2011年2月8日
八百長相撲が摘発されていますが、八ッ場ダムの検証作業も八百長であることが明らかになりつつあります。
八ッ場ダム事業について「予断なき検証を行う」としている民主党政権ですが、実態は「ダム推進」という予断に基づいた検証が着々と進められ、政治の影響力は皆無といってもいいほどです。
昨日、国交省関東地方整備局で八ッ場ダム検証の「検討の場」第四回幹事会が開かれました。
政権交代後、鳴り物入りで始まった八ッ場ダムの検証ですが、前身の建設省関東地方建設局の時代から事業を推進してきた国交省関東地方整備局が自ら検証作業を行うというもの。ダム事業を強引に推し進めて地元住民に多大な犠牲を強い、ダムの「治水」「利水」効果の数字を机上で膨らませて流域住民を騙して血税を絞りとり、政官財の利益のみを追求してきた国交省河川局。検証作業の枠組みが決定した一年前、国交省河川局が自ら過ちを認め、国民に謝罪することなど考えられるだろうかという疑問の声が全国各地であがりました。現実は危惧したとおり、河川局のシナリオどおりに進んでいます。
四回目の昨日の幹事会では、これまでと同様、ダム推進で足並みを揃える関係都県の幹部が顔をそろえ、ジャーナリストのまさのあつこさんがブログで「八ッ場ダムSM劇場」と名づけるほどの茶番劇が繰り広げられました。
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http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/
もちろん、こうした「検討の場」では、これまで国交省がダム建設の根拠としてきた八ッ場ダムの効果が、実はデータの裏づけのない問題だらけのものであることなど、一切触れられず、ダムに代わる代替案がいかに困難であるかということのみが強調されます。
けれども、大相撲を叩きまくっているマスコミも、ダムの検証作業については、推進側の「ご意見」を丁寧に伝えるばかりで、国民に真実を伝えようとする勇気のある記事は僅かです。しかも、影響力の大きいマスコミほど、「寝た子を起さない」姿勢が顕著ですから、国民がコトの真相を知るのは、事態が抜き差しならないところまで進んでしまってから、という場合が殆どです。
このまま既得権益にしがみつく官僚体制の思いのままにダム行政が進められてゆくのでしょうか。
昨日の会議を伝える2つの記事を転載します。タイトルは似通っていても、印象はずいぶん異なります。
○官僚体制のシナリオ通りの記事↓
http://www.nhk.or.jp/news/html/20110207/t10013915211000.html
2011年2月7日 NHK「ダム以外の案は非現実的」
群馬県の八ッ場ダムが本当に必要かどうかを検証する検討会が開かれ、国土交通省は、今後、ダム以外の具体的な治水案を作ってダムと比較すると説明しましたが、八ッ場ダムの建設を求めている流域の1都5県からは「ダム以外の方法は非現実的で、検証に時間をかけるのは不満だ」という意見が出されました。
八ッ場ダムの検討会はさいたま市で開かれ、国土交通省と流域の1都5県の担当者が出席しました。検証は、ダムと同じ効果を持つほかの治水案を考えたうえで、ダムを建設した場合にかかる残りの費用4600億円とどちらが安いかを最も重視して比較することになっています。7日は、堤防を強化する方法や、増水した水をためる遊水地の整備など、26の方法が説明され、国土交通省は、今後、これらを組み合わせて具体的な治水案を複数立てると説明しました。これに対して八ッ場ダムの建設を求めている1都5県の担当者は「用地の買収などを考えると非現実的な方法ばかりで、こうした作業に時間をかけるのは不満だ」などとして、事業費や完成までにかかる時間を算出し、ダム案との比較を急ぐよう求めました。八ッ場ダムの建設を続けるか、中止してほかの治水対策に切り替えるかは、ことしの秋までに結論が出されることになっています。
○検証作業の問題点をを指摘する記事↓
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20110208/CK2011020802000084.html
2011年2月8日 東京新聞群馬版八ッ場再検証 国の代替案「非現実的」 検討の場幹事会 流域6都県が異論
八ッ場(やんば)ダム(長野原町)の是非を判断するための再検証について、国土交通省関東地方整備局と流域六都県が事務レベルで協議を行う「検討の場」の四回目の幹事会が七日、さいたま市内で開かれた。
同整備局は、同ダム事業の妥当性の有無について、治水・利水の代替案と比較し検討する再検証のプロセスを再度説明。代替案については「早期に作成し提示する」と強調したが、具体的な日程は明らかにしなかった。
治水案は、ダムをはじめ遊水地や放水路、河道掘削、堤防かさ上げなど二十六のパターンを参考に比較検討し、利水案も、河口堰(ぜき)や地下水取水など十七のパターンを基に検討する。
これらの案の中には「水害保険の適用」や「洪水の予測・情報提供」など洪水被害の発生を前提とした対応や、「節水機器の普及や節水運動の推進」といった市民の心掛けに関わる対策も含まれていた。流域六都県の担当者からは「ダム以外の対策案は非現実的。流域住民の同意を新たに得るのは困難」などと、否定的な声が出た。
一方、同ダム建設の根拠となっている利根川の最大流量(基本高水)の内容評価を担当する日本学術会議の分科会委員長・小池俊雄東大教授は、再計算結果が「ダムの是非だけでなく、河川整備計画全体に影響する」と断言している。だが、同整備局は記者団の質問に対し「ダム本体の是非と基本高水は、並行して別個に検証する」と答え、基本高水の数値が変更された場合のダム事業への影響の有無を明らかにしなかった。 (中根政人)