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有識者会議(第13回)の議事要旨

 さる3月1日、前原前々大臣が私的諮問機関として設置した「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」を久しぶりに開催し、ダム事業推進の報告のあった福岡県のダムについて議論しました。
 国交省のホームページに掲載された議事要旨によると、有識者の中には、水需要の実態とダムの「利水」計画が乖離しているなどの重要な問題を指摘する意見がありましたが、委員会としての意見をまとめることなく、玉虫色の見解を政府に投げる形で終わっています。民主党が掲げてきたダムの検証作業が形骸化する可能性がさらに高まっています。

 第13回 今後の治水対策のあり方に関する有識者会議 議事要旨より転載
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 http://snipurl.com/279ew8
 平成23 年3 月1 日(火)18:00~20:00
 中央合同庁舎3 号館 11 階特別会議室

【出席者】
中川座長、宇野委員、三本木委員、鈴木委員、辻本委員、道上委員、山田委員、大畠大臣、三井副大臣、津川政務官、関河川局長

【ダム事業の検証の検討結果について】
○ダム事業の検証の検討結果に関し、検討主体から国土交通大臣に報告された検討結果について有識者会議から意見等を述べた。

○主な意見等は以下のとおり。
・「中間とリまとめ」の第4章「検証対象ダム事業等の点検」は、第5章「複数の治水対策案の立案」と同じように重要である。

・五ヶ山ダムの検討結果に関し、福岡都市圏の水需要と水供給の関係をみると、五ヶ山ダムによって水供給量を増加させなくても、水需要量が水供給量を上回ることはないのではないか。また、人口はあまり変わらないが、福岡市における一日一人当たりの給水量は268リットル/日・人であるのに対し、他の大都市は350リットル/日・人程度とのことであるが、水需要量は今後増加していくということか。
[福岡都市圏における日最大水需要量は87.7万m3/日(H32)となるのに対し、水供給量はH24において87.5万m3/日、H32には五ヶ山ダムを含めて88.6万m3/日となる旨を配付資料によって事務局から説明。また、水需要量の増加は計画給水人口や一日当たりの使用量等を時系列的に分析した結果であり、さらに渇水に対する安全・安心のために必要な水量を確保すると判断している旨を福岡県から聞いていることを事務局から説明。]

・今回「中止」で報告された例を見ると、農地面積の減少によって農業用水の需要が減少するなど、水利用等の状況が短い期間に大きく変化する可能性があることがわかった。

・また、事業自体は必要であるが、河川整備計画の中期的な目標に対して検討を行うことによって中止となる場合があることがわかった。

・水需給に関しては、地方公共団体の長が政策的に判断するものである。

・利水については、政策的に判断するものであり、河川管理者としては限界があるが、河川利用のシステムの中で考えるべきこともあると思う。例えば、五ヶ山ダムの検討結果に関し、新規利水、流水の正常な機能の維持、渇水対策について、「中間とりまとめ」に沿って目的別に検討してきているが、これらが相互に関係するものであるという視点を持つことも重要である。

・伊良原ダムの検討結果に関し、祓川流域関連市町の人口推移をみると、行橋市の人口はH17までは増加しているが、H17以降も増加していると言えるのか。
[H22国勢調査の速報値により、行橋市の人口が増加している旨を福岡県から聞いていることを事務局から説明。]

・伊良原ダム完成までは北九州市から水道用水が暫定的に分水されているが、伊良原ダム完成後のH30以降はどうなるのか。暫定的に分水されていた水道用水がダム完成後に北九州市に返還された場合、当該水道用水が北九州市で不要になるということはないか。
[北九州市としては当該水源が必要であり、伊良原ダム完成後に当該水源を北九州市に返還することになっている旨を福岡県から聞いていることを事務局から説明。]

・五ヶ山ダムの洪水調節の費用負担割合はどの程度か。
[事務局から、洪水調節の費用負担割合は約20%である旨を配付資料によって説明。]

・「継続」という報告があったダムについては、それぞれ検討が行われ、
ダム案が優れているという評価であり、それは一つの考え方であると思う。また、「中止」という報告があったダムについては、検討主体の判断を尊重することで良いと思う。

・ダム事業については、財政事情が厳しい現状に鑑み、事業費の縮減や事業効果の早期発現を図ることができるよう、今後とも検討を進めていくことが重要である。

・五ヶ山ダムに関しては、既設ダムを含めたダムの運用について、より効率的な運用を図ることができるよう、今後とも検討を進めていくことが重要である。

・今回の有識者会議で指摘があったことは、今後のダム事業の検証に当たって参考となるものもある。

・大和沢ダムと七滝ダムは「中止」という内容であり、従来からの手順や手法等によって検討がなされた。これは、有識者会議が「中間とりまとめ」についてのパブリックコメントを行った際に有識者会議が示した考え方に沿って検討されたものであると理解できる。

・五ヶ山ダムと伊良原ダムは「継続」という内容であった。これは、基本的には、中間とりまとめで示した「共通的な考え方」に沿って検討されたものであると理解できる。

・本日の有識者会議で各委員からあった質問等については、整理しておくことが重要である。質問等を踏まえて、検討主体に確認し、その回答を各委員に伝えることとする。

○有識者会議から意見を頂いた4ダム事業については、後日、国土交通省としての判断を行い、判断の結果等を公表していくこととする。