前提に動いている」と町幹部は反発する。

 「むこうは(ダム事業から)どれだけ分捕れるか。(水没地区のある)こちらは生きるか死ぬか。歩調が合うはずはない」

 波紋は吾妻郡内の他の町村にも広がっている。

 ある首長も東吾妻町の動きを「わがままだ」と切って捨てる。「当事者の長野原町が再検証の結果が出るのをじっと待っている。我々も黙っているのが協力だ」

 昨年9月10日だった。

 「八ツ場ダム推進吾妻住民協議会」の発会式が長野原町で開かれた。民主党が総選挙で大勝し、政権交代が行われようとしていた。

 水没地区の住民をはじめ、吾妻郡内7町村(当時)の首長や議長ら約300人が集まり、ダム推進の熱気に包まれた。「万が一にも中止になれば、地元住民は法的手段を含め、あらゆる闘争を繰り広げ、力を結集する」(設立趣意書)と宣言、ガンバローを三唱して「結束」を演出した。

 さっそく14日には新政権にダムの早期完成を求める要請書を送り、11月には5万4686人の署名を前原国交相に提出した。

 だが、それ以降、「結束」は影をひそめたままだ。

 川原湯温泉で旅館を経営する豊田明美さん(45)はいま、「住民、自治体に温度差があるのは致し方ない」と肩を落とす。

 「視界が開けるどころか、状況は1年前より悪くなった。いたずらに時が過ぎ去ったということでしょうか」(石田裕貴夫)