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国会議事録(八ッ場ダム予定地の地盤についてー穀田議員と馬淵大臣)

 11月5日の衆議院国土交通委員会において、穀田恵二委員(日本共産党)が八ッ場ダム予定地周辺地域の地盤の問題を取り上げています。
 この中で馬淵大臣は、「今までは、通常、ダムに湛水をしたとき、貯水をしたとき、そのときに起因する事象が発生する可能性のある箇所についてのみ、地すべり、いわゆる自然地形の安定性の検討というものが行われるとなっておりました。」と答弁しています。

 八ッ場ダムの代替地の安定計算について、国交省は現在は湛水していないことを理由にダム貯水の場合の計算結果を公表していません。馬淵大臣はこうした事実を踏まえて答弁しているのでしょうか? 
 このところ国交省の職員は、地盤の安定性について数多く寄せられる疑問に対して、ダムの是非の検証結果が出ていないので、現在はダム貯水する前提については答えられない、と説明しています。ダムの必要性とは別個にダムによって引き起こされる災害の誘発性があり、それを防ぐために予算の追加を検討する可能性があるのであれば、当然、八ッ場ダムの検証に当たっては地質の問題を取り上げられなければならない筈です。国交省はダムの検証に当たって、「残コスト」を重視するとしているのですから、なおさらのことです。

 衆議院のホームページより関連箇所を転載します。

【衆議院会議録】
http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_kaigiroku.htm
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第176回国会において設置されている委員会等
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国土交通委員会
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平成22年11月5日 第4号  

○穀田委員 

 質問に入ります。
 まず、八ツ場ダムの水没予定地の住民たちの移転先となる代替地の宅地造成の一部で、震度6から7程度の大地震で崩落するおそれがあることが発覚しました。どういう経過だったか、簡潔に述べていただきます。

○津川大臣政務官

 お答えを申し上げます。
 今御指摘をいただきましたとおり、八ツ場ダム工事事務所が群馬県に報告をいたしました代替地の安定計算の結果の一部に誤りがございまして、国民の皆様方、地域住民の皆様方、町また県の関係する皆様方に多大なる御迷惑、不信感、また不安感を助長させる結果になりましたことを、まずもって心からおわびを申し上げたいと思います。
 経過を申し上げますと、まず、平成18年に宅地造成等規制法が改正をされました。造成宅地における安全性を確保する目的で、がけ崩れ等の危険のある既存の造成宅地に対しまして造成宅地防災区域として都道府県が指定をする、こういうルールになりました。
 その後、当該区域の指定権者であります群馬県より、八ツ場ダムの移転代替地がその指定基準に該当するか否かの判断を行うためということで、八ツ場ダム工事事務所に対しまして盛り土の造成地の安定計算を要請いただきました。
 この要請をいただきまして、工事事務所といたしまして、安定計算結果を本年8月30日付で県に御報告をいたしました。県は、この結果に基づき、9月22日、八ツ場ダムの移転代替地を当該区域の指定基準に該当しないという判断をしたところでございます。
 その後でございますが、私どもが計算を委託いたしました業者から、計算結果に誤りがある可能性があるという報告がございまして、工事事務所に対しまして計算結果に誤りがあるかどうかということを確認いたしまして、最終的に、11月、今月の1日でありますが、誤りがあることが確認されました。大変申しわけございませんでしたが、翌日の今月2日に、その事実関係に加えまして、修正計算結果と対策工法等を県に対して報告させていただいたところでございます。

○穀田委員

 代替地は宅地防災マニュアルなどの各種技術基準や指針を参考に設計し、十分な安全性を確保することとしています、これがこれまでの国交省八ツ場ダム工事事務所の説明です。そうすると、十分な安全性を確保できていなかったということになる。
 どうも今のお話を聞いていると、国交省が委託したコンサルタントが耐震性の計算を誤っていたという話ですね。では、なぜ計算を間違えたのか、原因を究明すべきだと思うんですね。コンサルタント業者が入力をミスしたというけれども、なぜ間違えて入力したのか。それから、計算結果を受け取った国交省工事事務所は、当然チェックしたわけですよね。それで、間違いを見落とした。なぜ見落としたのか。代替地の十分な安全性を確保すべきと言っている国交省の責任は重いと言わざるを得ません。
 したがって、再発防止する上でも徹底した原因究明をすべきと違うかと思っているのですが、大臣の考えを聞きます。

○馬淵国務大臣

 まさに御指摘のとおりだと思っております。私も説明を受けて、いわゆるデータの入力ミス、さらには、計算手法を入力するそうなんですが、その入力ミスが原因であると判明したということです。
 しかし、それについては当然ながらチェックをしなければなりませんし、これは安全ということが問われるわけですから、命にかかわることで、大変重要なものを見過ごしてしまったということについては、これは大変遺憾だというふうに私は思っております。
 つい先日も、八ツ場ダムの問題に関しましては、基本高水の数値の根拠というものが明らかでないということ、少なくともありきで進めていたのではないかということで、私も本日の閣議後の会見で、基本高水の再検証を指示した、このようにお伝えをしたところであります。
 こうした状況は、これを徹底的に組織として戒め、さらに、こうした見過ごし等ミスのないようにということは本日朝も河川局長にも伝えたところでありますので、こうしたことに対しての再発の防止に努めてまいりたいというふうに思っております。

○穀田委員

 基本高水の問題については、また議論は別個にしたいと思うんです。
 今の答弁でありましたけれども、この計算ミスが発覚しなければ、それは今大臣がお話あったように、発覚して命にかかわる問題とありました。ですから、発覚しなければ、対策もとられずに崩壊を招くことになりかねなかった。だから住民からは不満の声が上がっている。同時に、国は万が一のことがないように安全を確保している、強度は大丈夫だと繰り返し言っていたことに対して不信感を募らせているわけであります。
 代替地というのは生活再建の中心であって、その安全性は大前提にかかわる問題であると考えます。地元の住民の方々の生活再建を、どういう立場に立とうとも、今、ダム建設の問題についてどういう方向に行こうとも、私は最優先して支援する必要があると考えます。
 日本共産党としましても、ダム建設ありきの政策を押しつけられてきたために地域住民が受けた困難や苦難を償うなどの観点から、国や関係自治体などが住民の生活再建支援や地域振興を図ることを義務づける、仮称ですけれども、住民の生活再建・地域振興を促進する法律の制定を提案してきたところであります。略して生活再建支援法というふうに言っていいと思うんですけれども、政府としても仕組みを早急に準備すべきではないかと思うんですが、見解をお聞きしたいと思います。

○馬淵国務大臣

 大変重要な御意見、御指摘だと思っております。生活再建対策につきましては、私どもとしても、熊本県の川辺川ダムでの取り組みというものを一つのモデルとして考えたいと思っておりまして、あわせて法案化を含めて検討を進めております。
 川辺川ダムにおきましては、これは、五木村の今後の生活再建を協議する場ができておりまして、ここを通じて意見聴取あるいは現地調査などを行っております。また、熊本県とも協力をして生活再建対策の検討を進めておるところでございまして、そうした進捗状況を踏まえながら対応を考えてまいりたい、このように思っております。

○穀田委員
 これは前大臣もそういう点については一定言及していましたが、きちんと実行するということで努力をしていただきたいと私は思うんです。
 そこで、問題は、この一連の問題について言うならば、代替地に限られたものではないというのが私の考えです。八ツ場ダム建設地域全体、吾妻川流域の地盤の問題でもあります。
 かねてから地盤の安全性について懸念が指摘されています。当委員会で参考人として意見陳述したこともある奥西一夫氏は、この地域について、種類、数とも多い地すべりのデパートのような地域だと地すべりの危険性を指摘しています。八ツ場あしたの会を初め住民運動団体も、地盤の安全性について指摘し、要望もしています。
 今回、代替地の計算ミスが発覚しましたが、八ツ場ダム貯水予定地域を初め周辺地域の地盤は大丈夫なのか。この際、八ツ場ダム周辺地域全体の地盤について徹底した安全調査をすべきではないでしょうか。

○馬淵国務大臣

 今、全体に関してこうした自然地形も含めて調査すべきではないかということの御指摘でありますが、今までは、通常、ダムに湛水をしたとき、貯水をしたとき、そのときに起因する事象が発生する可能性のある箇所についてのみ、地すべり、いわゆる自然地形の安定性の検討というものが行われるとなっておりました。
 一方で、私ども、再検証ということの枠組みを提示して、それを今進めているところであります。総事業費の点検なども行いながら、今後も地すべり対策の妥当性については検討してまいらなければならないと思っておりますが、あくまでこうした湛水の状況ということを前提にしているがゆえ、今日においてはこのダムについて再検証の過程に入りますので、まずはその結果を踏まえてというふうに考えております。

○穀田委員

 再検証の過程で、今新しい事態が起こり、新しい法律のもとで一定の新しい考え方でやっているわけだから、そういう角度から検証するということが住民にとって安心につながるということを要求しておきたいと思います。