八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

ダムや基地の矛盾を紡ぐ舞台、『帰還』、『推進派』の上演

大震災で他の社会問題がメディアに取り上げられる機会が極端に少なくなっていますが、ダムや普天間などの問題を真正面から取り上げた劇が東京で上演されます。いずれも劇作家の坂手洋二さんの書き下ろしです。

★『帰還』 
 劇団民藝の公式サイトより転載
 http://www.gekidanmingei.co.jp/2011kikan.html

 男は帰ってきた。その集落に。故郷でもない、何十年も訪れたことのない、その場所に。なぜもう一度その地を訪ねようと思ったのか。それは、青春の記憶の中にのみ残っているその場所が、新たに建設されるダムに沈むことを知ったからだ。帰還したその地で、男は女に出会った…。民藝初の坂手洋二書き下ろし、大滝秀治の主演による期待の舞台化。未来の定まらぬままに模索した1950年代の日本から、現在にも繋がる精神の彷徨を描く。

 ◆作=坂手洋二 演出=山下 悟

 ◆公演日程:2011年6月22日(水)~7月4日(月)

 ◆会場:紀伊國屋サザンシアター
 タカシマヤタイムズスクエア 紀伊國屋書店新宿南店7F 03-5361-3321 (新宿駅南口)
 http://www.kinokuniya.co.jp/store/theatre.html

★『推進派』
 燐光群の公式サイトより転載
 http://rinkogun.com/

 琉球でもヤマトでもない。
 ここは俺たちの島だ。

 ある日突然、沖縄・普天間基地ヘリコプター部隊の移設先に指定され島。多くの島民による激しい抗議とは別に、密かにそれを歓迎する人々がいた──。

 ◆作・演出=坂手洋二

 ◆公演日程:6月3日(金)~19日(日)
*スケジュール変更により。6月8日午後7時の部より上演開始

 ◆会場:下北沢ザ・スズナリ
    東京都世田谷区北沢1-45-15
    http://www.honda-geki.com/suzunari/gekijo/map.html 

★2011年5月18日 読売新聞より転載
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/stage/theater/20110518-OYT8T00811.htm

 -「推進派」「帰還」 劇作家・演出家…坂手洋二 基地、ダム…「矛盾」を紡ぐ ―

 「推進派」(電=03・3426・6294)は、沖縄・普天間基地ヘリコプター部隊の移設先に突如指定された島が舞台。小さな島を騒がせた現実の向こうに、日本社会が抱え込んでしまった「矛盾」が見える。

 昨年5月から、基地移設問題にのみ込まれた鹿児島県徳之島に3度、足を運んだ。沖縄3部作を手がけ、以前から関心の高い地域だが、徳之島は初めて。「同じ南西諸島でも、奄美は沖縄の問題を共有していなかった」ことにショックを受けた。

 「生々しい感じではなく、現実をフィクションで見ていこうと考えています。東日本大震災後の世界をどう見ていくかという観点も入っている。演劇の持っている仕組みの中で、普段は見えない角度から現実が見えればいいと思う」

 一方の「帰還」(電=044・987・7711)は、青春時代の記憶に残る集落がダム建設で水没すると知った男(大滝秀治)が、何十年かぶりでその地に帰って来る物語。熊本県の川辺川ダムと五木村がモデルで、民芸に書くのは初めてだ。「大滝さんの生命力、エネルギーに向かって書いている。あて書きと言えばあて書きですが、直接はあまり存じ上げないので、勘違いがあるかも知れません」

 いずれも昨今の社会問題を題材にしている。「原子力発電所の問題を見ても、いろんなテーマが重なって見えてきた」という。「国家事業がある程度進むと誰にも止められなくなる。誰が考えても不自然なことが、一度決まったらずっと続き、利権が生まれる。別の題材でも掘って掘っていくと、この狭い日本の中で、驚くほど、どこかでつながっています」

 9月に青年劇場で「普天間」(仮題)、11月に燐光群で「たった一人の戦争」(同)と、新作が続く。「演劇は小さなメディア。マスコミで取り上げられにくいものも演劇にできる。現実にいま動いていることなのに、この人演じちゃっているよっていうおかしさ、いかがわしさが、演劇にはあっていいと思います」