福島原発事故の被害の拡大により、原発のリスクが知れ渡るようになって来ました。一方で、これほど危険性の高い原発を推進してきたのは電力需要を賄うためにやむをえなかった、再生可能エネルギーは採算が合わない、という国をあげての洗脳は、いまだに効力があるようです。
原発がダメなら、水力発電所を増設しなければという声が、当然のことながらあがってきました。
◆2011年3月25日 朝日新聞より転載
http://www.asahi.com/business/stock/kabuto/TKZ201103250002.html
-ダムに強いハザマ新高値、水資源に恵まれた水力発電へ見直しも―
ダムに強いハザマ(1719)が新高値。11円高の152円と買われ、前日24日(木)につけた150円を抜いて昨年来の高値を更新。ダム、トンネル工事に強い土木の名門。今度の原発問題で、原発以外の電源開発が浮上することは間違いなさそうで、LNGの火力発電と並んで水力発電が見直されそうだ。とくに、「年間降雨量が多く、水資源に恵まれた日本は水力発電のウエートがもっと高くてよいのではないか。最近の豪雨対策ということからもダムの見直しは予想される」(中堅証券)。<コンクリートから人へ>政策を、掲げてきた現政権にとって、政策変更は難しいところはあるだろう。しかし、一方で、電気供給によって、大多数の人の生活安定がはかれることから、早晩、水力発電増強が浮上する可能性はある。06年10月以来の200円台乗せがありそうだ。
— 転載終わり—
八ッ場ダムが計画されている吾妻川流域は関東地方有数の水力発電地帯といわれ、数多くの発電所があります。吾妻川は酸性度が強く、水質が悪い川ですが、1960年代から開始された中和事業により、発電には支障がありません。
八ッ場ダム予定地上流の長野原取水堰では、下流の発電所に送水するため、吾妻川の水が大量に取水されており、ダム予定地付近の吾妻川には僅かな水しか流れていません。
八ッ場ダム計画では、東京電力の水力発電所に供給されている吾妻川の水をダムに貯めるため、国が東京電力から吾妻川の水を返してもらうための減電補償を行うことになっています。
八ッ場ダム直下には、県営の小さな発電所を設置する計画がありますが、この発電所によって生み出される電力は、ダム計画によって失われる電力より遥かに少ないため、八ッ場ダム計画全体で見れば、ダムが完成することにより電力量は大幅に減少することになります。
国が東京電力に支払う減電補償額は数百億円と見込まれていますが、八ッ場ダムの事業費にはこの減電補償額は含まれておらず、国土交通省は私企業との交渉内容を明かせないとの理由から、減電補償額を公表していません。
上記の新聞記事によれば、水力発電を目的とした新規のダム事業を見越して、ダム関連企業の株価が上昇しているようです。
すでに約3,000基のダムがあるわが国には、もはやダムの適地はありません。残されたダム計画は、八ッ場ダム事業に見られるように、地質や地形の面であまりにも障害が多かったり、住民の犠牲を補償することが不可能であったり、自然破壊が著しく、費用対効果を改竄しなければダム計画を推進できないようなものが大半です。
原子力がダメならダム建設では、また道を誤ってしまいます。
下記情報が参考になります。
★小出 裕章氏(京都大学 原子炉実験所)による論考
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/kouen/dent-05.pdf
「過剰な発電所と無力な原子力」
★河野太郎(衆議院議員・自民党)ブログごまめの歯ぎしり
http://www.taro.org/2011/03/post-969.php
「無計画停電は必要ない」2011年3月31日
★マイケル・シュナイダー/田窪雅文訳
http://www.iwanami.co.jp/sekai/2011/01/pdf/skm1101-1.pdf
「原子力のたそがれ 米・仏・独のエネルギー政策分析から浮かび上がる再生可能エネルギーの優位性」
岩波書店が福島原発事故を機に無料公開した雑誌『世界』(2011年1月)掲載論考